内気な私に悪役令嬢は務まりません!

玉響

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学園一年生編

27(アルフレッド視点)

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「どうしたものか………」

ジルが………ジュリエット・カラミンサが誰よりもウィステリア王太子妃に相応しいと貴族達に示さなければならない。それは容易ではない。
父上も仰った通り、社交性以外の部分においてはジルに敵う者はいないだろう。
だが、彼女のあの内気さと気弱さは筋金入りだ。色々試してみたけれど、ジルの態度はあまり変わらない。それでも接する時間が長くなれば少しは心を開いてくれたようだけれど、数多の貴族一人ひとりと打ち解けるとなれば、気の遠くなるような時間が必要になる。

「啖呵を切ったのは良かったが………難題だな」

私は溜息をついた。
私の婚約について進言したのは、バンクシア侯爵だと父上は仰った。
確かバンクシア侯爵の娘が同じクラスにいたかもしれない。………名も顔も覚えてはいないが。
おそらく娘からジルの事を聞いたバンクシア侯爵は、それを理由に挙げてジルを追い落とし、その後釜に自分の娘を据えようという魂胆だろう。
もしかしたら娘の方も同じ考えかもしれない。

ジル以外の令嬢は全く興味がないが、それでも半年以上同じ空間で過ごしていれば、雰囲気などで生徒間の力関係がわかるものだ。
女子生徒は特に力のある家の令嬢を中心に集団を作って群れたがるが、おそらくそうして出来上がったグループのどれかの中心にいるのだろう。
当然ジルはグループには属していない。
入学当初はジルに媚を売る奴らも多かったが、困ったように口籠るジルに話しかけるのは今やオルティアとネイサンくらいだ。

「オルティア………?」

そこまで考えて、私ははたと気がついた。
オルティアは、生物学上は女性だ。いくら学園の許可を得ていても、男性として振る舞っていてもそれは覆らない事実だ。
つまり、どんなに奴がジルを想っていたとしても、ジルと奴は結ばれることなどあり得ない。
………ならば、奴の気持ちにつけ込み、利用すればいいのではないか。
同性の友人が出来れば、ジルは変わるかもしれない。………ああ、しかし私以外の影響を受けるのも癪だな………。
私は緩くカールした金髪を、くしゃくしゃと掻いた。
オルティアは気に食わないが、背に腹は代えられない。ジルと私の未来の為だと言い聞かせて、オルティアに、ジルと友達になってもらうように頼むと決意を固めたのだった。
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