冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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番外編

待望の知らせ(5)

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「クラリーチェには休息が必要だ。後は私が診るから皆下がれ」

 暫しの沈黙の後、ゆっくりと振り返ったエドアルドは、有無を言わせぬきっぱりとしたもの言いでその場にいる者たちに命じた。

「…………恐れながら、陛下が近くにいらっしゃる状態では王妃様がゆっくりとお休みになれないのではないでしょうか」

 エドアルドに真っ直ぐ視線を向けたリディアが涼しい表情でそう言ってのけた。

「……………っ!」

 リディアの隣では、アンナとダンテがぎょっとした表情でリディアを見た。
 ーーーなぜならば、それは誰もが思ったが、決して口にすることが出来ない事実だったからだ。

「………何だと?」

 思いもよらないリディアの反応に、エドアルドの端正な顔が不機嫌に歪んだ。

「王妃様には十分な休息が必要だというのは私も全くの同意見でございます。ですが、陛下がいらっしゃることで、真面目な王妃様は政務の事を心配なさるでしょう。十分な休息は、身も心も休まらないと意味がございません」
「む…………」

 至極最もなリディアの意見に、流石のエドアルドも口籠る。
 少し離れた所に佇む医師とダンテ達は、リディアの意見に同調するように深く頷く仕草をした。

「それは確かにそうだが………」

 強い迷いを宿した水色の瞳が、寝台に横たわったクラリーチェへと向けられる。

「………長い時間、政務を放り出す訳では無い。クラリーチェが眠りにつくまでの間だ」

 まるで言い訳でもするかのように、エドアルドは呟いた。

「それなら文句はあるまい」

 おそらくエドアルドは、クラリーチェの体調が心配なのは勿論だが、クラリーチェと二人きりの時間を過ごしたいというのが本音だろう。
 その気持ちを汲んでなのかは分からないが、リディアは暫くの沈黙の後、深い溜息をついた。

「………納得がいかない部分もございますが、仕方がありません。王妃様が眠られるまでの間だけですからね?」

 リディアもまた、クラリーチェの事になると譲らないところがあるが、今日は渋々引き下がったようだった。

 そのままリディア達は、主である国王夫妻を部屋に残すと、退出を始めた。

「…………十分にお分かりかとは存じますが」

 去り際に、リディアがふとエドアルドの方を振り返った。

「今はとても大切な時期ですので、医師の許可が出るまでは、閨事はおやめ下さいませ」
「なっ……………!」

あまりにも堂々とした忠告に、エドアルドもクラリーチェは揃って顔を真っ赤にしたのだった。
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