内気な私に悪役令嬢は務まりません!

玉響

文字の大きさ
上 下
14 / 61
学園一年生編

14

しおりを挟む
今までは、王太子の婚約者という立場にあっても、それほど公の場に顔を出さずに済んでいた。
……多分、お父様が取り計らってくれていたんだと思う。
でも、学園に通うようになってからはそうはいかない。人と接する場面が増えれば増えるほど、私のこの性格が人の目に付くようになる。
私は教室に戻りながら溜息をついた。と。
肩に強い衝撃を受けた。

「きゃ……!」

今、私は階段を降りているところだ。つまり、バランスを崩した私は、真っ逆さまに落ちるしかない。
私は次に襲ってくるであろう痛みに備えてぎゅっと目を瞑った。

どさり

「………?」

あれ?痛くない。というか、あったかい。
……まさか、頭から落ちて即死した?
私は恐る恐る目を開くと、アクアマリン色の瞳が、心配そうに私を覗き込んでいた。

「大丈夫かい、ジュリエット?」
「え……?」

私は、オルティアに抱きかかえられていたのだった。

「たまたま教室に戻ろうと思ったら、階段から君が落ちてくるじゃないか。……本当に焦ったよ」

オルティアが、私を受け止めて助けてくれたの?

「あ……あの、ありがとう……ございます……」

あまりの顔の近さに、きちんとお礼を言わなければと思うのに、声が震えてしまう。
オルティアの、マリンノートの香水が私の鼻孔を擽り、心拍数を上げていく。

「私のところに天使が降ってきたかと思ったよ。……怪我はないかい?」
「はい。……大丈夫、です……」

私が答えると、オルティアはふっと目を細めて笑った。……ヤバい。オルティアがイケメンすぎる。

「ジル!!」

アルフレッド様がこちらに駆け寄ってくるのが見える。

「オルティア、ジルを離せ」

アルフレッド様は見たこともないような顔でオルティアを睨みつけた。
するとオルティアは溜息を付きながら優しく私を降ろしてくれた。

「……お姫様の危機を救うのが王子様の役割のはずでは?そんな事では、大切な姫君をどこの馬の骨ともしれない輩に横取りされるかもしれませんよ?」

そう言ってオルティアはくすりと笑った。

「何だと……?」

アルフレッド様のご機嫌が、更に急降下するのが分かった。

「ジル!こっちに来るんだ」

大きな声で名前を呼ばれて、私はびくりと肩を揺らす。
アルフレッド様は真っ直ぐに私を見つめていた。
こんなに大きな声を出すアルフレッド様は見たことがない。私は怯えながら彼の言葉に従った。
アルフレッド様も私の方に歩み寄ると、オルティアから私を隠すように抱きすくめた。

「……ジルを助けてくれたことは、礼を言う。だが、ジルに気安く触るな」

アルフレッド様は吐き捨てるようにオルティアにそう言った。
オルティアは一瞬、その精悍な顔に怒りを浮かべたけれど、何も言わず、くるりと背を向けてその場を立ち去って行ったのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約解消は君の方から

みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。 しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。 私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、 嫌がらせをやめるよう呼び出したのに…… どうしてこうなったんだろう? 2020.2.17より、カレンの話を始めました。 小説家になろうさんにも掲載しています。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~

白金ひよこ
恋愛
 熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!  しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!  物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

わたしを捨てた騎士様の末路

夜桜
恋愛
 令嬢エレナは、騎士フレンと婚約を交わしていた。  ある日、フレンはエレナに婚約破棄を言い渡す。その意外な理由にエレナは冷静に対処した。フレンの行動は全て筒抜けだったのだ。 ※連載

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

処理中です...