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53.吹雪

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目的の村に近づくにつれて、雪は強くなっていく。まるで私達が到着するのを阻んでいるようの思えた。

「お前を伴っていると、スヴァルトが大人しいな。よほどシャトレーヌの事が好きなようだ」

スヴァルトとは、アデルバート様の馬の名前。軍馬の産地から献上された、優秀な血統の雄馬なんだとか。確かに足取りも力強くて、とても賢い。

「あら、それは嬉しいわ。私もスヴァルトが大好きよ」

私がそう言って首を撫でると、スヴァルトは嬉しそうに鼻を鳴らした。

「動物は主人に似ると言うが、本当だな」

耳元でアデルバート様がそう呟くので私は思わず笑ってしまった。

「まあ、最恐将軍ともあろうお方の台詞とは思えませんわね」
「……何とでも言え」

少し不貞腐れたようにそう言うアデルバート様。
その様子さえも愛おしく感じたのだった。


そんな、戦に向かっているとはとても思えないような雰囲気で進んでいたけれど、より一層雪が強くなり、馬も足を止める。
一面が、白で塗りつぶされてしまったのかと思うような状態で、少しでも目を開けば、雪が襲い掛かってくるよう。
寒さよけの加護魔法を使っていなかったら、間違いなくこのブリザードで凍え死んでしまうだろうと思うような、酷い吹雪だった。

「これ以上は進むのは難しいか……」

吹き付けてくる強い風に、漆黒の長い髪を靡かせながらアデルバート様は溜息をついた。
……村の人達は、私達の到着を待っているのに。この、吹雪さえ止んでくれれば……。
私が、そう願った時だった。
一瞬、ふわりと私の体が光を放った気がした。

「……?」

と。あれだけ激しく降っていた雪と、強い風がピタリと止んでいた。

「シャトレーヌ……今のは一体……?」

アデルバート様も驚いた顔をしているけれど、他の騎士達は気がついていないようだった。

「雪が、止んだぞ!」
「これなら、足元さえ気をつければ問題ない」

私は、動揺しながらアデルバート様を振り返った。

「……私……」
「……まさかシャトレーヌ、お前は……。いや、何でもない」

アデルバート様は何かを言いかけて、口を噤んだ。
もしかしたら、この地に来てから時々私の身に起こる不可解な出来事について、アデルバート様は、何かを知っていらっしゃる……?
私は、雪が止んだことに安堵しながらも、言いしれない不安に襲われていたのだった。
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