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98.報い(SIDE:ジークヴァルト)※残酷描写あり
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「いっ………痛っ………」
ジークヴァルトを見上げるミアの目には恐怖が色濃く浮かんでいた。
「なぁ………答えろよ。お前に、それを命じたのは誰なんだ?」
怒りのあまり、言葉遣いは乱暴になり、変身の魔法が解けかけ、瞳の色は半分金色に戻ってしまっていたが、そんなことはどうでも良かった。
アンネリーゼを害した時点で、ジークヴァルトにはこの女を生かしておくつもりなど微塵もないのだから。
「ジーク殿!何の騒ぎ………」
何人かの神官が、騒ぎを聞きつけてやってきた。
そしてジークヴァルトがミアに剣を突きつけている場面を目撃し、悲鳴を上げる。
その声で、ジークヴァルトは我に返った。
ここは、聖殿内の巫女姫の為の部屋だ。こんな女の薄汚れた血で穢して良いような場所ではない。怒りで我を忘れ、見境なく殺さなかった事に、安堵する。
「これは、何事ですか?!」
「あぁ……この女が、あろうことが巫女姫様に毒を盛ったのを確認しました。俺………私は、護衛騎士に与えられた権限によりこの女を裁くので、巫女姫様をお願いします」
「きゃあ…………!」
ミアの髪を鷲掴みにすると、無表情のままでミアを引きずり出すと、転移魔法を使って聖殿の敷地の外に広がる深い森の中へと移動した。
「お願い………許して………っ!」
大木の根本に、乱暴に投げ出されたミアは泣きじゃくりながら必死になって懇願する。
「ふざけるのも、大概にしろよ。俺が聞きたいのは、お前の命乞いの言葉じゃない。お前の主は誰だと訊いている」
苛立ったように、剣の柄を強く握りしめると、まるでその気持ちに反応するかのように、殺気を孕んだ闇魔法が剣身に纏わる。
「い、言います!言いますから………っ!あの薬は………クラネルト男爵様から…………!儀式が無事に終わったら、お嬢様に飲ませるようにと………」
「ふぅん?お前は、クラネルト男爵の手の者なのか?」
ミアは、壊れた人形のように頷いた。
クラネルトとノイマンが通じているのはダミアンの報告で知っていた。
そして、その二人が自分たちに有利に操るために、アンネリーゼに手を出そうとしたことなど容易に想像ができる。
「………証拠は?」
「えっ?」
刹那、ミアの頬をジークヴァルトが放った氷の刃が切り裂いた。
「ひっ…………!」
「自分可愛さに、簡単に主を裏切るような女の言うことを、証拠もなしにどう信じるんだ?………なぁ?」
一歩、また一歩とジークヴァルトが距離を詰める。
変身魔法は解け、完全に「ジークヴァルト・クラルヴァイン」の容姿に戻ったジークヴァルトの壮絶な美貌を湛えた顔には、残酷なまでの殺意が浮かんでいた。
ジークヴァルトを見上げるミアの目には恐怖が色濃く浮かんでいた。
「なぁ………答えろよ。お前に、それを命じたのは誰なんだ?」
怒りのあまり、言葉遣いは乱暴になり、変身の魔法が解けかけ、瞳の色は半分金色に戻ってしまっていたが、そんなことはどうでも良かった。
アンネリーゼを害した時点で、ジークヴァルトにはこの女を生かしておくつもりなど微塵もないのだから。
「ジーク殿!何の騒ぎ………」
何人かの神官が、騒ぎを聞きつけてやってきた。
そしてジークヴァルトがミアに剣を突きつけている場面を目撃し、悲鳴を上げる。
その声で、ジークヴァルトは我に返った。
ここは、聖殿内の巫女姫の為の部屋だ。こんな女の薄汚れた血で穢して良いような場所ではない。怒りで我を忘れ、見境なく殺さなかった事に、安堵する。
「これは、何事ですか?!」
「あぁ……この女が、あろうことが巫女姫様に毒を盛ったのを確認しました。俺………私は、護衛騎士に与えられた権限によりこの女を裁くので、巫女姫様をお願いします」
「きゃあ…………!」
ミアの髪を鷲掴みにすると、無表情のままでミアを引きずり出すと、転移魔法を使って聖殿の敷地の外に広がる深い森の中へと移動した。
「お願い………許して………っ!」
大木の根本に、乱暴に投げ出されたミアは泣きじゃくりながら必死になって懇願する。
「ふざけるのも、大概にしろよ。俺が聞きたいのは、お前の命乞いの言葉じゃない。お前の主は誰だと訊いている」
苛立ったように、剣の柄を強く握りしめると、まるでその気持ちに反応するかのように、殺気を孕んだ闇魔法が剣身に纏わる。
「い、言います!言いますから………っ!あの薬は………クラネルト男爵様から…………!儀式が無事に終わったら、お嬢様に飲ませるようにと………」
「ふぅん?お前は、クラネルト男爵の手の者なのか?」
ミアは、壊れた人形のように頷いた。
クラネルトとノイマンが通じているのはダミアンの報告で知っていた。
そして、その二人が自分たちに有利に操るために、アンネリーゼに手を出そうとしたことなど容易に想像ができる。
「………証拠は?」
「えっ?」
刹那、ミアの頬をジークヴァルトが放った氷の刃が切り裂いた。
「ひっ…………!」
「自分可愛さに、簡単に主を裏切るような女の言うことを、証拠もなしにどう信じるんだ?………なぁ?」
一歩、また一歩とジークヴァルトが距離を詰める。
変身魔法は解け、完全に「ジークヴァルト・クラルヴァイン」の容姿に戻ったジークヴァルトの壮絶な美貌を湛えた顔には、残酷なまでの殺意が浮かんでいた。
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