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学園一年生編
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ざわざわと囁き合う他の生徒達をよそに、アルフレッド様は当然のように私を抱え上げる。
「ネイサン。ジルの体調が良くないようだから早退すると、伝えておいてくれ」
「え、あ……あの、殿下?!」
戸惑うネイサンに背を向けて、アルフレッド様は歩き出した。
「アルフレッド様……私、怪我はしていませんし、具合も悪くないです……」
私はアルフレッド様を見上げながらそう告げると、ギロリと睨まれた。……怖い。キレイな人が怒ると、迫力があって怖さが三割増しくらいに感じる。
「……ジル。あれほどオルティアには近づかないようにと言ったはずだけど?」
……やっぱり、オルティアに抱きとめられたことを怒ってるみたいだ。
「……あの、あれは……不可抗力で……」
言い訳をしても、アルフレッド様が聞き入れないということは分かっている。
この半年で嫌というほど学んたからだ。
「不可抗力なのは分かっている。悔しいが、あいつのお陰でジルが怪我をせずに済んだのも事実だしね。……でも、私が怒っているのは、君がオルティアを見つめていた事だ」
ええ?見つめていた?
ちょっとだけ、オルティアにときめいた事は認める。それは認めるけれど、見つめてはない。
「……まさか、ジルはオルティアに気があって、彼の気を引くためにわざと階段から落ちたんじゃないよね?」
アルフレッド様が意地悪な顔をした。
私は慌てて首を横に振る。
「……そんな、私は……」
……そうだ。私はあの時、誰かに肩を押されて、バランスを崩して階段から落ちた。
その事に気がついて、私はゾッとする。
もし、オルティアに受け止められていなかったら、大怪我をしていただろう。……打ちどころが悪ければ、場合によっては死んでいたかも……。
「……真っ青な顔をして……あぁ、冗談だよ。私のかわいいジル。君がそんなことをする子じゃないって、分かっているからね」
私の顔色が変わった事で、アルフレッド様は勘違いをしたみたい。
……階段で突き落とされたこと、伝えたほうがいいのかな……。でも、たまたまぶつかっただけかもしれないし、故意じゃないかもしれない。
もし、私の勘違いだったら冤罪になっちゃうし。
そう考えると、さっきの出来事を、アルフレッド様に伝えることが出来なかった。
「死ぬかもしれないと思ったら、凄く怖かったです……」
私は素直な気持ちだけを口にしたら、何故か目から涙が零れ落ちた。
アルフレッド様は一瞬驚いた顔をして……蕩けるような笑顔を浮かべると私の頭を撫でてくれたのだった。
「ネイサン。ジルの体調が良くないようだから早退すると、伝えておいてくれ」
「え、あ……あの、殿下?!」
戸惑うネイサンに背を向けて、アルフレッド様は歩き出した。
「アルフレッド様……私、怪我はしていませんし、具合も悪くないです……」
私はアルフレッド様を見上げながらそう告げると、ギロリと睨まれた。……怖い。キレイな人が怒ると、迫力があって怖さが三割増しくらいに感じる。
「……ジル。あれほどオルティアには近づかないようにと言ったはずだけど?」
……やっぱり、オルティアに抱きとめられたことを怒ってるみたいだ。
「……あの、あれは……不可抗力で……」
言い訳をしても、アルフレッド様が聞き入れないということは分かっている。
この半年で嫌というほど学んたからだ。
「不可抗力なのは分かっている。悔しいが、あいつのお陰でジルが怪我をせずに済んだのも事実だしね。……でも、私が怒っているのは、君がオルティアを見つめていた事だ」
ええ?見つめていた?
ちょっとだけ、オルティアにときめいた事は認める。それは認めるけれど、見つめてはない。
「……まさか、ジルはオルティアに気があって、彼の気を引くためにわざと階段から落ちたんじゃないよね?」
アルフレッド様が意地悪な顔をした。
私は慌てて首を横に振る。
「……そんな、私は……」
……そうだ。私はあの時、誰かに肩を押されて、バランスを崩して階段から落ちた。
その事に気がついて、私はゾッとする。
もし、オルティアに受け止められていなかったら、大怪我をしていただろう。……打ちどころが悪ければ、場合によっては死んでいたかも……。
「……真っ青な顔をして……あぁ、冗談だよ。私のかわいいジル。君がそんなことをする子じゃないって、分かっているからね」
私の顔色が変わった事で、アルフレッド様は勘違いをしたみたい。
……階段で突き落とされたこと、伝えたほうがいいのかな……。でも、たまたまぶつかっただけかもしれないし、故意じゃないかもしれない。
もし、私の勘違いだったら冤罪になっちゃうし。
そう考えると、さっきの出来事を、アルフレッド様に伝えることが出来なかった。
「死ぬかもしれないと思ったら、凄く怖かったです……」
私は素直な気持ちだけを口にしたら、何故か目から涙が零れ落ちた。
アルフレッド様は一瞬驚いた顔をして……蕩けるような笑顔を浮かべると私の頭を撫でてくれたのだった。
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