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学園一年生編

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割り当てられた教室に案内される間、アルフレッド様は無言だった。
いくら聡明なお方とはいえ、想定外の事態に頭が混乱しているに違いない。
……出会い方は全く違っていたけれど、アルフレッド様はこれからどうやってオルティアと恋に落ちていくんだろう……。
そう考えると、私の胸がチクリと傷んだ。

教室に着くと、それぞれ席に座る。……当然のように私の隣の席はアルフレッド様だった。

「ねぇ、ジュリエット嬢?」

私が来るのを待ち構えていたかのように、オルティアが話しかけてきた。
私は思わず体を引いてしまう。

「参ったな……そんなに警戒しないでくれ」

オルティアは困ったような表情を浮かべて、少しだけ微笑む。
私は戸惑いながら、上目遣いでオルティアを見た。
同じクラスには、アルフレッド様も、攻略対象であるネイサンもいるのに、彼らには見向きもせず、何故か私だけに絡んでくるオルティア。

「こうして間近で見ると本当に可愛らしいね。……いや、可憐と言った方がしっくりくるかな。大輪の薔薇の花のような君に、ずっと恋い焦がれていたけれど、鈴蘭のような君はまた趣向が違っていいね」
「あ……あの、……どうして……」

やっぱり間違いない。このオルティアは、『悪役令嬢ジュリエット』を知っている。まさか、私と同じくゲームの内容を知っている転生者なのだろうか?
それを確認したいのに、緊張してしまって言葉が出てこない。……私って、本当に駄目だ。どうして普通に人と喋れないんだろう。

「オルティア嬢。悪いが、いくら女性同士だとは言っても、許可なく私のジルに話しかけるのは止めてくれ」

隣から、アルフレッド様が割り込んできた。

「……私のジル?」

その言葉に、オルティアがぴくりと反応し、アルフレッド様を睨みつけた。……なんだか物凄く険悪な雰囲気だ。

「……畏れながら申し上げます。確かにジュリエット嬢は王太子殿下の婚約者であらせられます。しかし、ジュリエット嬢は殿下の所有物ではございません。従って、話し掛けるのに殿下の許可を頂かなければならないという理由はないと考えます。……それから、私を『令嬢』扱いすることは、今後一切おやめください」

オルティアの、アクアマリンの瞳が冷たさを帯びた。

「……黙って聞いていれば、言ってくれるじゃないか」

穏やかなアルフレッド様が、厳しい表情を浮かべた。私はそんな二人の間に挟まれて、オロオロすることしかできない。
気がつくと、クラス中が私達のやり取りに注目していた。
……どうしてこうなっちゃったの?
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