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193.魔女の野望(SIDE:ジークヴァルト)
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ジークヴァルトは魔女の攻撃を事も無げに躱すと、わざとらしく騎士服に付いた埃を払う仕草をしてみせた。
「………それは俺の台詞だな。貴様の呪いに縛り付けられたこの数百年、ただ大人しく惰眠を貪っていた訳じゃないんだよ」
今度はジークヴァルトが手にした剣から、幾重にも連なる鋭い風の刃が舞い上がったかと思うと、それらが一斉に魔女の身体を目掛けて襲いかかった。
魔女は右手で防御壁を作り出し、ジークヴァルトの攻撃を凌ぐが、その衝撃は辺りの空気を揺らすほどだった。
「………あの時よりも強くなった?ふふ………それは愉しみだわねぇ」
この程度の攻撃が効くはずはないと分かってはいたが、魔女は何もなかったかのように毒々しさを含んだ艶やかな笑みを浮かべる。
「でも、言ったでしょう?いくら私の力で不老不死になったからといっても、所詮あなたは人間。持てる魔力は限られていると………」
魔女の笑みが深くなったその瞬間、凄まじい衝撃波がジークヴァルトを襲った。
「くっ………!」
咄嗟に防御壁を造り出すが、それでも間に合わないほどの強い魔力に、思わず呻き声が漏れた。
禍月の魔女は、ただの魔族ではない。
そうダミアンから聞いたのは、彼と血の契約を結んで間もなくの事だった。
元々が人間だったという特異な出自だということもあるが、何よりも彼女はその執念で魔族となり、それからもメキメキと力を付けていったという。
それと同時に、禍月の魔女は少しずつ魔族を、力ずくで自分の傘下に置いていったのだそうだ。
魔族は、群れる事を好まない。
故に特定の『王』を置かず、魔族の中でも力が強く、従えている魔獣が多い者が『貴族』として共同統治をしている。
だが、禍月の魔女はこの均衡を破った。
全ての魔族を従え、自らこそを唯一の王とせんと画策しているのだという。
立ち向かった魔族の貴族を尽く退ける程に、魔女の力は膨大なのだと言うが、成程、数百年ぶりにその身で味わう禍月の魔女の力に、ジークヴァルトは納得した。
攻撃に重みがあるというより、攻撃そのものに強い圧力が掛かってくるようだった。
「あら?期待させておきながら、この程度なの?………そんなことないわよね………ふふっ、見た目だけでなく魔力まで美しいわ………」
魔女の紫色の瞳が、狂喜の光を宿した。
「さあ、私をもっと楽しませて頂戴。戦って戦って、貴方のその美しい顔が怒りと絶望に歪む様を、私に見せなさい………!」
「…………貴様の望むとおりになど、誰がしてやるか」
ジークヴァルトは僅かに奥歯を食いしばると、目にも止まらぬ速さで剣を振るった。
「………それは俺の台詞だな。貴様の呪いに縛り付けられたこの数百年、ただ大人しく惰眠を貪っていた訳じゃないんだよ」
今度はジークヴァルトが手にした剣から、幾重にも連なる鋭い風の刃が舞い上がったかと思うと、それらが一斉に魔女の身体を目掛けて襲いかかった。
魔女は右手で防御壁を作り出し、ジークヴァルトの攻撃を凌ぐが、その衝撃は辺りの空気を揺らすほどだった。
「………あの時よりも強くなった?ふふ………それは愉しみだわねぇ」
この程度の攻撃が効くはずはないと分かってはいたが、魔女は何もなかったかのように毒々しさを含んだ艶やかな笑みを浮かべる。
「でも、言ったでしょう?いくら私の力で不老不死になったからといっても、所詮あなたは人間。持てる魔力は限られていると………」
魔女の笑みが深くなったその瞬間、凄まじい衝撃波がジークヴァルトを襲った。
「くっ………!」
咄嗟に防御壁を造り出すが、それでも間に合わないほどの強い魔力に、思わず呻き声が漏れた。
禍月の魔女は、ただの魔族ではない。
そうダミアンから聞いたのは、彼と血の契約を結んで間もなくの事だった。
元々が人間だったという特異な出自だということもあるが、何よりも彼女はその執念で魔族となり、それからもメキメキと力を付けていったという。
それと同時に、禍月の魔女は少しずつ魔族を、力ずくで自分の傘下に置いていったのだそうだ。
魔族は、群れる事を好まない。
故に特定の『王』を置かず、魔族の中でも力が強く、従えている魔獣が多い者が『貴族』として共同統治をしている。
だが、禍月の魔女はこの均衡を破った。
全ての魔族を従え、自らこそを唯一の王とせんと画策しているのだという。
立ち向かった魔族の貴族を尽く退ける程に、魔女の力は膨大なのだと言うが、成程、数百年ぶりにその身で味わう禍月の魔女の力に、ジークヴァルトは納得した。
攻撃に重みがあるというより、攻撃そのものに強い圧力が掛かってくるようだった。
「あら?期待させておきながら、この程度なの?………そんなことないわよね………ふふっ、見た目だけでなく魔力まで美しいわ………」
魔女の紫色の瞳が、狂喜の光を宿した。
「さあ、私をもっと楽しませて頂戴。戦って戦って、貴方のその美しい顔が怒りと絶望に歪む様を、私に見せなさい………!」
「…………貴様の望むとおりになど、誰がしてやるか」
ジークヴァルトは僅かに奥歯を食いしばると、目にも止まらぬ速さで剣を振るった。
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