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学園一年生編
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「おはよう、ジル。君の装いはまるで天使のようだけれど、随分と体調が悪そうだ……大丈夫かい?」
私が部屋に入ると、開口一番にアルフレッド様がそう言ってきた。
「きっと、君のことだから、あまり眠れないのだろうと思っていたけれど……案の定みたいだね。その分だと、朝食もろくに口にしていないのだろう?」
アルフレッド様は、全部お見通しのようだ。でも、どうしてわかったんだろう?
「ふふ。不思議そうな顔をしているね?私がどれだけ君を想い、どれだけの時間君を見つめてきたのか、知らないんだね……」
アルフレッド様は立ち上がると、ゆっくりと私の方へと近づいてきた。何事かと思いながらその場に突っ立っていると、アルフレッド様がいきなり私の体を横抱きにしてきたのだ。
「きゃあっ!!」
「おや、ジルにもそんな大きな声が出せるんだね。それは初めて知ったな。まだまだ、私の知らないジルの顔があると思うと、すべてを知りたくなるよ……」
どこか恍惚としたアルフレッド様の表情に、私は戸惑いと、怖さを感じる。とてもじゃないけれど、十四歳の男子のセリフとは思えないんだけど……。
そもそも私は悪役令嬢で、婚約者であるアルフレッド様に片想いをしているというのがゲームでの設定だったけれど、どう見てもこれじゃあアルフレッド様がジュリエットを溺愛していない?……しかもちょっと過保護というか……ヤンデレ気味だし。
「あの……降ろして……くださいっ……」
蚊の鳴くような声で私がそうお願いをすると、アルフレッド様はにこりと笑った。
「ジルがまた倒れたら困るから、今日は一日中こうして抱えていようかと思ってね。……ああ、重たいから、という言い訳は通用しないよ。ジルの体は、軽すぎるくらいだからね。……もっと肉を付けないと、子供を産むときに大変だよ?」
……はい?私は耳元で囁かれた言葉の意味が、脳内で処理できずにフリーズする。
一日中?抱きかかえる?子供?……いやいやいや。まだアルフレッド様も私も十四歳。立派な未成年ですからね?
確かに子供は作れる体だけれど……って、思考回路がぶっ飛んで、おかしな事を考え始めてしまう。
「……ふふ、冗談だよ。今日は入学式だからね。あまり目立つ行動をして、わざわざ君を他の男の目に晒す必要はないからね」
……何だか、ゲームの中のアルフレッド様とキャラが変わってきている気がする。内気な悪役令嬢が言えたものではないのだけれど。
……まさか、他の登場人物も、設定と違うキャラ……なんてことはないよね?
私が部屋に入ると、開口一番にアルフレッド様がそう言ってきた。
「きっと、君のことだから、あまり眠れないのだろうと思っていたけれど……案の定みたいだね。その分だと、朝食もろくに口にしていないのだろう?」
アルフレッド様は、全部お見通しのようだ。でも、どうしてわかったんだろう?
「ふふ。不思議そうな顔をしているね?私がどれだけ君を想い、どれだけの時間君を見つめてきたのか、知らないんだね……」
アルフレッド様は立ち上がると、ゆっくりと私の方へと近づいてきた。何事かと思いながらその場に突っ立っていると、アルフレッド様がいきなり私の体を横抱きにしてきたのだ。
「きゃあっ!!」
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「あの……降ろして……くださいっ……」
蚊の鳴くような声で私がそうお願いをすると、アルフレッド様はにこりと笑った。
「ジルがまた倒れたら困るから、今日は一日中こうして抱えていようかと思ってね。……ああ、重たいから、という言い訳は通用しないよ。ジルの体は、軽すぎるくらいだからね。……もっと肉を付けないと、子供を産むときに大変だよ?」
……はい?私は耳元で囁かれた言葉の意味が、脳内で処理できずにフリーズする。
一日中?抱きかかえる?子供?……いやいやいや。まだアルフレッド様も私も十四歳。立派な未成年ですからね?
確かに子供は作れる体だけれど……って、思考回路がぶっ飛んで、おかしな事を考え始めてしまう。
「……ふふ、冗談だよ。今日は入学式だからね。あまり目立つ行動をして、わざわざ君を他の男の目に晒す必要はないからね」
……何だか、ゲームの中のアルフレッド様とキャラが変わってきている気がする。内気な悪役令嬢が言えたものではないのだけれど。
……まさか、他の登場人物も、設定と違うキャラ……なんてことはないよね?
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