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118.責任
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「無事だったのは何よりだが…………全く、暗殺未遂とはまた派手にやってくれたものだな」
筋肉質で大柄な身体を乱暴に椅子に投げ出したゲルハルトは深い溜息を漏らした。
「その件に関しては、責任の一端は私にもございます」
モルゲンシュテルン侯爵は、悔しそうに顔を歪めると、項垂れた。
「………娘を大切に思っているのであれば、、侍女は信頼出来る者を付けてやるべきだったな」
ジークヴァルトは当然のようにアンネリーゼの隣に腰を降ろしながら、モルゲンシュテルン侯爵に冷ややかな目を向ける。
「………分かっている」
侯爵がぎゅっと拳を握りしめた。
ミアがアンネリーゼを害そうと、毒を使ったと聞き、侯爵は耳を疑った。
ミアは五年前に、雇ってほしいと直談判してきた使用人だったが、明るく、人好きのする性格で、何よりよく働いた。
忠誠心も篤かったために、アンネリーゼ付きの侍女とした経緯があったが、そのミアが間者だったなどとは、まさに青天の霹靂だった。
「………あの女が隠し持っていた敵意に気がつけなかったのは、私も同じですので侯爵ばかりを責めることは出来ませんが」
ほんの少し、長いまつ毛を伏せると、ジークヴァルトも溜息をついた。
「………今は、誰の責任なのかを議すべき時ではありません」
ジークヴァルトと侯爵の間に割って入ったのは、ゲルハルトではなく、神官のイェルクの方だった。
イェルクは真っ白な長い髭を撫で、アンネリーゼとジークヴァルトに視線を向けた。
「クラルヴァイン辺境伯殿のお陰で、今回は事なきを得ましたが………、もしも手遅れになっていたとしたら、あの『混沌の百年』が再び起こってしまうところだったと、考えるだけでも恐ろしいことでした。………しかし、私が気になっていることがあるのです。事件が引き起こされたのは、儀式の終わった直後のクルツ公国。そして、護衛騎士は同一人物………。偶然と言うのには、『混沌の百年』の始まりとあまりに似通った部分が多いと思いませんかな、クラルヴァイン辺境伯殿?」
あくまでも穏やかな口調が告げる事実に、ジークヴァルトは一瞬大きく目を開いたかと思うと、苦々しそうにその美貌を誇る顔を顰めた。
「………私が訊ねたところで、何が変わるというわけではありませんが…………当時の巫女姫でいらっしゃっアリッサ・エーベルト侯爵令嬢は、本当に病死だったのですか…………?」
静かに落とされたイェルクの疑問を耳にした、ジークヴァルトが、一瞬はっと息を呑んだのを、アンネリーゼははっきりと目にしたのだった。
筋肉質で大柄な身体を乱暴に椅子に投げ出したゲルハルトは深い溜息を漏らした。
「その件に関しては、責任の一端は私にもございます」
モルゲンシュテルン侯爵は、悔しそうに顔を歪めると、項垂れた。
「………娘を大切に思っているのであれば、、侍女は信頼出来る者を付けてやるべきだったな」
ジークヴァルトは当然のようにアンネリーゼの隣に腰を降ろしながら、モルゲンシュテルン侯爵に冷ややかな目を向ける。
「………分かっている」
侯爵がぎゅっと拳を握りしめた。
ミアがアンネリーゼを害そうと、毒を使ったと聞き、侯爵は耳を疑った。
ミアは五年前に、雇ってほしいと直談判してきた使用人だったが、明るく、人好きのする性格で、何よりよく働いた。
忠誠心も篤かったために、アンネリーゼ付きの侍女とした経緯があったが、そのミアが間者だったなどとは、まさに青天の霹靂だった。
「………あの女が隠し持っていた敵意に気がつけなかったのは、私も同じですので侯爵ばかりを責めることは出来ませんが」
ほんの少し、長いまつ毛を伏せると、ジークヴァルトも溜息をついた。
「………今は、誰の責任なのかを議すべき時ではありません」
ジークヴァルトと侯爵の間に割って入ったのは、ゲルハルトではなく、神官のイェルクの方だった。
イェルクは真っ白な長い髭を撫で、アンネリーゼとジークヴァルトに視線を向けた。
「クラルヴァイン辺境伯殿のお陰で、今回は事なきを得ましたが………、もしも手遅れになっていたとしたら、あの『混沌の百年』が再び起こってしまうところだったと、考えるだけでも恐ろしいことでした。………しかし、私が気になっていることがあるのです。事件が引き起こされたのは、儀式の終わった直後のクルツ公国。そして、護衛騎士は同一人物………。偶然と言うのには、『混沌の百年』の始まりとあまりに似通った部分が多いと思いませんかな、クラルヴァイン辺境伯殿?」
あくまでも穏やかな口調が告げる事実に、ジークヴァルトは一瞬大きく目を開いたかと思うと、苦々しそうにその美貌を誇る顔を顰めた。
「………私が訊ねたところで、何が変わるというわけではありませんが…………当時の巫女姫でいらっしゃっアリッサ・エーベルト侯爵令嬢は、本当に病死だったのですか…………?」
静かに落とされたイェルクの疑問を耳にした、ジークヴァルトが、一瞬はっと息を呑んだのを、アンネリーゼははっきりと目にしたのだった。
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