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211.新たな呪い
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その動きの意味を考えるような余裕はなかった。
差し向けられた魔女の指先から、ものすごい勢いでどす黒い魔力がアンネリーゼに襲い掛かる。
逃げなければ。攻撃を防がなければと思うのに、まるで金縛りに遭ったかのように動くことが出来なかった。
ジークヴァルトは魔女により押さえつけられているも同然で、動くことさえままならない。
そんな主の姿を目の当たりにしながらも、ダミアンは自らを盾にしようとアンネリーゼの前に立ちふさがる。そして防御魔法を発動したが、追い付かない。
そんなダミアンをあざ笑うかのように、魔女の放った魔力はダミアンを避けるように上空へと舞い上がると、アンネリーゼに向かって急降下した。
「………あ………っ」
黒い矢のように鋭さを持った魔力が、アンネリーゼの体を貫いたのは、ほんの一瞬の出来事だった。
「アンネリーゼ!」
「モルゲンシュテルン侯爵令嬢!」
ジークヴァルトとダミアンが、同時に叫ぶ。
何故だかその声が、妙に遠くで聞こえた気がした。
まるで首を絞められたかのように、呼吸が出来ない。
体がすべて鉛にでも変わってしまったかのように重たくて動かせない。
立っていることすらままならず、アンネリーゼは重力に従って、その場に崩れ落ちていくのを、ダミアンがかろうじて受け止めて抱き上げた。
「大丈夫ですかっ⁈」
いつも冷静なダミアンが取り乱していた。
大丈夫だと返事がしたいのに、声が出ない。首を動かすことすらもままならない。
意識はあるのに、肉体だけが眠ってしまったような、おかしな感覚だった。
「さすがに巫女姫ね。常人なら即死でしょうけど……。あの様子なら一日くらいは持つかしら?」
魔女はくつくつと喉の奥で笑い声を上げた。
「貴様っ………!アンネリーゼに何をした⁈」
地面に這いつくばりながらも、ジークヴァルトは憎しみと怒りに満ちた金色の双眸を魔女へと向けた。
「あなたの呪いを媒介にして、その小娘にも呪いをあげたのよ。………あなたのものとは真逆の……死に至る呪いをね………。何よりも大切な存在が、苦しみながら死んでいくのを為す術なく見ていることしか出来ない、その絶望感と己の無力さへの悔恨を思う存分味わうがいいわ」
魔女は腕組みをすると、怒りに震えるジークヴァルトに微笑みかける。
胸の紋章が熱を孕み、前身は汗でぐっしょりと濡れていた。
だが、そんなことはどうでもいい。
早く、アンネリーゼの様子を確認しなければ。
ジークヴァルトは力を振り絞るように、立ち上がった。
差し向けられた魔女の指先から、ものすごい勢いでどす黒い魔力がアンネリーゼに襲い掛かる。
逃げなければ。攻撃を防がなければと思うのに、まるで金縛りに遭ったかのように動くことが出来なかった。
ジークヴァルトは魔女により押さえつけられているも同然で、動くことさえままならない。
そんな主の姿を目の当たりにしながらも、ダミアンは自らを盾にしようとアンネリーゼの前に立ちふさがる。そして防御魔法を発動したが、追い付かない。
そんなダミアンをあざ笑うかのように、魔女の放った魔力はダミアンを避けるように上空へと舞い上がると、アンネリーゼに向かって急降下した。
「………あ………っ」
黒い矢のように鋭さを持った魔力が、アンネリーゼの体を貫いたのは、ほんの一瞬の出来事だった。
「アンネリーゼ!」
「モルゲンシュテルン侯爵令嬢!」
ジークヴァルトとダミアンが、同時に叫ぶ。
何故だかその声が、妙に遠くで聞こえた気がした。
まるで首を絞められたかのように、呼吸が出来ない。
体がすべて鉛にでも変わってしまったかのように重たくて動かせない。
立っていることすらままならず、アンネリーゼは重力に従って、その場に崩れ落ちていくのを、ダミアンがかろうじて受け止めて抱き上げた。
「大丈夫ですかっ⁈」
いつも冷静なダミアンが取り乱していた。
大丈夫だと返事がしたいのに、声が出ない。首を動かすことすらもままならない。
意識はあるのに、肉体だけが眠ってしまったような、おかしな感覚だった。
「さすがに巫女姫ね。常人なら即死でしょうけど……。あの様子なら一日くらいは持つかしら?」
魔女はくつくつと喉の奥で笑い声を上げた。
「貴様っ………!アンネリーゼに何をした⁈」
地面に這いつくばりながらも、ジークヴァルトは憎しみと怒りに満ちた金色の双眸を魔女へと向けた。
「あなたの呪いを媒介にして、その小娘にも呪いをあげたのよ。………あなたのものとは真逆の……死に至る呪いをね………。何よりも大切な存在が、苦しみながら死んでいくのを為す術なく見ていることしか出来ない、その絶望感と己の無力さへの悔恨を思う存分味わうがいいわ」
魔女は腕組みをすると、怒りに震えるジークヴァルトに微笑みかける。
胸の紋章が熱を孕み、前身は汗でぐっしょりと濡れていた。
だが、そんなことはどうでもいい。
早く、アンネリーゼの様子を確認しなければ。
ジークヴァルトは力を振り絞るように、立ち上がった。
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