191 / 230
191.衝突
しおりを挟む
「そんな風になるまでに…………自らを貶めるのならば、もっと他に手段があったでしょうに…………」
可憐で思わず守ってあげたくなるような可愛らしさはすっかりと姿を消し、代わりにこの禍々しさと凶悪さを纏ったフローラが、紫色の瞳により一層強い憎しみを浮かべた。
『オマエニナニガワカル!?』
ぶわっと闇が襲いかかってくるのが見えたが、アンネリーゼはまたしても攻撃無効化の魔法でそれを受け流した。
「あなたの気持ちは、わからないわ。これまでも………そして、これからも………」
フローラの背後の影から、溶岩が流れ出すようにゆっくりと闇が蠢くのが見えて、アンネリーゼは不快感に眉を顰めた。
「どんなに努力をしても、どんなに願っても手に入らないものは沢山あるわ。………でも、あなたは自分の望むものを手に入れるために、一体何をしたの?」
顔が歪みかけたフローラを真っ直ぐ射抜くように見つめるアンネリーゼの深い蒼の瞳は、どこまでも澄み切った泉の淵のようだった。
『…………ダマレ!ソンナコトハオマエニハカンケイナイ!』
フローラの金切り声に近い怒声が、辺りに響き渡ると、それに反応するかのように王都の各所に出現した赤黒い光の柱がより一層力を増す。
それに驚いたアンネリーゼを、刃のように鋭い闇魔法が襲った。
避けきれなかった攻撃が、アンネリーゼの頬や腕を切り裂く。
「…………っ!」
痛みと衝撃に、思わず息を漏らすアンネリーゼに、フローラは低い呻き声を吐き出しながら躙り寄ってきた。
「欲しがるだけで、手に入れる努力をしないのならば、それは子供の我儘と同じだわ。………そのために無関係な人達を巻き込んで、命まで奪うだなんて………」
やや強い口調でフローラを詰ると、アンネリーゼは深く息を吸い込んで、ぎゅっと両足に力を込めた。
「………いつかあなたと、きちんと向かい合って話がしたいと思っていましたが………、やはりあなたとは分かり合えないみたいだわ」
アンネリーゼは静かにそう告げると集中して体内に巡る魔力を高めていく。
「あなたのしたことは、許されることではないわ」
アンネリーゼは怒気を孕んだ声をフローラに向けてから、フローラへと魔力を向ける。
「………我、大地を潤す水の精霊の名を知る者。汝らの力を我に与えよ。………水の刃」
アンネリーゼが攻撃魔法を使うのは、生まれて初めての事だった。
人を傷つけるのは本意ではないが、フローラを止めなければ、もっと沢山の命が奪われることになるかもしれない。
アンネリーゼは迷う気持ちを振り払うように、魔法に集中した。
可憐で思わず守ってあげたくなるような可愛らしさはすっかりと姿を消し、代わりにこの禍々しさと凶悪さを纏ったフローラが、紫色の瞳により一層強い憎しみを浮かべた。
『オマエニナニガワカル!?』
ぶわっと闇が襲いかかってくるのが見えたが、アンネリーゼはまたしても攻撃無効化の魔法でそれを受け流した。
「あなたの気持ちは、わからないわ。これまでも………そして、これからも………」
フローラの背後の影から、溶岩が流れ出すようにゆっくりと闇が蠢くのが見えて、アンネリーゼは不快感に眉を顰めた。
「どんなに努力をしても、どんなに願っても手に入らないものは沢山あるわ。………でも、あなたは自分の望むものを手に入れるために、一体何をしたの?」
顔が歪みかけたフローラを真っ直ぐ射抜くように見つめるアンネリーゼの深い蒼の瞳は、どこまでも澄み切った泉の淵のようだった。
『…………ダマレ!ソンナコトハオマエニハカンケイナイ!』
フローラの金切り声に近い怒声が、辺りに響き渡ると、それに反応するかのように王都の各所に出現した赤黒い光の柱がより一層力を増す。
それに驚いたアンネリーゼを、刃のように鋭い闇魔法が襲った。
避けきれなかった攻撃が、アンネリーゼの頬や腕を切り裂く。
「…………っ!」
痛みと衝撃に、思わず息を漏らすアンネリーゼに、フローラは低い呻き声を吐き出しながら躙り寄ってきた。
「欲しがるだけで、手に入れる努力をしないのならば、それは子供の我儘と同じだわ。………そのために無関係な人達を巻き込んで、命まで奪うだなんて………」
やや強い口調でフローラを詰ると、アンネリーゼは深く息を吸い込んで、ぎゅっと両足に力を込めた。
「………いつかあなたと、きちんと向かい合って話がしたいと思っていましたが………、やはりあなたとは分かり合えないみたいだわ」
アンネリーゼは静かにそう告げると集中して体内に巡る魔力を高めていく。
「あなたのしたことは、許されることではないわ」
アンネリーゼは怒気を孕んだ声をフローラに向けてから、フローラへと魔力を向ける。
「………我、大地を潤す水の精霊の名を知る者。汝らの力を我に与えよ。………水の刃」
アンネリーゼが攻撃魔法を使うのは、生まれて初めての事だった。
人を傷つけるのは本意ではないが、フローラを止めなければ、もっと沢山の命が奪われることになるかもしれない。
アンネリーゼは迷う気持ちを振り払うように、魔法に集中した。
21
お気に入りに追加
947
あなたにおすすめの小説
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる