内気な私に悪役令嬢は務まりません!

玉響

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学園一年生編

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私は一目散に馬車から降りて、一目散に部屋に逃げ込もうとした。

「待って」
「………っ!」

でもその計画は、それはアルフレッド様の腕によって阻止された。
馬車を降りようとした私は、呆気なくアルフレッド様に捕まった。

「ジル、逃さないよ。きちんと本当の事を話してくれるまで、帰さない」

低い声でそう告げられると、私は金縛りにあってしまったかのように動けなくなった。

「すまないが、ジュリエット嬢と話がある。このまま王宮につれていくと公爵に伝えてくれ」

アルフレッド様は出迎えた執事のヘンリーにそう伝えると、御者に王宮へ行くよう指示を出した。

がたり、と馬車が揺れて走り出す。
私の体はアルフレッド様に囚われたままだ。

「お、お離し………ください」
「いくらジルの頼みでもそれは聞けない。離したら、逃げるだろう?」
「………」

嫌だ。アルフレッド様の近くに、いたくない。
私の中でそんな気持ちが膨らんでいく。
………でも、どうして?
私ははっとした。
どうしてこんなにも必死に、アルフレッド様を拒絶しようとしているのか、どうして離れようとしているのか………その理由に気がついてしまった。
………私はアルフレッド様が好きだから………だからアルフレッド様が私から離れていく事を認めたくなくて、自分が傷つきたくなくて、無意識に遠ざけようとしているんだ。

アルフレッド様の事は、前世の時からずっと好きだった。………でも、その『好き』は強い憧れみたいなもので、『恋』とは全く別のものだ。だって、前世でのアルフレッド様はゲームの中の登場人物。空想世界の人だったから。
でも、アルフレッド様は今現実に存在している。そのアルフレッド様と関わるうちに、憧れが、いつの間にか恋に変わっていた。
今の私は、ゲームの中の悪役令嬢ジュリエットと同じように、アルフレッド様との婚約を解消したくないと、本気で思ってる。
それに気がついた途端、わけもなく私の目から、再び涙が溢れ出した。

「………っ」
「ごめん、痛かった?それとも、私が泣くほど嫌い?」

突然泣き出した私に、アルフレッド様が戸惑いながら問いかける。
私はゆっくりと首を横に振った。
すると余計に涙がぼろぼろと溢れ始めた。
そんな私を、アルフレッド様は困ったように抱きしめてくださるのだった。
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