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学園一年生編
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「少し、落ち着いたかな?」
私は、王宮内にあるアルフレッド様の部屋へと連れてこられた。
アルフレッド様の部屋に入るのは、今日が初めてだ。いつものお茶会は、中庭のガセポで行われていたし、雨の日も広い客間を使っていた。
アルフレッド様の部屋はさっぱりとしていて、無駄なものは置いていない。殺風景というのは少し違うかもしれないけれど、何だか少し意外だった。
「はい………」
私が泣き腫らした瞼を擦ろうとすると、アルフレッド様が冷やしたタオルを当ててくれた。
「突然大声を出したり、逃げ出そうとしたり、泣き出したり………今日のジルはいったいどうしたんだい?」
いつも通りの穏やかな笑顔を浮かべて、アルフレッド様は私を宥めるように尋ねてきた。
私は、答えに詰まる。
私との婚約を解消するんですか?なんて言えないし、誰か別に好きな人が出来たんですか?とも聞けない。………直接アルフレッド様の口から聞きたくなくて、感情的になっていたんだから。
………でも、原因となったカトリーナの話を持ち出すのは何か違うし………。
「ここは私の部屋だ。人払いはしてあるから、誰かに聞かれる心配もない。もしジルが、誰かに脅されたり、苦しめられているなら、正直に打ち明けてごらん?」
どうやらアルフレッド様は私の態度がおかしいのは、誰かに脅されたと思っているみたいだ。
「………違うんです。私………不安で………」
私は、私の気持ちだけを正直に話すことにした。
「不安?」
「………私、友達もいなくて、こんな性格で……。変わりたいと思ったのに、結局何も変わってなくて………」
「でも、それが私から逃げ出す理由にはならないだろう?」
……流石に、アルフレッド様を欺くのは難しい。
「………だから……私は、アルフレッド様に相応しくないのではと………」
言い逃れ出来なくなって、私は口にするつもりのなかった気持ちを、告げてしまった。
「………何それ。それ、誰に言われたの?」
途端、優しい微笑みを湛えていたアルフレッド様の顔から、笑みが消えた。
「………誰にも、そのようなことは………」
「ジルが、私に相応しくない?そんなことはありえない!」
突然そう叫んだアルフレッド様が、手にしていたティーカップを壁に投げつけた。
乾いた音がして、カップは粉々に砕け散る。
その音に、私は思わず身をすくめたのだった。
私は、王宮内にあるアルフレッド様の部屋へと連れてこられた。
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アルフレッド様の部屋はさっぱりとしていて、無駄なものは置いていない。殺風景というのは少し違うかもしれないけれど、何だか少し意外だった。
「はい………」
私が泣き腫らした瞼を擦ろうとすると、アルフレッド様が冷やしたタオルを当ててくれた。
「突然大声を出したり、逃げ出そうとしたり、泣き出したり………今日のジルはいったいどうしたんだい?」
いつも通りの穏やかな笑顔を浮かべて、アルフレッド様は私を宥めるように尋ねてきた。
私は、答えに詰まる。
私との婚約を解消するんですか?なんて言えないし、誰か別に好きな人が出来たんですか?とも聞けない。………直接アルフレッド様の口から聞きたくなくて、感情的になっていたんだから。
………でも、原因となったカトリーナの話を持ち出すのは何か違うし………。
「ここは私の部屋だ。人払いはしてあるから、誰かに聞かれる心配もない。もしジルが、誰かに脅されたり、苦しめられているなら、正直に打ち明けてごらん?」
どうやらアルフレッド様は私の態度がおかしいのは、誰かに脅されたと思っているみたいだ。
「………違うんです。私………不安で………」
私は、私の気持ちだけを正直に話すことにした。
「不安?」
「………私、友達もいなくて、こんな性格で……。変わりたいと思ったのに、結局何も変わってなくて………」
「でも、それが私から逃げ出す理由にはならないだろう?」
……流石に、アルフレッド様を欺くのは難しい。
「………だから……私は、アルフレッド様に相応しくないのではと………」
言い逃れ出来なくなって、私は口にするつもりのなかった気持ちを、告げてしまった。
「………何それ。それ、誰に言われたの?」
途端、優しい微笑みを湛えていたアルフレッド様の顔から、笑みが消えた。
「………誰にも、そのようなことは………」
「ジルが、私に相応しくない?そんなことはありえない!」
突然そう叫んだアルフレッド様が、手にしていたティーカップを壁に投げつけた。
乾いた音がして、カップは粉々に砕け散る。
その音に、私は思わず身をすくめたのだった。
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