34 / 61
学園一年生編
34
しおりを挟む
「少し、落ち着いたかな?」
私は、王宮内にあるアルフレッド様の部屋へと連れてこられた。
アルフレッド様の部屋に入るのは、今日が初めてだ。いつものお茶会は、中庭のガセポで行われていたし、雨の日も広い客間を使っていた。
アルフレッド様の部屋はさっぱりとしていて、無駄なものは置いていない。殺風景というのは少し違うかもしれないけれど、何だか少し意外だった。
「はい………」
私が泣き腫らした瞼を擦ろうとすると、アルフレッド様が冷やしたタオルを当ててくれた。
「突然大声を出したり、逃げ出そうとしたり、泣き出したり………今日のジルはいったいどうしたんだい?」
いつも通りの穏やかな笑顔を浮かべて、アルフレッド様は私を宥めるように尋ねてきた。
私は、答えに詰まる。
私との婚約を解消するんですか?なんて言えないし、誰か別に好きな人が出来たんですか?とも聞けない。………直接アルフレッド様の口から聞きたくなくて、感情的になっていたんだから。
………でも、原因となったカトリーナの話を持ち出すのは何か違うし………。
「ここは私の部屋だ。人払いはしてあるから、誰かに聞かれる心配もない。もしジルが、誰かに脅されたり、苦しめられているなら、正直に打ち明けてごらん?」
どうやらアルフレッド様は私の態度がおかしいのは、誰かに脅されたと思っているみたいだ。
「………違うんです。私………不安で………」
私は、私の気持ちだけを正直に話すことにした。
「不安?」
「………私、友達もいなくて、こんな性格で……。変わりたいと思ったのに、結局何も変わってなくて………」
「でも、それが私から逃げ出す理由にはならないだろう?」
……流石に、アルフレッド様を欺くのは難しい。
「………だから……私は、アルフレッド様に相応しくないのではと………」
言い逃れ出来なくなって、私は口にするつもりのなかった気持ちを、告げてしまった。
「………何それ。それ、誰に言われたの?」
途端、優しい微笑みを湛えていたアルフレッド様の顔から、笑みが消えた。
「………誰にも、そのようなことは………」
「ジルが、私に相応しくない?そんなことはありえない!」
突然そう叫んだアルフレッド様が、手にしていたティーカップを壁に投げつけた。
乾いた音がして、カップは粉々に砕け散る。
その音に、私は思わず身をすくめたのだった。
私は、王宮内にあるアルフレッド様の部屋へと連れてこられた。
アルフレッド様の部屋に入るのは、今日が初めてだ。いつものお茶会は、中庭のガセポで行われていたし、雨の日も広い客間を使っていた。
アルフレッド様の部屋はさっぱりとしていて、無駄なものは置いていない。殺風景というのは少し違うかもしれないけれど、何だか少し意外だった。
「はい………」
私が泣き腫らした瞼を擦ろうとすると、アルフレッド様が冷やしたタオルを当ててくれた。
「突然大声を出したり、逃げ出そうとしたり、泣き出したり………今日のジルはいったいどうしたんだい?」
いつも通りの穏やかな笑顔を浮かべて、アルフレッド様は私を宥めるように尋ねてきた。
私は、答えに詰まる。
私との婚約を解消するんですか?なんて言えないし、誰か別に好きな人が出来たんですか?とも聞けない。………直接アルフレッド様の口から聞きたくなくて、感情的になっていたんだから。
………でも、原因となったカトリーナの話を持ち出すのは何か違うし………。
「ここは私の部屋だ。人払いはしてあるから、誰かに聞かれる心配もない。もしジルが、誰かに脅されたり、苦しめられているなら、正直に打ち明けてごらん?」
どうやらアルフレッド様は私の態度がおかしいのは、誰かに脅されたと思っているみたいだ。
「………違うんです。私………不安で………」
私は、私の気持ちだけを正直に話すことにした。
「不安?」
「………私、友達もいなくて、こんな性格で……。変わりたいと思ったのに、結局何も変わってなくて………」
「でも、それが私から逃げ出す理由にはならないだろう?」
……流石に、アルフレッド様を欺くのは難しい。
「………だから……私は、アルフレッド様に相応しくないのではと………」
言い逃れ出来なくなって、私は口にするつもりのなかった気持ちを、告げてしまった。
「………何それ。それ、誰に言われたの?」
途端、優しい微笑みを湛えていたアルフレッド様の顔から、笑みが消えた。
「………誰にも、そのようなことは………」
「ジルが、私に相応しくない?そんなことはありえない!」
突然そう叫んだアルフレッド様が、手にしていたティーカップを壁に投げつけた。
乾いた音がして、カップは粉々に砕け散る。
その音に、私は思わず身をすくめたのだった。
20
お気に入りに追加
541
あなたにおすすめの小説
執着系逆ハー乙女ゲームに転生したみたいだけど強ヒロインなら問題ない、よね?
陽海
恋愛
乙女ゲームのヒロインに転生したと気が付いたローズ・アメリア。
この乙女ゲームは攻略対象たちの執着がすごい逆ハーレムものの乙女ゲームだったはず。だけど肝心の執着の度合いが分からない。
執着逆ハーから身を守るために剣術や魔法を学ぶことにしたローズだったが、乙女ゲーム開始前からどんどん攻略対象たちに会ってしまう。最初こそ普通だけど少しずつ執着の兆しが見え始め......
剣術や魔法も最強、筋トレもする、そんな強ヒロインなら逆ハーにはならないと思っているローズは自分の行動がシナリオを変えてますます執着の度合いを釣り上げていることに気がつかない。
本編完結。マルチエンディング、おまけ話更新中です。
小説家になろう様でも掲載中です。
記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました
冬野月子
恋愛
ある日目覚めると記憶をなくしていた伯爵令嬢のアレクシア。
家族の事も思い出せず、けれどアレクシアではない別の人物らしき記憶がうっすらと残っている。
過保護な弟と仲が悪かったはずの婚約者に大事にされながら、やがて戻った学園である少女と出会い、ここが前世で遊んでいた「乙女ゲーム」の世界だと思い出し、自分は攻略対象の婚約者でありながらゲームにはほとんど出てこないモブだと知る。
関係のないはずのゲームとの関わり、そして自身への疑問。
記憶と共に隠された真実とは———
※小説家になろうでも投稿しています。
執事が〇〇だなんて聞いてない!
一花八華
恋愛
テンプレ悪役令嬢であるセリーナは、乙女ゲームの舞台から穏便に退場する為、処女を散らそうと決意する。そのお相手に選んだのは能面執事のクラウスで……
ちょっとお馬鹿なお嬢様が、色気だだ漏れな狼執事や、ヤンデレなお義兄様に迫られあわあわするお話。
※ギャグとシリアスとホラーの混じったラブコメです。寸止め。生殺し。
完結感謝。後日続編投稿予定です。
※ちょっとえっちな表現を含みますので、苦手な方はお気をつけ下さい。
表紙は、綾切なお先生にいただきました!
転生先が羞恥心的な意味で地獄なんだけどっ!!
高福あさひ
恋愛
とある日、自分が乙女ゲームの世界に転生したことを知ってしまったユーフェミア。そこは前世でハマっていたとはいえ、実際に生きるのにはとんでもなく痛々しい設定がモリモリな世界で羞恥心的な意味で地獄だった!!そんな世界で羞恥心さえ我慢すればモブとして平穏無事に生活できると思っていたのだけれど…?※カクヨム様、ムーンライトノベルズ様でも公開しています。不定期更新です。タイトル回収はだいぶ後半になると思います。前半はただのシリアスです。
【完結】ヤンデレ設定の義弟を手塩にかけたら、シスコン大魔法士に育ちました!?
三月よる
恋愛
14歳の誕生日、ピフラは自分が乙女ゲーム「LOVE/HEART(ラブハート)」通称「ラブハ」の悪役である事に気がついた。シナリオ通りなら、ピフラは義弟ガルムの心を病ませ、ヤンデレ化した彼に殺されてしまう運命。生き残りのため、ピフラはガルムのヤンデレ化を防止すべく、彼を手塩にかけて育てる事を決意する。その後、メイドに命を狙われる事件がありながらも、良好な関係を築いてきた2人。
そして10年後。シスコンに育ったガルムに、ピフラは婚活を邪魔されていた。姉離れのためにガルムを結婚させようと、ピフラは相手のヒロインを探すことに。そんなある日、ピフラは謎の美丈夫ウォラクに出会った。彼はガルムと同じ赤い瞳をしていた。そこで「赤目」と「悪魔と黒魔法士」の秘密の相関関係を聞かされる。その秘密が過去のメイド事件と重なり、ピフラはガルムに疑心を抱き始めた。一方、ピフラを監視していたガルムは自分以外の赤目と接触したピフラを監禁して──?
猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない
高遠すばる
恋愛
幼い頃、婚約者を庇って負った怪我のせいで目つきの悪い猛禽令嬢こと侯爵令嬢アリアナ・カレンデュラは、ある日、この世界は前世の自分がプレイしていた乙女ゲーム「マジカル・愛ラブユー」の世界で、自分はそのゲームの悪役令嬢だと気が付いた。
王太子であり婚約者でもあるフリードリヒ・ヴァン・アレンドロを心から愛しているアリアナは、それが破滅を呼ぶと分かっていてもヒロインをいじめることをやめられなかった。
最近ではフリードリヒとの仲もギクシャクして、目すら合わせてもらえない。
あとは断罪を待つばかりのアリアナに、フリードリヒが告げた言葉とはーー……!
積み重なった誤解が織りなす、溺愛・激重感情ラブコメディ!
※王太子の愛が重いです。
ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)
夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。
ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。
って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!
せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。
新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。
なんだかお兄様の様子がおかしい……?
※小説になろうさまでも掲載しています
※以前連載していたやつの長編版です
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる