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97.激怒(SIDE:ジークヴァルト)※残酷描写あり

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ジークヴァルトはアンネリーゼの眠る部屋の前で、ただじっと、愛剣を抱えたまま目を瞑っていた。

ふと、アンネリーゼの魔力の気配を感じ、ゆっくりと目を開く。
彼女が目を覚ましただけだというのに、安堵してしまう自分に驚いた。
無意識のうちに、アリッサの時と重ね合わせているのかもしれないとジークヴァルトは思った。
アリッサは、クルツでの儀式を終えた直後に意識を失い、そして、呆気なく逝ってしまった。
それは単純に、魔力を放出したことにアリッサの体が耐えきれなかったせいだったが、それでも思いの外ジークヴァルトの心に深い傷を残していた。

「アンネリーゼは、アリッサとは違うんだ…………」

自分に言い聞かせるように、静かに呟いた時だった。
不意に、不穏な気配がした。
アンネリーゼの魔力が無理矢理捻じ曲げられるような、覚えのない感覚だった。
明らかに、何かがおかしい。
今、部屋の中にいるのは、アンネリーゼと、専属侍女のミアだけだ。
ジークヴァルトは少し考えて、目の前の扉を睨みつけると、躊躇いなく扉を蹴破った。

「巫女………アンネリーゼ!」

ジークヴァルトの目に飛び込んで来たのは、意識を失い、床へと倒れ込むアンネリーゼの姿だった。

「おい、しっかりしろ!アンネリーゼ………!」

物凄い勢いでアンネリーゼに駆け寄ると、力なく横たわるアンネリーゼの身体を抱き起こす。
急激に、アンネリーゼの魔力が弱まり、それと同時にアンネリーゼの体がどんどん冷たくなっていく。

「おい、何かあった?」

ジークヴァルトは、真っ青な顔でその場に立ち尽くすミアを怒鳴りつけた。

「え…………、あ…………」

ミアは、握り締めた手をぶるぶると震わせながら俯く。

「答えろ!」
「きゃあっ!」

ジークヴァルトが放った殺気が、魔力の塊となって、ミアの体を壁まで吹き飛ばした。
小柄なミアの体は壁に叩きつけられるが、ジークヴァルトは気に留める風はなかった。
壊れ物を扱うような優しい仕草でアンネリーゼを抱き上げると、丁寧な動作でベッドに横たえる。

「………この薬を、飲み物に混ぜて………お嬢様に飲ませるようにって………ただ眠くなる薬だから心配ないって………」

ガタガタと震えながら、目に涙を浮かべたミアが口を開くと、ジークヴァルトはミアを睨みつけた。

「ふざけるな!!」
「ひいっ………」

ジークヴァルトは手にした剣を抜き放つと、ミアに切っ先を突きつけた。

「…………誰の指示だ?それは、お前の意志でしたことか?」

剣を突き付けられたミアの喉元の皮膚が裂け、つうっと鮮血が滴った。
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