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120.魔鳥
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「………それに、モルゲンシュテルン侯爵令嬢に対する態度を見れば、その可能性は自ずと否定できるのではないか?」
突然ゲルハルトから、やけに生温かい視線を向けられたアンネリーゼは、はっとして、それから恥ずかしさに顔を赤らめて俯いた。
そもそも横抱きにされた状態での帰国は、二人の関係を示すには充分だったし、今もジークヴァルトはアンネリーゼにぴったりと寄り添っている。
「………それは、重々承知しております。ただ、小さな疑念が後で大事にならないとも限りませんから、確認をさせて頂いたのです。陛下の仰る通りですね。………クラルヴァイン辺境伯殿、大変ご不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした」
イェルクの表情から険しさが消えたのを見て、ジークヴァルトも幾らか態度を軟化させた。
「いや………、俺は別に気にしていません。………寧ろ、巫女姫の護衛騎士が魔族を従えているという事実は、あなた方にとってはさぞかし世間体が悪いでしょう。………隠していたことは、謝罪します」
「いえ。私とて、魔族が全て悪だとは考えておりません。クラルヴァイン辺境伯殿が従えている、という事は例の魔鳥は、我々人間の助けになってくれる存在、という判断でよろしいのでしょうか?」
イェルクの言葉に、ジークヴァルトははっきりと頷いたが、アンネリーゼは話の内容を飲み込めずにいた。
ゲルハルトとジークヴァルト、そしてイェルクは一体何の話をしているのだろう。
魔鳥だとか魔族だとか、不穏な言葉にアンネリーゼは不安そうにジークヴァルトに視線を向けた。
「あの、ジーク様?魔鳥とは一体何のことでしょうか………?」
「あぁ、そういえば鳥としては………そもそも正式に彼と会ったことはなかったのか………。俺が血の契約を結んで従えている、魔族です。アンネリーゼも知っている人物だから、心配いらない。今度きちんと紹介しよう」
そう言ってジークヴァルトは微笑むが、さっぱり話の見えてこないアンネリーゼはきょとんとしていた。
「………陛下からは、クラルヴァイン辺境伯殿は既に首謀者に目星を付けていると聞いておりますが、それもその魔鳥が齎した情報でしょうか?」
「ええ。彼は有能すぎるほど有能でして、俺が頼んでもない事まで調べてくれるのです。………その首謀者から巫女姫を守ったのも、『禍月の魔女』の気配を察知したのも、彼ですよ」
ため息混じりにそう説明したジークヴァルトに、ゲルハルトが鋭い眼差しを向けた。
「それで、禍月の魔女と繋がっているのは、一体誰なのだ?」
ジークヴァルトは月光のような静けさを湛えた双眸を、真っ直ぐにゲルハルトへと向けた。
「クラネルト男爵令嬢です」
おそらく、予想はしていたのだろう。ゲルハルトとイェルクは顔を顰め、モルゲンシュテルン侯爵夫妻は怒りを顕にした。
唯一人、アンネリーゼだけは悲しげに目を伏せると、きゅっと唇を引き結んだのだった。
突然ゲルハルトから、やけに生温かい視線を向けられたアンネリーゼは、はっとして、それから恥ずかしさに顔を赤らめて俯いた。
そもそも横抱きにされた状態での帰国は、二人の関係を示すには充分だったし、今もジークヴァルトはアンネリーゼにぴったりと寄り添っている。
「………それは、重々承知しております。ただ、小さな疑念が後で大事にならないとも限りませんから、確認をさせて頂いたのです。陛下の仰る通りですね。………クラルヴァイン辺境伯殿、大変ご不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした」
イェルクの表情から険しさが消えたのを見て、ジークヴァルトも幾らか態度を軟化させた。
「いや………、俺は別に気にしていません。………寧ろ、巫女姫の護衛騎士が魔族を従えているという事実は、あなた方にとってはさぞかし世間体が悪いでしょう。………隠していたことは、謝罪します」
「いえ。私とて、魔族が全て悪だとは考えておりません。クラルヴァイン辺境伯殿が従えている、という事は例の魔鳥は、我々人間の助けになってくれる存在、という判断でよろしいのでしょうか?」
イェルクの言葉に、ジークヴァルトははっきりと頷いたが、アンネリーゼは話の内容を飲み込めずにいた。
ゲルハルトとジークヴァルト、そしてイェルクは一体何の話をしているのだろう。
魔鳥だとか魔族だとか、不穏な言葉にアンネリーゼは不安そうにジークヴァルトに視線を向けた。
「あの、ジーク様?魔鳥とは一体何のことでしょうか………?」
「あぁ、そういえば鳥としては………そもそも正式に彼と会ったことはなかったのか………。俺が血の契約を結んで従えている、魔族です。アンネリーゼも知っている人物だから、心配いらない。今度きちんと紹介しよう」
そう言ってジークヴァルトは微笑むが、さっぱり話の見えてこないアンネリーゼはきょとんとしていた。
「………陛下からは、クラルヴァイン辺境伯殿は既に首謀者に目星を付けていると聞いておりますが、それもその魔鳥が齎した情報でしょうか?」
「ええ。彼は有能すぎるほど有能でして、俺が頼んでもない事まで調べてくれるのです。………その首謀者から巫女姫を守ったのも、『禍月の魔女』の気配を察知したのも、彼ですよ」
ため息混じりにそう説明したジークヴァルトに、ゲルハルトが鋭い眼差しを向けた。
「それで、禍月の魔女と繋がっているのは、一体誰なのだ?」
ジークヴァルトは月光のような静けさを湛えた双眸を、真っ直ぐにゲルハルトへと向けた。
「クラネルト男爵令嬢です」
おそらく、予想はしていたのだろう。ゲルハルトとイェルクは顔を顰め、モルゲンシュテルン侯爵夫妻は怒りを顕にした。
唯一人、アンネリーゼだけは悲しげに目を伏せると、きゅっと唇を引き結んだのだった。
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