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13.盗み聞き

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ジークヴァルトは、自分を庇ってアンネリーゼの存在を隠したのか、それとも別の意図があるのか。
とにかく、今『自分』という存在をウルリヒに知られてはジークヴァルトの立場が悪くなるのは間違いないと考え、アンネリーゼはその場に静かに屈み込んだ。

「だが誰かが助けた可能性もあるだろう?!」
「仮にそうだとしても、それを私にどう把握しろと?」

明らかに苛立った様子のウルリヒに、呆れたようにジークヴァルトは溜息をつきながら問いかける。

「貴殿に不可能などなかろうに。何せ最強の『ヴァルツァー王国の守護者』だからな」

内容は、ジークヴァルトを褒めている筈なのに、強い嘲りを含んだ様な口振りに、アンネリーゼの隣に佇むニーナの表情が、怒りに歪んだ。

「貴様っ………!」
「構うな、エルンスト。………ウルリヒ殿。私はもうこれ以上、話をすることはないので、お引取り願いたい」
「話はまだ済んでいないぞっ?!」

あくまで紳士的に、ジークヴァルトは対応しているが、ウルリヒの方はそこまで言われても尚引き下がろうとしなかった。

「………大人しく帰らないのであれば、我が領地を荒らす不届き者として、させていただく事になりますよ?」
「ひっ………?!」

丁寧な口調で、けれども低く、底冷えのするような冷たい声でジークヴァルトがそう告げるとジークヴァルトがそう告げた途端、ウルリヒは情けない悲鳴を上げる。直後にバタバタという足音が響いて、それは段々と遠ざかっていった。

「………立ち去った、みたいね」

無意識のうちに緊張していたのか、アンネリーゼは鼓動が早くなっていたことに気が付いた。
ゆっくりと呼吸を整え、ゆっくりと立ち上がる。

「………こんなところで盗み聞きとは、感心しませんね」

間近で声がして、驚いて顔を上げると、いつの間にかジークヴァルトが目の前に立っていた。

「………クラルヴァイン辺境伯様………?」

ジークヴァルトの金色の双眸が、真っ直ぐにアンネリーゼを射抜いた。

「聞いていたのなら、分かるでしょう。あの者は、あなたを探しています」
「………はい」
「………私を、咎めないのですか?」
「え?」

意外な問いかけに、アンネリーゼは軽く目を見開いた。

「何故、わたくしがクラルヴァイン辺境伯様を咎めるのですか?」
「………あの者は、あなたの過去を知っている。あなたが、何者なのかを。それなのに、は嘘をついて、あの者をあなたから遠ざけた」

ジークヴァルトの口調が、いつもの穏やかなものではなく、少し乱暴で少年らしいものに変わっていることに、アンネリーゼは気が付いた。
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