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184.ギュンターの野心
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「そんなに知りたいなら教えてやるさ」
ふっと真顔になったギュンターが、まるで知らない人間のようにアンネリーゼの目には映った。
「俺は、伯爵なんかで終わっていい人間ではないんだ!侯爵にも、公爵にだって………いや、国王にすらなれる器だ!それなのにお前の父親は俺では力不足だから爵位は譲らないと俺に言いやがった!おれは侯爵になるためにお前と婚約したというのに、お前の父親は、俺の才能を認めないどころかコケにしたんだ。………そんな俺に手を差し伸べてくれたのがフローラだった。巫女姫の資格を持つ自分なら、俺をあるべき地位へと導けると………。だから俺はお前を切り捨て、フローラを取った。それなのにお前ときたら汚い手を使って巫女姫の地位をフローラから奪い取ったんだ」
全てが酷い思い込みと度を越した勘違いとしか表現のしようがないギュンターの言い訳に、アンネリーゼは閉口した。
元婚約者として、彼の言葉を否定し、彼の過ちを嗜めるべきだろうか。
否。ギュンターが自分に都合の悪いことを受け入れるはずがないということは初めからわかっていることだ。
「ギュンター様………それは事実とは違うのです………」
それでも、何とか真実を伝えなければとアンネリーゼはギュンターを説得しようと試みた。
「黙れ!お前が巫女姫の資格がないにも関わらず、儀式を強行しようとした結果が、この惨状なのだ!大人しくフローラに謝罪し、罪を認め、罰を受ければ………元婚約者のよしみで命は救ってやろう。お前の振る舞い次第では、愛妾として召し抱えてやろう。お前は偽善者のようでいけ好かないが、お前の顔は嫌いではないからな」
後半の方は、少し下卑た笑いを浮かべながらギュンターはアンネリーゼを罵倒したが、アンネリーゼは悲しみすらも浮かんでこないことに気がついた。
寧ろ、全くもって見当違いなその言い分こそが真実だと思いこんでいるギュンターが、少し哀れに感じられた。
「それで、あなたに相応しい地位とは…………?」
今の発言から大凡彼の返答に予想はついていたが、念の為本人に確認をしようと、アンネリーゼはギュンターに問いかける。
「欲は深いくせに、頭は働かないようだな。………俺は、この国の王になる男なんだ!」
狂っているとしか思えない発言に、アンネリーゼは目眩すら覚える。
そもそもギュンターは自身の頭脳に絶対の自信を持っているようだが、彼はものにもよるが、特に歴史と算術は人並み以下、文章もはっきり言って才能はなかった。
「…………貴様、巫山戯るのも大概にしろ。お前の婚約者とやらが偽の巫女姫だとわからないのか?………それから、アンネリーゼは返してもらう!」
突然、体が自分の意志とは関係なくふわりと宙を浮いたあと、とさりと誰かの腕に抱きとめられたのが分かった。
「ジーク様………っ」
腕の主の名を呼ぶと、彼は金色の瞳を僅かに緩めたのだった。
ふっと真顔になったギュンターが、まるで知らない人間のようにアンネリーゼの目には映った。
「俺は、伯爵なんかで終わっていい人間ではないんだ!侯爵にも、公爵にだって………いや、国王にすらなれる器だ!それなのにお前の父親は俺では力不足だから爵位は譲らないと俺に言いやがった!おれは侯爵になるためにお前と婚約したというのに、お前の父親は、俺の才能を認めないどころかコケにしたんだ。………そんな俺に手を差し伸べてくれたのがフローラだった。巫女姫の資格を持つ自分なら、俺をあるべき地位へと導けると………。だから俺はお前を切り捨て、フローラを取った。それなのにお前ときたら汚い手を使って巫女姫の地位をフローラから奪い取ったんだ」
全てが酷い思い込みと度を越した勘違いとしか表現のしようがないギュンターの言い訳に、アンネリーゼは閉口した。
元婚約者として、彼の言葉を否定し、彼の過ちを嗜めるべきだろうか。
否。ギュンターが自分に都合の悪いことを受け入れるはずがないということは初めからわかっていることだ。
「ギュンター様………それは事実とは違うのです………」
それでも、何とか真実を伝えなければとアンネリーゼはギュンターを説得しようと試みた。
「黙れ!お前が巫女姫の資格がないにも関わらず、儀式を強行しようとした結果が、この惨状なのだ!大人しくフローラに謝罪し、罪を認め、罰を受ければ………元婚約者のよしみで命は救ってやろう。お前の振る舞い次第では、愛妾として召し抱えてやろう。お前は偽善者のようでいけ好かないが、お前の顔は嫌いではないからな」
後半の方は、少し下卑た笑いを浮かべながらギュンターはアンネリーゼを罵倒したが、アンネリーゼは悲しみすらも浮かんでこないことに気がついた。
寧ろ、全くもって見当違いなその言い分こそが真実だと思いこんでいるギュンターが、少し哀れに感じられた。
「それで、あなたに相応しい地位とは…………?」
今の発言から大凡彼の返答に予想はついていたが、念の為本人に確認をしようと、アンネリーゼはギュンターに問いかける。
「欲は深いくせに、頭は働かないようだな。………俺は、この国の王になる男なんだ!」
狂っているとしか思えない発言に、アンネリーゼは目眩すら覚える。
そもそもギュンターは自身の頭脳に絶対の自信を持っているようだが、彼はものにもよるが、特に歴史と算術は人並み以下、文章もはっきり言って才能はなかった。
「…………貴様、巫山戯るのも大概にしろ。お前の婚約者とやらが偽の巫女姫だとわからないのか?………それから、アンネリーゼは返してもらう!」
突然、体が自分の意志とは関係なくふわりと宙を浮いたあと、とさりと誰かの腕に抱きとめられたのが分かった。
「ジーク様………っ」
腕の主の名を呼ぶと、彼は金色の瞳を僅かに緩めたのだった。
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