内気な私に悪役令嬢は務まりません!

玉響

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学園二年生編

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その日のランチタイム後の空いた時間に、私はオルティアとお茶をいただきながら話すことになった。
ランチは必ずアルフレッド様とご一緒する約束だから、それさえ果たせば問題ないみたい。
………正直私にはよく分からないこだわりだけど。

「やあ、待たせたかい?」
「大丈夫、です」

今日は、陽射しも強くて少し汗ばむくらいの陽気だ。
オルティアは制服の上着を脱ぎ、肩に掛けて歩いてきた。………白いシャツが目に眩しくて、正直ドキッとするくらいかっこいい。
そう言えば、オルティアって胸はどうしているんだろう。
薄いシャツからは、下着のようなものは見えない。でも、女性の象徴である胸の膨らみも見当たらない。

「…………気になる?」

私の不躾な視線に気がついたのか、オルティアは含み笑いをした。
………気には、なる。でも、なんとなく触れちゃいけない話題な気がして、私は視線を泳がせた。

「ふふ、恥ずかしがらなくてもいいよ。別に見られて困るようなものでもないし」

そう言って、オルティアは剣ダコだらけの指で器用にシャツのボタンを外していく。

「あ……あの………っ」

いくら何でも白昼堂々、しかも屋外で胸を晒すなんて………!
私は真っ赤になる。………が。

「え………?」

はだけたシャツの間から見えるのは、胸板に覆われた逞しい胸で、私が想像していたような女性の乳房はそこにはなかった。

「ど………どうして………?だって、体は女性って………」

流石に私は動揺した。
前世では性転換手術があるから、生殖機能は別として、見た目だけは心の性に体の性を合わせることは出来る。
でも、この世界にはそんなものはないはずなのに………。まさか、トランスジェンダーって嘘………?

「驚いたかい?これはね、まだ実験段階なんだけれど、宮廷魔術師にお願いして特別な薬を作って貰って、それを毎日少しずつ体に取り込んでいるんだ。うまく行けば、少しずつ体を作り変えて私は正真正銘男になれるという訳さ」
「それって、まさかルーファス・アレキアじゃ………」

ルーファス・アレキア。天才宮廷魔術師と呼ばれる少年。………実はゲームの中の隠し攻略キャラで、政治の表舞台には一切出てこないミステリアスな人物でもある。

「………流石の公爵令嬢ともなれば彼の存在を知っているんだね」

感心したように、オルティアは呟いた。
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