冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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番外編

騎士団長の恋愛事情(39)

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ダンテは徐にアンナが抱えた花束の中から、遥か東の帝国から渡ってきたという珍しい銀木犀の木の枝を抜き取ると、アンナの亜麻色の髪に飾った。
白い小さな花から、得も言われぬ甘く芳しい香りが漂った。
その香りに、アンナはふわりと柔らかな笑みを浮かべるのを見た途端、ダンテは胸がぎゅっと強く締め付けられるように疼くのを感じた。

「………好きだ」

ずっと我慢し続けてきた想いが、遂にダンテの唇から零れ落ちた。

「え…………?」

少し掠れた声が奏でた言葉に、アンナはこれ以上ないくらいに榛色の瞳を大きく見開いた。
アンナの反応が怖いと思いながらも、ダンテは覚悟を決めたように再び口を開く。

「アンナ。私は君の事が好きだ。君の笑顔を見ているだけで心が満たされる。………こんな事を言ったら君を困らせてしまうかもしれないと………それが恐ろしくてずっとこの気持ちは胸にしまっておくつもりだった。だが…………隠し続けておくのは無理だと気がついたんだ…………」

どこか苦しそうな表情で想いを告げるダンテを、アンナは何も言わずにただ呆然と見つめているだけだった。

「…………私の気持ちに応えてほしいとか、私を愛して欲しいなどという烏滸がましい事はは言わない。君に私の気持ちを押し付けたくはないんだ。君にはいつも笑っていて欲しいから。………それでも私がこの気持ちを打ち明けたのは、そんな想いを抱いている男がいるということを、知っておいて欲しいと思ったからだ」

一言一言を丁寧に紡ぎ出すと、ダンテは微笑んだ。
そして、悲しそうな、けれどもどこか晴れやかな表情がその精悍な顔に浮かぶ。

二人の間を、秋の気配を色濃く含んだ優しい風が吹き抜けた。
暖色系の色を纏った落ち葉が、その風にくるくると踊る。

「…………ダンテ様、私…………」

暫しの沈黙の後、アンナはほんの少し俯いた。

「いいんだ。私は君の気持ちを優先したい。想いを告げて君を手に入れたいと思っているわけではないから、深く考えないで欲しい」

それはダンテの想いではあるが、本心ではなかった。
心の奥底で蠢いている、アンナの愛を得たい、出来る事ならば彼女の心を独占したいという醜い欲望だけは、絶対に隠し通すつもりだった。

ダンテは両手を強く握りしめると、喉の奥までこみ上げてきた苦いものを無理矢理飲み込んだ。
きちんと己の気持ちを伝えたのに、何故こんなにも苦しくて、切ないのだろう。
気を抜くと涙が溢れてしまいそうで、ダンテは静かにアンナから目を背けると、俯いた。
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