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学園一年生編
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入学式からあっという間に半年が経った。
出だしからあんな様子で、登校拒否したかったのは山々だけれど、今の私は仮にも『王太子の婚約者』……つまり、『未来の王太子妃』という立場だ。理由もなく学園を休むことは出来ない。
それに、毎朝アルフレッド様がお迎えに来てくださるので、休む、とは安易に言えなかった。
アルフレッド様は学園にいる間中、私と離れない。そして、その間に割り込もうとするオルティアと面白がっているネイサン……という構図が出来上がっていた。
ちなみにもう一人の攻略対象であるユージンは、何と飛び級制度で既に学園を卒業し、今は隣国に留学に行ってしまっているらしい。
「では皆さん、出来上がった刺繍を提出してくださいね」
今は男女別で男子生徒は剣術、女子生徒は刺繍の授業中だ。
アルフレッド様達とは別行動となるため、当然のごとく友達のいない私は、一人ぽつんと授業を受けていた。
前世では、全く目立たない容姿で、飛び抜けた能力もなく、いてもいなくても誰も気に留めない存在だった私。
だけど今世では、性格が変わっていないだけで、公爵令嬢で王太子の婚約者という立場と、誰もが振り返るような美貌、そして悪役令嬢という設定の名残なのか、転生チートなのかは分からないけれど、何でも完璧にこなしてしまうこの能力の高さ故に、目立ってしまうのだ。
「まあ!ジュリエット嬢の刺繍の美しいこと!流石は我が国の未来の王太子妃ですね。皆さんも、見習って下さい」
おばちゃん先生からお褒めの言葉を頂くけれど、私はちっとも嬉しくなかった。
なぜなら……。
「あら、先生。ジュリエット様は王太子殿下の婚約者というだけで、まだ王太子妃と決まったわけではありませんわ。だって、入学して半年も経つのに、まだ一人もお友達がいらっしゃらないのですよ?王太子妃……ひいては王妃として大切な資質は社交性ではありませんこと?」
そう声を上げたのは、カトリーナ・バンクシア侯爵令嬢だった。
彼女は、最近いつもこうして反発してくる。……カトリーナが言っていることは事実だから、反論しようがないのだけど。
カトリーナは、ゲームの中ではジュリエットの取り巻きの一人として登場していたモブキャラ。
ジュリエットに対してあんなに心酔していたのに……。まぁ、こんな私を良く思ってくれる人なんていないよね……。
私は、人からあからさまに敵意を向けられたことがない。
だから、カトリーナのそれは、私の心に大きなダメージを与えるには充分だった。
「……ええ。……それも大切なことですね……」
先生が目を泳がせながらそう言うのを、私は俯きながら聞いていたのだった。
出だしからあんな様子で、登校拒否したかったのは山々だけれど、今の私は仮にも『王太子の婚約者』……つまり、『未来の王太子妃』という立場だ。理由もなく学園を休むことは出来ない。
それに、毎朝アルフレッド様がお迎えに来てくださるので、休む、とは安易に言えなかった。
アルフレッド様は学園にいる間中、私と離れない。そして、その間に割り込もうとするオルティアと面白がっているネイサン……という構図が出来上がっていた。
ちなみにもう一人の攻略対象であるユージンは、何と飛び級制度で既に学園を卒業し、今は隣国に留学に行ってしまっているらしい。
「では皆さん、出来上がった刺繍を提出してくださいね」
今は男女別で男子生徒は剣術、女子生徒は刺繍の授業中だ。
アルフレッド様達とは別行動となるため、当然のごとく友達のいない私は、一人ぽつんと授業を受けていた。
前世では、全く目立たない容姿で、飛び抜けた能力もなく、いてもいなくても誰も気に留めない存在だった私。
だけど今世では、性格が変わっていないだけで、公爵令嬢で王太子の婚約者という立場と、誰もが振り返るような美貌、そして悪役令嬢という設定の名残なのか、転生チートなのかは分からないけれど、何でも完璧にこなしてしまうこの能力の高さ故に、目立ってしまうのだ。
「まあ!ジュリエット嬢の刺繍の美しいこと!流石は我が国の未来の王太子妃ですね。皆さんも、見習って下さい」
おばちゃん先生からお褒めの言葉を頂くけれど、私はちっとも嬉しくなかった。
なぜなら……。
「あら、先生。ジュリエット様は王太子殿下の婚約者というだけで、まだ王太子妃と決まったわけではありませんわ。だって、入学して半年も経つのに、まだ一人もお友達がいらっしゃらないのですよ?王太子妃……ひいては王妃として大切な資質は社交性ではありませんこと?」
そう声を上げたのは、カトリーナ・バンクシア侯爵令嬢だった。
彼女は、最近いつもこうして反発してくる。……カトリーナが言っていることは事実だから、反論しようがないのだけど。
カトリーナは、ゲームの中ではジュリエットの取り巻きの一人として登場していたモブキャラ。
ジュリエットに対してあんなに心酔していたのに……。まぁ、こんな私を良く思ってくれる人なんていないよね……。
私は、人からあからさまに敵意を向けられたことがない。
だから、カトリーナのそれは、私の心に大きなダメージを与えるには充分だった。
「……ええ。……それも大切なことですね……」
先生が目を泳がせながらそう言うのを、私は俯きながら聞いていたのだった。
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