内気な私に悪役令嬢は務まりません!

玉響

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学園一年生編

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「王太子殿下だけでは飽き足らず、オルティア様やネイサン様にまで媚を売って、まるで娼婦のようね」

男女別の授業になった途端、カトリーナが私に聞こえるように言ってきた。

「いくらカラミンサ公爵家が名門でも、品格が疑われますわね」

複数の女子生徒が、クスクスと笑い声をあげる。
………いじめって、どこの世界でも同じようなものらしい。
私はわざと聞こえないふりをした。
この状況、前世で見てた事がある。でも、私はいじめる側でも、いじめられる側でもなく、無関心を装った傍観者だったけれど。

「お友達も作れない癖に、殿方に取り入ることだけはお得意なようね。私にははしたなくて真似できないわ」

カトリーナがそう言うと、取り巻きの令嬢がそれに追随する。
………多勢に無勢で集中砲火をするのは、『はしたない』とは言わないのかな………。
私は、あからさまな悪口を左から右へと聞き流しながら溜息をついた。
悪口を言われて平気な人なんていない。本当は、泣き出したい気持ちだ。……でも、本当にそんなつもりがなくても、彼女達に反論すればたちまちもっと酷い言葉がぶつけられるに決まっている。
だから、我慢して、逆らわないのが一番だ。

「きっと私達のことを見下しているのですわ。気位が高いから、私達のような下位貴族の者とは口を利く価値もないと、そう思っていらっしゃるのでは?」
「そうかもしれませんわね。そういえば、お父様が仰っていたのだけど………王太子殿下の婚約を、白紙に戻すという話が出ているらしいですわ」

カトリーナの声が、妙に耳に響いた。

「………え?」

無関心を装っていたのに、思わず口から声が零れた。
そんなの、聞いていない。アルフレッド様も、お父様も何も言っていなかった。

「国王陛下も、の性格を問題視しているようですわよ?王太子殿下にも、お話をされたようですけれど、どうなるのかしら?」

背中に刺さるような視線を感じたけれど、それを気にするどころではなかった。
どういうこと?
私、知らない。………勿論、いつかそんな話が出るかもしれないという予想はしていたけれど………。
それに、カトリーナが言っていることが真実だとしたら、アルフレッド様はそんな話がある事をご存知だったということになる。
………もしかしたら、私と結婚したくなくて………わざと教えてくれなかった?
私は目の前が真っ黒になっていくのが分かった。
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