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学園一年生編

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「随分と、顔色が悪いね?」
「………いえ、大丈夫です……」

教室に戻ると、アルフレッド様が話し掛けてきた。
アルフレッド様は私のちょっとした変化にも敏感に反応する。
それが嬉しくもあるけれど、今回は気が付きてほしくなかった。

「多分、少し疲れただけだと思いますわ」

私が微笑むと、アルフレッド様は訝しげに眉を顰める。

「どうしたんだい?」

オルティアが加わってきた。

「オルティアか。ジルの調子が悪そうだから、心配していたんだ」
「………本当に殿下は、ジュリアの事となると尋常じゃない反応をしますね。ちょっと愛が重いと思いますが」
「仕方ないだろう?私はジル以外の女性は全く興味がないんだ」

………ん?
アルフレッド様とオルティアが話す声が、必要以上に大きいような………。
教室中に響くその会話は、他の生徒にもばっちりと聞こえているはずだ。
途端に物凄い勢いで私を睨んできた人物がいた。
………カトリーナだ。
でも、アルフレッド様とオルティアが近くにいるせいか、さっきみたいに取り巻きの令嬢と悪口を言ってくるような事をせず、ただ睨んでいるだけだけれど、怖気がするほど強い殺気を含んだ視線に感じた。
その時、私はふとカトリーナは随分と『王太子殿下の婚約者』を連呼していた事に気が付いた。
単純に私のことが嫌いで、悪口を言うためにわざとそういう表現を使っているのだと思っていたけれど………もしかしたら、アルフレッド様とカトリーナが愛し合っていて、私を邪魔にしているとか………?
……いや、可能性がなくはない。
私が王太子であるアルフレッド様の婚約者として相応しくないと判断した陛下が、水面下で動いていたかもしれないし………。
それならば、カトリーナが私のことを何故嫌っているかというのも説明がつく。
………私、アルフレッド様に優しくされて、溺愛されていると勘違いしたのかもしれない。
何だかそう思うと、涙が出そうだった。

「………ごめんなさい、やっぱり少し調子が悪いので、医務室に行ってきますわ」
「私も付き合うよ」
「………一人で、行けます」
「ジルの事が心配なんだ。一緒に………」
「……付いてこないで下さい!」

私の口から思いもよらない程に大きな声の、拒絶の言葉が飛び出した。
アルフレッド様は驚いた様に目を見開き、それから傷付いたように顔を歪めた。
私は何も言わずに、そのままアルフレッド様に背を向けると医務室へと向かった。
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