38 / 166
38.加護魔法
しおりを挟む
連れて行かれたのは、主寝室でも、夫婦の居室でもなく、アデルバート様の私室。
黒で統一された、閑散としたとした部屋だった。一切の無駄がなく、装飾品は置いていない。
いかにも、アデルバート様らしいといえばそうなのかもしれない。
「今回は、シャトレーヌの加護魔法の効果があって、掠り傷一つ負わなかった。……それに、このアミュレットのお陰で、討伐隊は誰一人欠けることなく、帰還出来た。礼を言う」
「……それは、私の力ではなく皆様の日々重ねてこられた努力の賜物だと思いますわ」
きっと、アデルバート様は私に自信を持たせようとしてそんなことを仰るのだわ。
どちらも結界魔法に比べて効果は薄いし、ただのお守り程度ですもの。
「今回、このアミュレットが無かったら危なかった」
アデルバート様は私が伝令に託したアミュレットを取り出すと、それを私の前に差し出した。
木製の十字架を模したアミュレット。それが真っ二つに割れていた。
「これは……」
いくら元が木製とはいえ、加護魔法によりかなりの硬度を誇るはずのアミュレットが真っ二つになる所など!見たことがなかった。
やはり、私の加護魔法では強度が足りなかったのかしら。
「吹雪の中で氷狼と戦った際に、攻撃魔法をまともに食らったのだ。お前の加護魔法とこのアミュレットが私を守り、こうしてお前の元に戻ることが出来たのだ」
私は驚いて目を瞠った。
まさか、アミュレットがアデルバート様の身代わりになって、割れたというの?
大聖女様だけが作れる護符ならともかく、役立たずの聖女である私のアミュレットに、人一人の身代わりになるような強い力は無いと思うのだけれど……。
「それは、私の力では……」
「私だけではない。何人もの騎士たちが、お前のアミュレットに救われたのだ」
アデルバート様が、そっと私の頬に手を触れた。
「私は国王陛下より、何にも替えがたい宝を賜ったようだ……」
……アデルバート様、戦でだいぶお疲れのようだわ。そんな世迷言を仰るなんて……。
「シャトレーヌ……少しだけ、お前を味わわせてくれ。帰城してお前を見た瞬間、こうして触れたくて堪らなかった」
そう告げたアデルバート様の肉感的な唇が、私の唇に重なる。
「ん……」
たったそれだけの行為なのに、心の中が満たされていく気がした。
自ら口を開き、アデルバート様の舌に自分の舌を絡めた。
はしたないと思いながらも、衝動が止められない。
私は、この方が好きだ。
その気持ちが、私の中で揺るぎないものになった気がした。
黒で統一された、閑散としたとした部屋だった。一切の無駄がなく、装飾品は置いていない。
いかにも、アデルバート様らしいといえばそうなのかもしれない。
「今回は、シャトレーヌの加護魔法の効果があって、掠り傷一つ負わなかった。……それに、このアミュレットのお陰で、討伐隊は誰一人欠けることなく、帰還出来た。礼を言う」
「……それは、私の力ではなく皆様の日々重ねてこられた努力の賜物だと思いますわ」
きっと、アデルバート様は私に自信を持たせようとしてそんなことを仰るのだわ。
どちらも結界魔法に比べて効果は薄いし、ただのお守り程度ですもの。
「今回、このアミュレットが無かったら危なかった」
アデルバート様は私が伝令に託したアミュレットを取り出すと、それを私の前に差し出した。
木製の十字架を模したアミュレット。それが真っ二つに割れていた。
「これは……」
いくら元が木製とはいえ、加護魔法によりかなりの硬度を誇るはずのアミュレットが真っ二つになる所など!見たことがなかった。
やはり、私の加護魔法では強度が足りなかったのかしら。
「吹雪の中で氷狼と戦った際に、攻撃魔法をまともに食らったのだ。お前の加護魔法とこのアミュレットが私を守り、こうしてお前の元に戻ることが出来たのだ」
私は驚いて目を瞠った。
まさか、アミュレットがアデルバート様の身代わりになって、割れたというの?
大聖女様だけが作れる護符ならともかく、役立たずの聖女である私のアミュレットに、人一人の身代わりになるような強い力は無いと思うのだけれど……。
「それは、私の力では……」
「私だけではない。何人もの騎士たちが、お前のアミュレットに救われたのだ」
アデルバート様が、そっと私の頬に手を触れた。
「私は国王陛下より、何にも替えがたい宝を賜ったようだ……」
……アデルバート様、戦でだいぶお疲れのようだわ。そんな世迷言を仰るなんて……。
「シャトレーヌ……少しだけ、お前を味わわせてくれ。帰城してお前を見た瞬間、こうして触れたくて堪らなかった」
そう告げたアデルバート様の肉感的な唇が、私の唇に重なる。
「ん……」
たったそれだけの行為なのに、心の中が満たされていく気がした。
自ら口を開き、アデルバート様の舌に自分の舌を絡めた。
はしたないと思いながらも、衝動が止められない。
私は、この方が好きだ。
その気持ちが、私の中で揺るぎないものになった気がした。
4
お気に入りに追加
1,228
あなたにおすすめの小説
【R18】聖女のお役目【完結済】
ワシ蔵
恋愛
平凡なOLの加賀美紗香は、ある日入浴中に、突然異世界へ転移してしまう。
その国には、聖女が騎士たちに祝福を与えるという伝説があった。
紗香は、その聖女として召喚されたのだと言う。
祭壇に捧げられた聖女は、今日も騎士達に祝福を与える。
※性描写有りは★マークです。
※肉体的に複数と触れ合うため「逆ハーレム」タグをつけていますが、精神的にはほとんど1対1です。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語
瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。
長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH!
途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!
【完結】【R18】伯爵夫人の務めだと、甘い夜に堕とされています。
水樹風
恋愛
とある事情から、近衛騎士団々長レイナート・ワーリン伯爵の後妻となったエルシャ。
十六歳年上の彼とは形だけの夫婦のはずだった。それでも『家族』として大切にしてもらい、伯爵家の女主人として役目を果たしていた彼女。
だが結婚三年目。ワーリン伯爵家を揺るがす事件が起こる。そして……。
白い結婚をしたはずのエルシャは、伯爵夫人として一番大事な役目を果たさなければならなくなったのだ。
「エルシャ、いいかい?」
「はい、レイ様……」
それは堪らなく、甘い夜──。
* 世界観はあくまで創作です。
* 全12話
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる