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学園二年生編

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アルフレッド様がご機嫌を直してくれたのは良かったのだけれど、アルフレッド様が放してくださらなくて困ってしまった。
私の体調不良を理由に、学園は早退し、王家の馬車で公爵邸まで送ってくださった。
いつもならそれで終わりなはずなのに、今日は公務にも余裕があるからと、私の部屋で一緒にお茶を飲むことになった。

何をする訳でもなく、ただ私の顔を見つめているアルフレッド様。

「あの………アルフレッド様………」
「何だい、ジル?」

思わず拝みたくなるような美しさの笑顔を浮かべたアルフレッド様。
御機嫌なのは非常にありがたいのだけれど、これは恥ずかしいしいたたまれないわ。

「あの、あまり見つめられると…………恥ずかしい、です………」

そう言って俯くと、アルフレッド様は何と私の顎に手を当てて、くいっと上を向かせた。

これ、お話の世界でしか見たことないやつだわ………。
まさかそれを身を以て体験するなんて思ってもみなくて、私は顔が熱くなるのを感じた。

「ジル………私を見て?恥ずかしがる必要なんてないんだ。君は私の婚約者だろう?」

甘い声が耳元で聞こえて、思わずゾクリとしてしまう。
心臓が痛いくらいに早く脈動する。
こころなしか、目眩までしてきた気がするし…………。

「結婚したら毎日こうして顔をあわせるんだから、今のうちに慣れておくのもいいかもしれないね?」

アルフレッド様の笑みが深くなる。
いやいや、結婚て………いくらなんでも気が早すぎませんか………?
まだ卒業までには一年半くらいの猶予があるし、それにあまり思い出したくはないけれど例の婚約解消問題もまだ無くなった訳じゃない。
それなのに結婚だなんて………。

「また、何か不安になってるのかい?」

アルフレッド様が私の表情の変化に気がついたようだ。
この人、変なところでやたらに鋭いのよね………。

「だ………大丈夫、です………」

そう返事をしながら、何がどう大丈夫なのかさっぱり分からなかった。
でも、その私の答えに満足したのか、アルフレッド様は私の髪を一筋掬い上げると、髪の先にキスを落とし、また笑顔を浮かべた。

「君は、ただ私の隣で微笑んでいてくれればいいんだ。何も心配することはないよ」

まるで幼子に言い聞かせるような、変な風に穏やかな声だなんて事をぼんやりと考える。

私は時々、アルフレッド様が分からない。
彼が私を大切に思ってくれていることは理解しているつもりだけれど、何というか、心の奥底に秘めた何かがあるような気がして、少し怖い。
大好きで仕方のない人の筈なのに、そんな事を感じるなんておかしいと思いながら、私はかすかな笑顔を浮かべたのだった。
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