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17.心の内(SIDE:ジークヴァルト)
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ダミアンからの報告を受けてから、ジークヴァルトはすぐさまアンネリーゼの父親であるモルゲンシュテルン侯爵に宛てた手紙をしたためた。
領内の川のほとりで倒れていたアンネリーゼを保護していて、彼女が記憶を失っているので迎えに来てほしいという内容を完結に記しただけのものだった。
「………彼女は、本来あるべき場所へと返してやるべきだよな………」
ペンを置くと、丁寧に手紙を折りたたみ、………そして手を止めた。
ジークヴァルトが知っていたモルゲンシュテルン侯爵は、厳格で清廉な人だったが、今代の侯爵がどのような人物なのかは知らない。
記憶のない彼女を、このまま親元に戻してしまって本当にいいのだろうか。
それに、彼女の婚約者は遺体で見つかったとダミアンは言っていた。
それが事実であるならば、考えようによっては、それがジークヴァルトの仕業であるという見方も出来るだろう。
貴族達がジークヴァルトをどう思っていようとも関心は全く無かったが、とにかくこれ以上、ヒトと関わるのは避けたかった。
手の中の手紙を見つめたまま、ジークヴァルトは考え込む。
それは、自分の勝手な気持ち………もう少しだけアンネリーゼと共にいたいという欲求のせいだと、ジークヴァルトは自覚していた。
いつの間にか、ジークヴァルトの冷え切った心の中でアンネリーゼの存在が大きくなっていた。
それに、気が付かないふりをしているのに、彼女に逢う度に気持ちがざわついて仕方がない。
抑えようと思えば思うほどに、気持ちが膨らみ、ジークヴァルトは自身の感情が制御が出来ないことに、苛立ちすら感じた。
今までの長い生の中で、一度たりとも経験のない事態に、どうすれば良いのかすらも分からなかったからだ。
容姿の美しい令嬢や、立ち振舞の美しい令嬢なら今までいくらでも見てきたはずなのに、何故彼女にだけ心が動くのだろう。
ジークヴァルトには、分からなかった。
「………厄介なものを、拾った筈なのに………」
ぽつりと呟くと、金色の瞳を僅かに細める。
途端にジークヴァルトの手の中の手紙が、ぱっと明るい光に包まれたかと思うと、一瞬で消し炭に変わった。
「………ダミアンの言うとおり…………俺らしくないよな………」
手の中の小さな黒い燃えカスを見つめながら、静かに呟いた。
ヒトに近づきすぎれば、ジークヴァルト自身がつらい思いをするだけだから、距離をおいて、なるべく関わらないように、してきたのに。
ジークヴァルトはゆっくりと目を伏せると、己の気持ちを吹き消すように、手紙の燃えカスをぎゅっと手のひらで握りしめたのだった。
領内の川のほとりで倒れていたアンネリーゼを保護していて、彼女が記憶を失っているので迎えに来てほしいという内容を完結に記しただけのものだった。
「………彼女は、本来あるべき場所へと返してやるべきだよな………」
ペンを置くと、丁寧に手紙を折りたたみ、………そして手を止めた。
ジークヴァルトが知っていたモルゲンシュテルン侯爵は、厳格で清廉な人だったが、今代の侯爵がどのような人物なのかは知らない。
記憶のない彼女を、このまま親元に戻してしまって本当にいいのだろうか。
それに、彼女の婚約者は遺体で見つかったとダミアンは言っていた。
それが事実であるならば、考えようによっては、それがジークヴァルトの仕業であるという見方も出来るだろう。
貴族達がジークヴァルトをどう思っていようとも関心は全く無かったが、とにかくこれ以上、ヒトと関わるのは避けたかった。
手の中の手紙を見つめたまま、ジークヴァルトは考え込む。
それは、自分の勝手な気持ち………もう少しだけアンネリーゼと共にいたいという欲求のせいだと、ジークヴァルトは自覚していた。
いつの間にか、ジークヴァルトの冷え切った心の中でアンネリーゼの存在が大きくなっていた。
それに、気が付かないふりをしているのに、彼女に逢う度に気持ちがざわついて仕方がない。
抑えようと思えば思うほどに、気持ちが膨らみ、ジークヴァルトは自身の感情が制御が出来ないことに、苛立ちすら感じた。
今までの長い生の中で、一度たりとも経験のない事態に、どうすれば良いのかすらも分からなかったからだ。
容姿の美しい令嬢や、立ち振舞の美しい令嬢なら今までいくらでも見てきたはずなのに、何故彼女にだけ心が動くのだろう。
ジークヴァルトには、分からなかった。
「………厄介なものを、拾った筈なのに………」
ぽつりと呟くと、金色の瞳を僅かに細める。
途端にジークヴァルトの手の中の手紙が、ぱっと明るい光に包まれたかと思うと、一瞬で消し炭に変わった。
「………ダミアンの言うとおり…………俺らしくないよな………」
手の中の小さな黒い燃えカスを見つめながら、静かに呟いた。
ヒトに近づきすぎれば、ジークヴァルト自身がつらい思いをするだけだから、距離をおいて、なるべく関わらないように、してきたのに。
ジークヴァルトはゆっくりと目を伏せると、己の気持ちを吹き消すように、手紙の燃えカスをぎゅっと手のひらで握りしめたのだった。
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