17 / 61
学園一年生編
17
しおりを挟む
「そうか……。てっきり殿下のせいだと思い込んでいたよ。気に病んでいるのに余計なことを言って、悪かったね」
そう言って、オルティアは近くにあったベンチに腰を降ろして、私に隣に座るように促す。
……今日はアルフレッド様もいない事だし、少しくらいオルティアと話したっていいよね?
そんな事を考えながら、私はオルティアと並んで座った。
実のところ、オルティアの話をゆっくり聞きたいと思っていたけれど、アルフレッド様はそれを許さないし、公爵家に呼ぶのも、この姿のオルティアじゃあ外聞が悪い上に、そもそも私がお誘いできないときているから、中々実現しなかった。
「あの……大丈夫、です」
「……お節介かもしれないけど、ジュリエット。……勿体無いよ」
「……え?」
意外なオルティアの言葉に、私は驚いて顔を上げた。途端にオルティアの
アクアマリン色の瞳と目が合い、慌てて逸らす。
「……君は公爵令嬢で、美しく、賢い。それに、マナーも優雅な仕草も完璧なのに、どうしてそんなに自分に自信が持てないんだい?」
自信が、持てない?
私は、オルティアの言葉にきょとんとする。
「いつも、何かに怯えているみたいだ。……まあそれも可愛くていいんだけどね」
オルティアは更に続けた。
「……信じてもらえるかは分からないけど……私はね、この世界ではない、仮想世界を知っている。そこには、『君』じゃない『君』がいてね……気高く、いつも自信に溢れていて、それはそれは美しかった……」
オルティアの表情が、うっとりと蕩ける。
……オルティアは、転生者で、ゲームのプレイヤーだった。そして、ジュリエットの信奉者なんだ……。
じゃあ、私を見て、さぞかしがっかりしただろうな。
「……ごめん。こんな話をしたって、訳分からないよね。つまり、君を励ましたかっただけなんだ」
照れたように短い銀髪をクシャクシャにすると、オルティアははにかんだ様に笑った。
「あのっ……!」
声をかけておいて、私の方がびっくりしてしまう。
思わず声が出たからだ。
「何だい?」
オルティアは、トランスジェンダーであることも、転生者であることも隠さずに話してくれた。そして、こんな私を励ましてくれた。
……私、オルティアとなら……。
私は、ありったけの勇気を集めて、息を吸い込んだ。
「わ……私と……、お友達になって……っくれませんか?」
あまりの緊張に、声が上ずってしまった。
そんな私を、オルティアは驚いた表情を浮かべて見つめていた。
そう言って、オルティアは近くにあったベンチに腰を降ろして、私に隣に座るように促す。
……今日はアルフレッド様もいない事だし、少しくらいオルティアと話したっていいよね?
そんな事を考えながら、私はオルティアと並んで座った。
実のところ、オルティアの話をゆっくり聞きたいと思っていたけれど、アルフレッド様はそれを許さないし、公爵家に呼ぶのも、この姿のオルティアじゃあ外聞が悪い上に、そもそも私がお誘いできないときているから、中々実現しなかった。
「あの……大丈夫、です」
「……お節介かもしれないけど、ジュリエット。……勿体無いよ」
「……え?」
意外なオルティアの言葉に、私は驚いて顔を上げた。途端にオルティアの
アクアマリン色の瞳と目が合い、慌てて逸らす。
「……君は公爵令嬢で、美しく、賢い。それに、マナーも優雅な仕草も完璧なのに、どうしてそんなに自分に自信が持てないんだい?」
自信が、持てない?
私は、オルティアの言葉にきょとんとする。
「いつも、何かに怯えているみたいだ。……まあそれも可愛くていいんだけどね」
オルティアは更に続けた。
「……信じてもらえるかは分からないけど……私はね、この世界ではない、仮想世界を知っている。そこには、『君』じゃない『君』がいてね……気高く、いつも自信に溢れていて、それはそれは美しかった……」
オルティアの表情が、うっとりと蕩ける。
……オルティアは、転生者で、ゲームのプレイヤーだった。そして、ジュリエットの信奉者なんだ……。
じゃあ、私を見て、さぞかしがっかりしただろうな。
「……ごめん。こんな話をしたって、訳分からないよね。つまり、君を励ましたかっただけなんだ」
照れたように短い銀髪をクシャクシャにすると、オルティアははにかんだ様に笑った。
「あのっ……!」
声をかけておいて、私の方がびっくりしてしまう。
思わず声が出たからだ。
「何だい?」
オルティアは、トランスジェンダーであることも、転生者であることも隠さずに話してくれた。そして、こんな私を励ましてくれた。
……私、オルティアとなら……。
私は、ありったけの勇気を集めて、息を吸い込んだ。
「わ……私と……、お友達になって……っくれませんか?」
あまりの緊張に、声が上ずってしまった。
そんな私を、オルティアは驚いた表情を浮かべて見つめていた。
20
お気に入りに追加
539
あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。
アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。
いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。
だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・
「いつわたしが婚約破棄すると言った?」
私に飽きたんじゃなかったんですか!?
……………………………
たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる