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番外編
待望の知らせ(4)
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「やはり、そうだったのですね…………」
エドアルドより少し離れた場所に立っていたリディアが、ボソリと小声で呟いたのが聞こえた。
「今朝、リディアが私の歩き方を気にしたのは、妊娠に気がついていたからだったのね?」
クラリーチェの問い掛けに、リディアは微笑みを浮かべて頷いた。
「正直に申し上げますと、確信は無かったのです。………ただ、歩き方がいつもと違って、まるで何かを庇うような足捌きで随分と慎重に歩かれているようだったので、もしかしたらと思ったのですが………」
流石はコルシーニ伯爵家の長女、といったところだろうか。
まさか歩き方から妊娠を予測されるとは思ってもみなかった為、クラリーチェは感嘆の溜息を零した。
「流石だわ、リディア。でも、分かっていたのならば教えてくれれば良かったのに………」
「いえ、大したことではございません。それにやはりそういった事はきちんと医師に判断してもらったほうが間違いないと思いまして、お伝えは致しませんでした。申し訳ございません」
クラリーチェに褒められ、リディアもまんざらでもない様子だった。
照れながらも、どこか嬉しそうに微笑みを浮かべている。
そんな中、ふとクラリーチェが目を伏せると、再び下腹部の辺りにそっと手を当てた。
「………でも、不思議ね。妊娠に気がつく前から、お腹を庇うなんて………。家自分自身でも気が付かないうちに、この子を守ろうとしていたのかしら………」
まだ意識どころか認識すらしていないというのに、自然と身体が子供を守ろうとしていたと思うと、何とも言えない気持ちになり、クラリーチェは思わず涙ぐんでしまう。
「クラリーチェ…………」
すぐ側にいたエドアルドが膝を折り、彼女の顔を覗き込む。
そして、昂った感情を宥めるように優しく彼女の背中を擦った。
「腹の子の為にも、そして何より自分自身の為にも、今はゆっくりと休め。今のあなたにとっては、それが一番大切な仕事だ」
低い、けれどもこの上なく優しい声がクラリーチェの耳に、心地よく響く。
彼の優しい声を聞くだけでこんなにも安らかな気持ちになるのは、お腹の子供もそう感じているからなのだろうか。
そんな事を考えながら、クラリーチェはエドアルドに促されるままにシーツの中へと潜り込んだ。
エドアルドより少し離れた場所に立っていたリディアが、ボソリと小声で呟いたのが聞こえた。
「今朝、リディアが私の歩き方を気にしたのは、妊娠に気がついていたからだったのね?」
クラリーチェの問い掛けに、リディアは微笑みを浮かべて頷いた。
「正直に申し上げますと、確信は無かったのです。………ただ、歩き方がいつもと違って、まるで何かを庇うような足捌きで随分と慎重に歩かれているようだったので、もしかしたらと思ったのですが………」
流石はコルシーニ伯爵家の長女、といったところだろうか。
まさか歩き方から妊娠を予測されるとは思ってもみなかった為、クラリーチェは感嘆の溜息を零した。
「流石だわ、リディア。でも、分かっていたのならば教えてくれれば良かったのに………」
「いえ、大したことではございません。それにやはりそういった事はきちんと医師に判断してもらったほうが間違いないと思いまして、お伝えは致しませんでした。申し訳ございません」
クラリーチェに褒められ、リディアもまんざらでもない様子だった。
照れながらも、どこか嬉しそうに微笑みを浮かべている。
そんな中、ふとクラリーチェが目を伏せると、再び下腹部の辺りにそっと手を当てた。
「………でも、不思議ね。妊娠に気がつく前から、お腹を庇うなんて………。家自分自身でも気が付かないうちに、この子を守ろうとしていたのかしら………」
まだ意識どころか認識すらしていないというのに、自然と身体が子供を守ろうとしていたと思うと、何とも言えない気持ちになり、クラリーチェは思わず涙ぐんでしまう。
「クラリーチェ…………」
すぐ側にいたエドアルドが膝を折り、彼女の顔を覗き込む。
そして、昂った感情を宥めるように優しく彼女の背中を擦った。
「腹の子の為にも、そして何より自分自身の為にも、今はゆっくりと休め。今のあなたにとっては、それが一番大切な仕事だ」
低い、けれどもこの上なく優しい声がクラリーチェの耳に、心地よく響く。
彼の優しい声を聞くだけでこんなにも安らかな気持ちになるのは、お腹の子供もそう感じているからなのだろうか。
そんな事を考えながら、クラリーチェはエドアルドに促されるままにシーツの中へと潜り込んだ。
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