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207.幸せを祈る
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「わたくしは…………そんなに褒め称えられるような人間ではありません」
自信なさげにアンネリーゼが俯くと、ダミアンは笑った。
「…………本当に、謙虚なのですね。そんなあなただからこそ、主は心を開いたのかもしれません。…………傷付き、心を閉ざして感情を殺してからの主は、人間の姿をした別の生き物のようでしたから………」
ジークヴァルトと魔女の戦う姿を見つめながら、ダミアンは呟く。
魔族の、しかもその頂点に限りなく近い地位にある者とは思えないような発言だった。
魔族なのに、人間よりもジークヴァルト・クラルヴァインという人を理解し、寄り添う存在なのだということがひしひしと伝わってくる。
「ダミアンさんは、ジーク様の事がとても好きなのですね」
「なっ…………?!」
アンネリーゼの言葉に、ダミアンは慌てたようだった。
恥ずかしそうに顔を背けながら、ほんのりとその頬を染めているように見えた。
「す、好き………というのは少し………いえ、かなり語弊があります。主と私は、言わば運命共同体のようなものです。………少しでも、主には幸せになって頂きたいという、私の願望のような気持ちです」
恥ずかしそうに、ダミアンは笑った。
その表情を見た途端、何故か再びアリッサの表情が思い浮かんだ。
「あなたには、私と同じ道を辿ってほしくないのよ、アンネリーゼ様…………。そんなことになれば、彼は壊れてしまうかもしれないから…………。彼は、私が求めた愛を返してくれることはなかったけれど、今もずっと一人で戦っている。彼の背負っているものは大きすぎるけれど…………アンネリーゼ様、あなたなら…………きっと……………」
同時にアリッサとかわしたそんな言葉が脳裏に蘇る。
傷付き、血塗れになりながら魔女と対峙するジークヴァルトを目で追いながら、アンネリーゼは不意に浮かんできたアリッサの言葉の意味を考えた。
わざわざ「求めた愛を返す事が無かった」と口にしたところをみると、もしかしたらアリッサも自分の気持ちに応えてくれなかったジークヴァルトの事を少しは恨んでいたかもしれないと思えた。
だがアリッサもダミアンと同じように、ジークヴァルトを大切に思うからこそ、心の底からジークヴァルトの幸せを願っているのだ。
それは、自分だって同じだ。
彼の苦しむ姿を見たくない。
傷ついて欲しくない。
生きる辛さではなく、生きる喜びを感じてほしい。
この世で一番愛しい人には、いつも幸せでいて欲しいから。
そんな気持ちに気がついた瞬間、アンネリーゼは先程までの卑屈な感情が、突然波が引くように消えていくのを感じた。
自信なさげにアンネリーゼが俯くと、ダミアンは笑った。
「…………本当に、謙虚なのですね。そんなあなただからこそ、主は心を開いたのかもしれません。…………傷付き、心を閉ざして感情を殺してからの主は、人間の姿をした別の生き物のようでしたから………」
ジークヴァルトと魔女の戦う姿を見つめながら、ダミアンは呟く。
魔族の、しかもその頂点に限りなく近い地位にある者とは思えないような発言だった。
魔族なのに、人間よりもジークヴァルト・クラルヴァインという人を理解し、寄り添う存在なのだということがひしひしと伝わってくる。
「ダミアンさんは、ジーク様の事がとても好きなのですね」
「なっ…………?!」
アンネリーゼの言葉に、ダミアンは慌てたようだった。
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恥ずかしそうに、ダミアンは笑った。
その表情を見た途端、何故か再びアリッサの表情が思い浮かんだ。
「あなたには、私と同じ道を辿ってほしくないのよ、アンネリーゼ様…………。そんなことになれば、彼は壊れてしまうかもしれないから…………。彼は、私が求めた愛を返してくれることはなかったけれど、今もずっと一人で戦っている。彼の背負っているものは大きすぎるけれど…………アンネリーゼ様、あなたなら…………きっと……………」
同時にアリッサとかわしたそんな言葉が脳裏に蘇る。
傷付き、血塗れになりながら魔女と対峙するジークヴァルトを目で追いながら、アンネリーゼは不意に浮かんできたアリッサの言葉の意味を考えた。
わざわざ「求めた愛を返す事が無かった」と口にしたところをみると、もしかしたらアリッサも自分の気持ちに応えてくれなかったジークヴァルトの事を少しは恨んでいたかもしれないと思えた。
だがアリッサもダミアンと同じように、ジークヴァルトを大切に思うからこそ、心の底からジークヴァルトの幸せを願っているのだ。
それは、自分だって同じだ。
彼の苦しむ姿を見たくない。
傷ついて欲しくない。
生きる辛さではなく、生きる喜びを感じてほしい。
この世で一番愛しい人には、いつも幸せでいて欲しいから。
そんな気持ちに気がついた瞬間、アンネリーゼは先程までの卑屈な感情が、突然波が引くように消えていくのを感じた。
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