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20.癒やしの魔法?

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「私、今魔法を使ったつもりはないの」

私は、二人に事実を伝える。

「「え、でも……」」

ドミニクとエブリンが、同時に同じ言葉を口にした。

「確かに、指先は光ったけれど、ただ花に触れただけ。それに、怪我した動物を治療した事はあるけれど、枯れた植物を復活させたことなど、一度もないわ」

目の前で、青々と葉を繁らせ、開花したた可憐な花。
一体何が起きたのかしら。

「無意識に、癒やしの魔法を使われたのでは?」
「確かに、お嬢様は治癒魔法はお得意ですものね」
「無意識に魔法を使うなんて、私には出来ないし、そんなのは聞いたこともないわ」
「では、他の植物で試してみたらいかがです?」

ドミニクが、私に提案をしてきた。

「あちらに、枯れてしまった林檎の木がございます。触れてみていただけませんか?」
「分かりました。本当に、試すだけですよ?何も起こらなくてもがっかりしないで頂戴ね?」

私はドミニクとエブリンに念を押すと、枯れた木へと近づいた。
古い木なのだろうか。とても大きく、立派な木だ。
その幹に、先程と同じように何も考えることなく、そっと触れた。
すると、やはり指先が光を孕み、それがゆっくりと木全体に広がっていく。
すると、干からびた枝から、若芽が芽吹き、急速に葉を広げていった。

「嘘……」

私は、驚いて木の幹に触れていた手を離すと、じっと見つめた。
光は既に消えており、魔法の余韻はなかった。
それどころか魔力を注いだ感覚も、力を使った後の軽い疲労感も、全く無い。
そもそも、これは光属性の魔法なのかしら。

「すごい……!こんな魔法は見たことがないです」
「お嬢様にこんな力があったなんて!私、鼻が高いです!」
「私も、驚いたわ……」

こんな力、私も知らない。魔法について学んだときも、教わらなかったわ。
大きな戸惑いを感じながらも、同時に嬉しさを感じた。
だって、私でも役に立てることがあったのだもの。
私は少し微笑むと、林檎の木の幹を撫でた。

「……この林檎の樹は、黒焔公爵様が大切にされていた木です。年々弱ってきて、今年はとうとう花を付けることなく、枯れてしまったのですが……。きっと、この姿を見て喜ばれると思います!」
「そうだと、嬉しいわ」

アデルバート様が大切にされていた林檎の樹。
それを聞いて、私はもう一度、林檎の幹に優しく触れた。
すると、私に応えるようにざわざわと木が葉を揺らしたように思えた。
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