内気な私に悪役令嬢は務まりません!

玉響

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学園一年生編

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「そうか……。てっきり殿下のせいだと思い込んでいたよ。気に病んでいるのに余計なことを言って、悪かったね」

そう言って、オルティアは近くにあったベンチに腰を降ろして、私に隣に座るように促す。
……今日はアルフレッド様もいない事だし、少しくらいオルティアと話したっていいよね?
そんな事を考えながら、私はオルティアと並んで座った。
実のところ、オルティアの話をゆっくり聞きたいと思っていたけれど、アルフレッド様はそれを許さないし、公爵家うちに呼ぶのも、この姿のオルティアじゃあ外聞が悪い上に、そもそも私がお誘いできないときているから、中々実現しなかった。

「あの……大丈夫、です」
「……お節介かもしれないけど、ジュリエット。……勿体無いよ」
「……え?」

意外なオルティアの言葉に、私は驚いて顔を上げた。途端にオルティアの
アクアマリン色の瞳と目が合い、慌てて逸らす。

「……君は公爵令嬢で、美しく、賢い。それに、マナーも優雅な仕草も完璧なのに、どうしてそんなに自分に自信が持てないんだい?」

自信が、持てない?
私は、オルティアの言葉にきょとんとする。

「いつも、何かに怯えているみたいだ。……まあそれも可愛くていいんだけどね」

オルティアは更に続けた。

「……信じてもらえるかは分からないけど……私はね、この世界ではない、仮想世界を知っている。そこには、『君』じゃない『君』がいてね……気高く、いつも自信に溢れていて、それはそれは美しかった……」

オルティアの表情が、うっとりと蕩ける。
……オルティアは、転生者で、ゲームのプレイヤーだった。そして、ジュリエットの信奉者なんだ……。
じゃあ、私を見て、さぞかしがっかりしただろうな。

「……ごめん。こんな話をしたって、訳分からないよね。つまり、君を励ましたかっただけなんだ」

照れたように短い銀髪をクシャクシャにすると、オルティアははにかんだ様に笑った。

「あのっ……!」

声をかけておいて、私の方がびっくりしてしまう。
思わず声が出たからだ。

「何だい?」

オルティアは、トランスジェンダーであることも、転生者であることも隠さずに話してくれた。そして、こんな私を励ましてくれた。
……私、オルティアとなら……。
私は、ありったけの勇気を集めて、息を吸い込んだ。

「わ……私と……、お友達になって……っくれませんか?」

あまりの緊張に、声が上ずってしまった。
そんな私を、オルティアは驚いた表情を浮かべて見つめていた。
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