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学園一年生編

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「ジュリエットちゃん、流石だねえ」

今日は学年末テストの結果が発表になった。
張り出された順位表に、ネイサンが冷やかしを入れてきたので、私ははにかんだ笑みを浮かべた。
学年主席は勿論アルフレッド様。私は次点だった。
転生チートと思われる能力のある私を軽々と上回るアルフレッド様は本当に凄いと思う。

「算術だけはジルには敵わないね。私の努力不足かな」

アルフレッド様が順位を確認しながら溜息をついた。
だって、連立方程式や二次関数は初めて習う訳じゃない。そこはチート関係なく出来て当然なんだけどね。
むしろ、それ以外はアルフレッド様が首位独占。
敵わないのは私ですけどね………。

「私なんか大した事はないのです。公務も、学術も完璧にこなしているアルフレッド様の方が………」

あの日以来、私は随分スムーズに話が出来るようになっていた。まだ声は小さいし、つっかえてしまう事もあるけれど、たった半年で、前世も合算して三十年近いコンプレックスの一つが解消しつつある。

「ジュリア、『私なんか』という言い方は良くないな」

隣にいたオルティアが優しく私を窘めた。ジュリアとは、オルティアがつけてくれた私の愛称。本当は『ジル』と呼びたかったらしいけれど、アルフレッド様が絶対に赦さなかったため、考えたらしい。

「そうだね、オルティアの言うとおりだ」

アルフレッド様もそれに同意する。
近頃、目に見えてアルフレッド様がオルティアを敵視することが減ったと思う。
やっぱり、ゲームの強制力が働いているのかな………。
私がオルティアと友達になったことで、アルフレッド様とオルティアは必然的に近くなる。
二人の距離が縮まれば縮まるほど、私の不安は大きくなる。

「次点のジュリアが大したことがないなら、ニ十五位の私はどうなるんだい?」

そう言ってオルティアが笑った。
同学年の生徒は全部で三十八人。………確かに、微妙な位置だ。

「オーリーはまだいいよ。俺なんて、三十四位だし」
「ネイサンは剣術バカだからね。脳みそまで筋肉で出来てるんだろう?」
「それを言うならオーリーだって同じじゃん?父上に聞いたけど、筋力を付けるために食事も見直ししてるんでしょ?」

そんなオルティアとネイサンのやり取りを見ながら私は苦笑いした。
この二人は本当に気が合うらしい。
仲良くじゃれ合う……って言ったら怒られるかもしれないけれど、心から信頼し合っている感じが伝わってくる。
その様子を、羨ましいと思う私がいた。
………私、少し欲張りになってきたのかな………。
アルフレッド様と、オルティアとネイサン。四人で一緒にいる事が増えたら、もっと仲良くなりたいという気持ちが芽生え始めた気がする。その一方で、アルフレッド様とオルティアに仲良くなって欲しくないという気持ちがあって、二つのぐちゃぐちゃした気持ちが、私の中で渦巻いているのだった。
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