内気な私に悪役令嬢は務まりません!

玉響

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学園二年生編

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「あの、アルフレッド………さま………?」

アルフレッド様が愚か?どうして?
言われている意味が分からなくて戸惑った私は、彼の名前を呼ぶことしか出来なかった。

「………君は私の所有物ではない。君にだって意思があって、それを尊重すべきだと頭では分かっているのに、それが出来ない………。あいつが………、オルティアが君に近づく度に気が狂いそうになるんだ。あいつは男の格好をしているけど令嬢で、君にとってあいつは友達だって分かっているのに………君があいつに特別な感情を抱いているわけじゃないのに………。それでも醜い嫉妬心を抑えられずに、結局君を泣かせた私は、本当に愚かだ」

アルフレッド様の端正なお顔に、強い後悔が浮かんだ。
…………あのアルフレッド様が、オルティアに嫉妬?
私は驚いた。
だって、アルフレッド様はこの国の王太子で、容姿端麗、頭脳明晰、運動神経だって抜群で、誰からも慕われている。
欠点しかないような私と違って、欠点なんて一つもないような人なのに、どうして嫉妬なんてするの…………?

「あいつの前では君は、自然に笑顔を浮かべるし、いつも楽しそうにしている。それに引き換え私はこうしていつも君を泣かせて、苦しめて………」

アルフレッド様は、苦しそうに顔を歪める。
それを聞いて、私は更に驚いた。
オルティアといる時の私は、アルフレッド様の目にはそんな風に映っていたんだ………。
それに、アルフレッド様の前でいつも泣いているわけじゃないんだけれど、アルフレッド様はそう思っているってことだよね。
さっきの話は少しびっくりしたけれど、確かにオルティアと一緒にいると気が楽だし楽しいとは思う。
でも、アルフレッド様と一緒にいる時のほうが、何倍も、何十倍も嬉しいんだけどな………。

「………私はアルフレッド様と一緒にいる時……とても幸せですよ?」

じっとアルフレッド様を見つめていると、そんな言葉がぽろりと口から零れ出ていた。

「あっ………!」

私自身が驚いて、慌てふためきながら口元を手で覆った。

「えっ………?!」

アルフレッド様は、宝石みたいに煌めく瞳を大きく見開いたのを見て、一気に頬が熱くなるのを感じ、思わず俯いた。
私ってば、何を口走っちゃってるの?!
意図して伝えようとしたことじゃない本心が、思いもよらない形でアルフレッド様に伝わるなんて恥ずかしすぎる………!
恥ずかしくて、全身がふるふると震えた。
と。
ふわりとした温もりが私を包み込む。

「………どうしよう。すっごい嬉しい……」

恐る恐る顔を上げると、私と同じくらい顔を朱く染め上げたアルフレッド様が、私を優しく抱きしめていた。
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