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学園一年生編

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「あの、アルフレッド様。……お願いがあります」

翌日のランチタイム。
私は意を決してアルフレッド様に話しかけた。

「何かな、ジル?」

穏やかな笑顔を浮かべたアルフレッド様。
きっと私がお願いをしたら、不機嫌になる事が分かっているから、怖い。

でも、このままではせっかく友達になつてくれたオルティアと、話をすることすらままならない。
アルフレッド様が私を大切に思ってくれているのは凄く嬉しいけれど、それとこれとは別問題だ。
以前の私なら、こんな風に考えなかったと思う。
でも昨日、オルティアに指摘されたことで、私の中の何かが変わった気がした。
勿論、そんなに急に変わることは出来ない。
他の人と話すのは怖いし、緊張する。でも、少なくとも言わなければいけない事くらいは、きちんと言えるようにならないと、アルフレッド様の隣に並ぶ者として、相応しくない。
私は大きく深呼吸して、アルフレッド様に告げた。

「オルティア様と、お友達になりました。アルフレッド様は彼に近づくなと仰いましたけれど、彼と私の間にやましい気持ちはございません。話すことくらいは、お許し下さいませ」

一度も言い淀むことなく、自分の思いの丈をアルフレッド様に伝えることができた。
……きっと怒られてしまうのだろうけれど、生まれてはじめて、自分の意見を自分で伝えることができた。
何だか胸の奥が凄くスッキリして、晴れやかな気持ちだった。

「…………」

私の言葉を聞いていたアルフレッド様は、驚いたように目を見開いているけれど、何も言わない。
……もしかして、怒りを抑えようとしているのかしら。それとも逆に頭にきすぎて、フリーズしているとか?………いや、それどっちも怖すぎる………。

「……いいよ、分かった」
「ですよね……。………え?」

意外な返答に、私は聞き返してしまった。

「……許可すると言ったんだ」

気持ち声が低くて、不機嫌そうな部分はあるものの、アルフレッド様の表情を見る限り、お怒りではなさそうだ。それどころか、近づくだけでもピリピリしていたオルティアと話す許可があっさり貰えるだなんて………何かあったのかしら?

「あ、ありがとうございます!」

……本来、お礼を言うのはおかしいのかもしれないけれど、私はぺこりとお辞儀をして笑顔を浮かべたのだった。
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