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192.ジークヴァルトの怒り(SIDE:ジークヴァルト)
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アンネリーゼとフローラが対峙しているのと時を同じくして、ジークヴァルトと魔女も同じように睨み合っていた。
「………そんな顔をしなくてもいいじゃない?」
舐め回すような視線を、ジークヴァルトの規格外な程の美貌を誇る顔に送りながら、魔女は呟いた。
「この世で一番見たくないものを目の前にしているというのに、他にどんな顔をしろと?」
会話を交わす事さえも不愉快だと言わんばかりにそう吐き捨てると、ジークヴァルトは魔女のほうへ白銀色に輝く愛剣を突き付けた。
「ふふ、相変わらずつれない男。………でもね、女っていうのは冷たくされればされる程、逃げられれば逃げられる程に執着するものなのよ?」
「黙れ、下衆が」
強い風に、魔女の赤い髪が巻き上げられる。
まるで髪の毛が別の生き物に見えて、ジークヴァルトはまた嫌悪感を抱いた。
乱暴な言葉をぶつけると、剣に魔力を纏わせる。
「………私にはこんなにも冷たいのに、あの小娘には優しくするだなんて、面白くないわ。あの娘のキレイな顔を滅茶苦茶に引き裂きたくなるくらいに、憎たらしいわねぇ……」
「アンネリーゼに危害を加えるようなら、先に貴様を引き裂いてやる」
狡猾に獲物を追い詰めて狙う毒蛇のような紫色の瞳がちらりとアンネリーゼに向けられた途端、ジークヴァルトは怒りを露わにした。
「ああ………いいわ。あなたのその怒りに支配された表情………。最高よ…………!」
魔女は恍惚とした表情を浮かべると僅かに目を細めた。
「言葉だけでそんなにも激昂するのなら、本気であの娘を殺してあげたくなるわ。それもとっても残酷な方法でね………。うふふ、想像しただけで楽しそう。為す術もなく、目の前で最愛の女の命を奪ったら、あなたはどんな表情を見せてくれるのかしら…………?」
挑発に乗ってはいけないと思いながらも、ジークヴァルトは込み上げる怒りを抑えることが出来なかった。
「そんなこと、させるか!」
「ふふっ、その負けん気の強さだけは認めてあげるけれど………あなたに私が倒せるだなんて、それこそ思い上がりも大概にして頂戴」
莫迦にしたように鼻で嘲笑うと、魔女は口元を大きく歪めた。
「あなたはどんなに強くなったとしても、所詮人間。その美しい肉体に蓄えられる魔力などたかが知れているわ。魔族になった私とは、比較にならないのよ」
魔女が僅かに指先を動かす。
それと同時に光の柱から迸った闇の欠片が無数の刃となり、ジークヴァルトに襲いかかった。
「………そんな顔をしなくてもいいじゃない?」
舐め回すような視線を、ジークヴァルトの規格外な程の美貌を誇る顔に送りながら、魔女は呟いた。
「この世で一番見たくないものを目の前にしているというのに、他にどんな顔をしろと?」
会話を交わす事さえも不愉快だと言わんばかりにそう吐き捨てると、ジークヴァルトは魔女のほうへ白銀色に輝く愛剣を突き付けた。
「ふふ、相変わらずつれない男。………でもね、女っていうのは冷たくされればされる程、逃げられれば逃げられる程に執着するものなのよ?」
「黙れ、下衆が」
強い風に、魔女の赤い髪が巻き上げられる。
まるで髪の毛が別の生き物に見えて、ジークヴァルトはまた嫌悪感を抱いた。
乱暴な言葉をぶつけると、剣に魔力を纏わせる。
「………私にはこんなにも冷たいのに、あの小娘には優しくするだなんて、面白くないわ。あの娘のキレイな顔を滅茶苦茶に引き裂きたくなるくらいに、憎たらしいわねぇ……」
「アンネリーゼに危害を加えるようなら、先に貴様を引き裂いてやる」
狡猾に獲物を追い詰めて狙う毒蛇のような紫色の瞳がちらりとアンネリーゼに向けられた途端、ジークヴァルトは怒りを露わにした。
「ああ………いいわ。あなたのその怒りに支配された表情………。最高よ…………!」
魔女は恍惚とした表情を浮かべると僅かに目を細めた。
「言葉だけでそんなにも激昂するのなら、本気であの娘を殺してあげたくなるわ。それもとっても残酷な方法でね………。うふふ、想像しただけで楽しそう。為す術もなく、目の前で最愛の女の命を奪ったら、あなたはどんな表情を見せてくれるのかしら…………?」
挑発に乗ってはいけないと思いながらも、ジークヴァルトは込み上げる怒りを抑えることが出来なかった。
「そんなこと、させるか!」
「ふふっ、その負けん気の強さだけは認めてあげるけれど………あなたに私が倒せるだなんて、それこそ思い上がりも大概にして頂戴」
莫迦にしたように鼻で嘲笑うと、魔女は口元を大きく歪めた。
「あなたはどんなに強くなったとしても、所詮人間。その美しい肉体に蓄えられる魔力などたかが知れているわ。魔族になった私とは、比較にならないのよ」
魔女が僅かに指先を動かす。
それと同時に光の柱から迸った闇の欠片が無数の刃となり、ジークヴァルトに襲いかかった。
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