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203.光
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「……いいわ。おしゃべりはこのくらいにして、相手をしてあげる」
仄かな怒りを宿したように見える魔女の紫の瞳が、僅かに細められた。
「まず手始めに、戦うことすらできないその小娘から殺してあげましょうか?」
魔女はぺろりと舌を出して唇を舐めた。
アンネリーゼは反射的に息を吞む。
今の状況で、自分が足手まといになるということは十分すぎる程に分かっていた。
悔しい。
アンネリーゼは強くそう思った。
巫女姫などと呼ばれていても、所詮は凡人でしかない自分が、僅かな力にさえも慣れない自分に歯痒さを感じる。
「させるか!」
ジークヴァルトがアンネリーゼに防御魔法を張った瞬間、ぱちりと何かが弾けるような気配がして、アンネリーゼの身体が眩い光を放った。
「……………っ?!」
一体何が起きたのか理解できず、ジークヴァルトもダミアンも、禍月の魔女も、そしてアンネリーゼ自身も、瞠目する。
ただ、その眩い光はアンネリーゼの胸の辺りから溢れ出すように光を放っている。
その光はどんどん強くなり、目を開けていられないほどの光となって辺り一面を包み込んだ。
同時に、空っぽだったはずの魔力が身体を満たしていくのを感じた。
戸惑いながら、アンネリーゼが何とか視界を確保しようと顔をしかめながら目を開くと、光の中で一瞬誰かの影が見えた気がした。
「…………アリッサ様?」
無意識に、アンネリーゼの口がその名を紡ぐ。
するとその影は一瞬、アンネリーゼに向かって微笑んだ気がした。
と。
温かな美しい光が全てを包んだまま弾け飛んだ。
アンネリーゼははっとして目を開く。
空を覆う不気味な雲はそのままだったが、その空を貫いていた赤黒い光の柱は綺麗に消え去っていた。
「アンネリーゼ!」
呆然とするアンネリーゼをジークヴァルトがすぐに抱きしめる。
「魔力が戻っている…………?一体何が…………?」
ジークヴァルトにはアリッサの姿が見えなかったのだろうか。
それともあれは幻だったのだろうか。
アンネリーゼは迷いながら口を開いた。
「アリッサ様が…………見えた気がしました。もしかしたら………、私達を助けようとしてくださったのでしょうか…………?」
アンネリーゼはぎゅっと胸元で手を握りしめた。
アリッサに対して嫉妬心を燃やし、ジークヴァルトに彼女への想いが無いと知ってからは喜びすら感じていたのに、彼女はそんな自分に手を差し伸べてくれたというのが信じられなかった。
アリッサには、敵わない。
巫女姫とは、彼女のような存在でなければならないと、アンネリーゼは胸が苦しくなるのを感じた。
仄かな怒りを宿したように見える魔女の紫の瞳が、僅かに細められた。
「まず手始めに、戦うことすらできないその小娘から殺してあげましょうか?」
魔女はぺろりと舌を出して唇を舐めた。
アンネリーゼは反射的に息を吞む。
今の状況で、自分が足手まといになるということは十分すぎる程に分かっていた。
悔しい。
アンネリーゼは強くそう思った。
巫女姫などと呼ばれていても、所詮は凡人でしかない自分が、僅かな力にさえも慣れない自分に歯痒さを感じる。
「させるか!」
ジークヴァルトがアンネリーゼに防御魔法を張った瞬間、ぱちりと何かが弾けるような気配がして、アンネリーゼの身体が眩い光を放った。
「……………っ?!」
一体何が起きたのか理解できず、ジークヴァルトもダミアンも、禍月の魔女も、そしてアンネリーゼ自身も、瞠目する。
ただ、その眩い光はアンネリーゼの胸の辺りから溢れ出すように光を放っている。
その光はどんどん強くなり、目を開けていられないほどの光となって辺り一面を包み込んだ。
同時に、空っぽだったはずの魔力が身体を満たしていくのを感じた。
戸惑いながら、アンネリーゼが何とか視界を確保しようと顔をしかめながら目を開くと、光の中で一瞬誰かの影が見えた気がした。
「…………アリッサ様?」
無意識に、アンネリーゼの口がその名を紡ぐ。
するとその影は一瞬、アンネリーゼに向かって微笑んだ気がした。
と。
温かな美しい光が全てを包んだまま弾け飛んだ。
アンネリーゼははっとして目を開く。
空を覆う不気味な雲はそのままだったが、その空を貫いていた赤黒い光の柱は綺麗に消え去っていた。
「アンネリーゼ!」
呆然とするアンネリーゼをジークヴァルトがすぐに抱きしめる。
「魔力が戻っている…………?一体何が…………?」
ジークヴァルトにはアリッサの姿が見えなかったのだろうか。
それともあれは幻だったのだろうか。
アンネリーゼは迷いながら口を開いた。
「アリッサ様が…………見えた気がしました。もしかしたら………、私達を助けようとしてくださったのでしょうか…………?」
アンネリーゼはぎゅっと胸元で手を握りしめた。
アリッサに対して嫉妬心を燃やし、ジークヴァルトに彼女への想いが無いと知ってからは喜びすら感じていたのに、彼女はそんな自分に手を差し伸べてくれたというのが信じられなかった。
アリッサには、敵わない。
巫女姫とは、彼女のような存在でなければならないと、アンネリーゼは胸が苦しくなるのを感じた。
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