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学園一年生編

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長期休暇に入って数日後に、アルフレッド様が訪ねてきた。
学園か休みに入ったことで、保留にしていた公務を片付けていたらしい。
………やっぱり、王太子って大変な立場だよね。
前世で生きていた年と、そう変わらなくなってくると、改めてそれを実感する。
やはり、国を背負って立つ人なのだから当然なのかもしれないけれど、時々アルフレッド様から感じる妙に大人びた雰囲気は、その立場ゆえのものなのかもしれない。

「ジル……その、すまなかった」

部屋に入ってきたアルフレッド様から、開口一番に謝罪を受けた。
これって………その、キ………キスの事を言っているんだよね……。
私は思い出して真っ赤になりながら、頷いた。

「………許して、くれるのかい?」

アルフレッド様の問いかけに、私はまた頷いた。
だって、あの時はパニック状態だったし、今も思い出すだけで恥ずかしいけれど、正直、物凄く嬉しかった。
あの時の、アルフレッド様は本気で怒っていた。でもあれは、アルフレッド様の本音だったのだろうと思う。私が自分に都合よく考えているだけかもしれないけれど、それならそれでいいと思えた。
だから、私も逃げていたら駄目だ。きちんとアルフレッド様に向き合わなければ。

『勿体無いよ。どうしてそんなに自分に、自信が持てないんだい?』

頭の中に、オルティアの言葉が蘇った。

「私………突然の事で驚きましたが………口付けされて………嬉しかったです………っ」

まだ、好きだと伝える勇気はない。
それでも、ありったけの勇気を出して、正直な気持ちをアルフレッド様に伝えた。
緊張し過ぎて、アルフレッド様の顔を見ることができず、強く目を瞑った。
きっと、これ以上ないくらいに赤い顔をしていると思うけど、ちゃんと言えた。
…………あれ?
アルフレッド様の反応が、ない。
何も言わないけど、どうしたんだろう?
私は、おそるおそる目を開いた。

「…………っ」

そこには、私以上に顔を真っ赤にしたアルフレッド様が、手で顔を覆っていた。

「待って……ジル。それは、反則………っ」

それは、大人の雰囲気を纏い、穏やかな笑みを浮かべた『完璧な王子様』のアルフレッド様でも、仄暗い笑みを浮かべた、ゲームのバグかと思うくらいにキャラが崩壊した『ヤンデレ』のアルフレッド様でもなく、ただの十五歳の少年の顔をしたアルフレッド様がいた。
………ああ。やっぱり私はこの人が、好きだ。
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