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99.裁き(SIDE:ジークヴァルト)※残酷描写あり

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「証拠なんて…………っ!でも、信じて!私は何も知らないのっ………。ただ、命じられて…………!仕方ないじゃない、男爵様は私の命の恩人で、逆らえなかっ………っうあぁっ!」

憔悴した様子のミアが叫ぶと、ジークヴァルトの剣から出現した氷の刃が、二つ、三つと彼女の腕や足へと刺さっていく。同時にミアは悲鳴を上げた。

「お前の事情なんて聞いていないし、関係ない事だ。興味もないしな。………お前は、俺が訊いた事にだけ答えればいいんだよ」

吐き捨てるように言い放つと、左腕を高く掲げる。すると、バサリと大きな羽音が聞こえて、大鷹がジークヴァルトの元に舞い降りてきた。

「この女を、抹殺すればよろしいですか?」

ダミアンの瞳がミアを捉えると、ミアは更に震え上がった。

「魔獣………?!ど、どうしてっ………」

ダミアンが現れたことにより、ミアの恐怖は更に膨れ上がる。

「まだ殺すな」

短くダミアンを制すると、ジークヴァルトは開ききった瞳孔でミアを見据えた。

「………じゃあ、お前は初めからアンネリーゼを害する目的で侍女になったのか?………それともお前がアンネリーゼの侍女だと知った男爵が打診してきたのかなら答えられるだろ?」
「ヒィっ………、は、初めから!初めから男爵様の指示で侯爵家に………!でも、侯爵家では中々手を足す機会がなくて、今回が漸く巡ってきたチャンスだったのよ………」
「アンネリーゼがあれだけお前に信頼を寄せていたのに、お前は虎視眈々と命を狙っていたんだな?」
「命を狙っただなんて、大袈裟だわ。ただ、魔枯病に罹ったように魔力が封じられるだけの薬じゃない………」

そこで、ミアは己がとんでもない失言をした事に気がついた。
の効果は、知られてはいけないものだったのに、恐怖心が膨れ上がり、うっかり口を滑らせてしまった時にはもう遅かった。

「………何だと?」

その言葉に、ジークヴァルトの怒りが更に質量を増したのがミアにも分かった。
迸る怒りは強大な魔力となり、ジークヴァルトの体から滲み出ていた。
その様は、戦神か死神かといった風で、その有様を目にしたミアは、恐怖で痛みすらも忘れているようだった。

「ば………化け物…………っ」

ジークヴァルトは怯えきったミアの口から紡がれた暴言を聞き流すと、ダミアンに命じる。

「あの薬の正体が分かればもういい。その女は必要ないから始末しろ」
「御意」

ジークヴァルトがミアに背を向けて、その場から姿を消した直後、森の中に若い女の断末魔の叫びが響き渡った。
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