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140.戦闘開始(SIDE:ダミアン)※少し残酷描写あり
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ダミアンを中心に、六メートル四方がまるて切り取られたかのように青白い光の壁に包まれる。
同時に術者であるジークヴァルトと、彼に護られているアンネリーゼの姿は壁の向こうに消えるように見えなくなった。
「くっ………!」
男達が閃光に怯んでいる隙に、ダミアンが音もなくすっと動き、男達に近づいた。
「貴様、巫女姫をどこへ隠した?!」
「魔法の性質を見極める技量すら持たぬ癖に、主を襲おうだなど………身の程知らずとはあなた達のような事を言うのですよ。………さて、大人しく連行されるなら、危害は加えません。歯向かうつもりなら、五体満足のままでいられることはお約束出来かねますが…………どうしますか?」
はっきりとした侮蔑の色を含んだ鮮やかな紫の瞳を男達に向けると、彼等は皆一様に目を見開いた。
「ま………魔族…………っ?!何故王都の真ん中に貴様らのような穢らわしい生き物が………!!」
ダミアンは整った顔を僅かに歪めて嘲笑った。
「………魔族が穢らわしい?国の為にその身を危険に晒しながら健気に頑張る美しいご令嬢を襲撃するような野蛮で下劣な輩に、見下される謂れなどありませんがね。………ああ、所詮金で雇われただけの愚物「」には言葉の意味すらも理解できなかったのですね」
「何だと………っ!」
ダミアンの挑発に、まんまと乗せられた男達は、腰からぶら下げた剣を抜き放ち、ダミアンへと向ける。
「………慣れないものを振り回すと、大怪我しますよ」
ダミアンの双眸が、冷たさを帯びたことに男達は気が付かない。
いくらダミアンが魔族とはいえ、たった一人であること、そして一切武器を手にしていない事に油断しているとしか考えられなかった。
「………一応、忠告はしましたからね?」
ダミアンがそう呟くのと同時に、ざあっと風が吹き付けてきた。
同時に、正面からダミアンに向かってきた男の動きが、突然止まった。
「…………あ?」
本人ですら、自分の身に何が起きたのかが理解出来ていないらしく、その違和感に気が付くまでに暫しの間があった。
「お探しの物は、上ですよ」
穏やかな笑顔を浮かべたダミアンは、鋭い爪の光る人差し指を空に向けた。
男が目を瞬き、それから恐る恐る自分の頭上へと顔を向ける。
その鼻先、僅か二十センチ程度………正面を向いていれば恐らくは脳天のすぐ真上に、己の手の内にあった筈の剣の切先が、鋭く光っていた。
それは、ダミアンの風魔法によりふわふわと浮かんでいる不安定な状態で、ダミアンが少しでも風を弱めれば下にいる自分が頭から串刺しになりかねないという事に気がついた男の顔から、さあっと血の気が引いていった。
「ひっ………!」
先程までの威勢はどこへやら、情けない声を上げて、男はその場にへたり込んだ。
同時に術者であるジークヴァルトと、彼に護られているアンネリーゼの姿は壁の向こうに消えるように見えなくなった。
「くっ………!」
男達が閃光に怯んでいる隙に、ダミアンが音もなくすっと動き、男達に近づいた。
「貴様、巫女姫をどこへ隠した?!」
「魔法の性質を見極める技量すら持たぬ癖に、主を襲おうだなど………身の程知らずとはあなた達のような事を言うのですよ。………さて、大人しく連行されるなら、危害は加えません。歯向かうつもりなら、五体満足のままでいられることはお約束出来かねますが…………どうしますか?」
はっきりとした侮蔑の色を含んだ鮮やかな紫の瞳を男達に向けると、彼等は皆一様に目を見開いた。
「ま………魔族…………っ?!何故王都の真ん中に貴様らのような穢らわしい生き物が………!!」
ダミアンは整った顔を僅かに歪めて嘲笑った。
「………魔族が穢らわしい?国の為にその身を危険に晒しながら健気に頑張る美しいご令嬢を襲撃するような野蛮で下劣な輩に、見下される謂れなどありませんがね。………ああ、所詮金で雇われただけの愚物「」には言葉の意味すらも理解できなかったのですね」
「何だと………っ!」
ダミアンの挑発に、まんまと乗せられた男達は、腰からぶら下げた剣を抜き放ち、ダミアンへと向ける。
「………慣れないものを振り回すと、大怪我しますよ」
ダミアンの双眸が、冷たさを帯びたことに男達は気が付かない。
いくらダミアンが魔族とはいえ、たった一人であること、そして一切武器を手にしていない事に油断しているとしか考えられなかった。
「………一応、忠告はしましたからね?」
ダミアンがそう呟くのと同時に、ざあっと風が吹き付けてきた。
同時に、正面からダミアンに向かってきた男の動きが、突然止まった。
「…………あ?」
本人ですら、自分の身に何が起きたのかが理解出来ていないらしく、その違和感に気が付くまでに暫しの間があった。
「お探しの物は、上ですよ」
穏やかな笑顔を浮かべたダミアンは、鋭い爪の光る人差し指を空に向けた。
男が目を瞬き、それから恐る恐る自分の頭上へと顔を向ける。
その鼻先、僅か二十センチ程度………正面を向いていれば恐らくは脳天のすぐ真上に、己の手の内にあった筈の剣の切先が、鋭く光っていた。
それは、ダミアンの風魔法によりふわふわと浮かんでいる不安定な状態で、ダミアンが少しでも風を弱めれば下にいる自分が頭から串刺しになりかねないという事に気がついた男の顔から、さあっと血の気が引いていった。
「ひっ………!」
先程までの威勢はどこへやら、情けない声を上げて、男はその場にへたり込んだ。
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