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160.聖殿へ
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自室の扉を開けると、ジークヴァルトが純白の騎士服を纏った姿で待ち構えていた。
その肩にはダミアンの姿もある。
「アンネリーゼ………その、とても綺麗だ」
朝の挨拶よりも先に褒め言葉を貰えて、アンネリーゼは嬉しそうに頬を染めた。
「いよいよですね、モルゲンシュテルン侯爵令嬢。私も微力ながらお手伝いさせて頂きますよ」
「ありがとうございます、ダミアン様」
他愛ない会話を交わしながらエントランスホールへと向かうと、両親や使用人が集まっていた。
「アンネリーゼ………私の大切な娘」
モルゲンシュテルン侯爵が、寂しそうな表情を浮かべた。
「お父様………お母様…………」
たった一週間程度家を離れるだけだというのに、こんなにも両親が心配しているのは、儀式の度に良からぬ事件が起こるからだろう。
アンネリーゼは一瞬、フローラの事を思い出したが、すぐに考えを切り替える。
「………お前なら、大丈夫だ。必ずや儀式を成功させることができるはずだ」
「そうよ、アン。あなたなら大丈夫だと信じているわ」
優しく、まるでアンネリーゼを諭ように、侯爵が、次いで侯爵夫人が声を掛けた。
「………はい。わたくし、モルゲンシュテルン侯爵家の名に恥じぬよう、精一杯務めを果たして参ります」
両親に向かってふわりと微笑むと、侯爵と侯爵夫人は、ようやく笑顔を浮かべる。
「クラルヴァイン辺境伯殿。娘を頼みます」
「勿論です。今度こそ、彼女には指の一本たりとも触れさせませんから」
強い決意の浮かんだ金色の瞳に、侯爵は一瞬目を細め、それからゆっくりと頷いた。
「それでは、行ってまいります」
「ああ」
ジークヴァルトと共に侯爵夫妻にお辞儀をすると、二人はゆっくりとホールを抜け、外に用意された馬車へと乗り込んだ。
一旦王城へと向かい、ゲルハルト国王と王妃への謁見を済ませる。
巫女姫となってから幾度となく国王夫妻とは顔を合わせていたが、巫女姫という立場で国王に謁見するのは、今回と、無事に一連の儀式が終了した事を報告する時のみになるというのが何だか不思議に思えた。
いよいよ聖殿へと向かう道の沿線には、百年に一度の儀式へと向かう神聖な巫女姫の姿を一目見ようと多くの人々が詰めかけていた。
「凄い人ね…………」
フォイルゲンやクルツに出向いた時にもかなりの人がいたが、やはり人口規模としてはヴァルツァーが一番だということもあり、その歓声は馬車の窓越しにも聞こててくるほどだった。
「それだけこの国で、あなたという存在が大きいということだ」
向かいに座ったジークヴァルトが、栗色に変化させた瞳でアンネリーゼを愛おしげに見つめた。
その肩にはダミアンの姿もある。
「アンネリーゼ………その、とても綺麗だ」
朝の挨拶よりも先に褒め言葉を貰えて、アンネリーゼは嬉しそうに頬を染めた。
「いよいよですね、モルゲンシュテルン侯爵令嬢。私も微力ながらお手伝いさせて頂きますよ」
「ありがとうございます、ダミアン様」
他愛ない会話を交わしながらエントランスホールへと向かうと、両親や使用人が集まっていた。
「アンネリーゼ………私の大切な娘」
モルゲンシュテルン侯爵が、寂しそうな表情を浮かべた。
「お父様………お母様…………」
たった一週間程度家を離れるだけだというのに、こんなにも両親が心配しているのは、儀式の度に良からぬ事件が起こるからだろう。
アンネリーゼは一瞬、フローラの事を思い出したが、すぐに考えを切り替える。
「………お前なら、大丈夫だ。必ずや儀式を成功させることができるはずだ」
「そうよ、アン。あなたなら大丈夫だと信じているわ」
優しく、まるでアンネリーゼを諭ように、侯爵が、次いで侯爵夫人が声を掛けた。
「………はい。わたくし、モルゲンシュテルン侯爵家の名に恥じぬよう、精一杯務めを果たして参ります」
両親に向かってふわりと微笑むと、侯爵と侯爵夫人は、ようやく笑顔を浮かべる。
「クラルヴァイン辺境伯殿。娘を頼みます」
「勿論です。今度こそ、彼女には指の一本たりとも触れさせませんから」
強い決意の浮かんだ金色の瞳に、侯爵は一瞬目を細め、それからゆっくりと頷いた。
「それでは、行ってまいります」
「ああ」
ジークヴァルトと共に侯爵夫妻にお辞儀をすると、二人はゆっくりとホールを抜け、外に用意された馬車へと乗り込んだ。
一旦王城へと向かい、ゲルハルト国王と王妃への謁見を済ませる。
巫女姫となってから幾度となく国王夫妻とは顔を合わせていたが、巫女姫という立場で国王に謁見するのは、今回と、無事に一連の儀式が終了した事を報告する時のみになるというのが何だか不思議に思えた。
いよいよ聖殿へと向かう道の沿線には、百年に一度の儀式へと向かう神聖な巫女姫の姿を一目見ようと多くの人々が詰めかけていた。
「凄い人ね…………」
フォイルゲンやクルツに出向いた時にもかなりの人がいたが、やはり人口規模としてはヴァルツァーが一番だということもあり、その歓声は馬車の窓越しにも聞こててくるほどだった。
「それだけこの国で、あなたという存在が大きいということだ」
向かいに座ったジークヴァルトが、栗色に変化させた瞳でアンネリーゼを愛おしげに見つめた。
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