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番外編
騎士団長の恋愛事情(38)
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悪夢だろうか。
それとも、神が自分に与えた試練だろうか。
ダンテは半ば呆然としながらその場に立ち尽くしていた。
エドアルドとクラリーチェが楽しそうに談笑する声すらも、全く聞こえなくなるくらいには、動揺していた。
「アンナが………レッジ子爵の…………?」
アンナは後妻になるということだろうか。確かにレッジ子爵の奥方は体調を崩していて長らく寝込んでいると聞いていた。
それにレッジ子爵の家は娘が二人いたが、十年以上前に他国の貴族へと嫁ぎ、今は夫人と二人で屋敷に住んでいると聞いていたが、それ以上の話は聞いていない。
もしかしたら、夫人の体調が悪化したのかもしれない。
だが、仮にそうだったとしても、十八歳の娘を五十歳過ぎの老人に嫁がせるあんまりではないだろうか。
エドアルドとクラリーチェから打診されれば、アンナは断れないし、断らない。
それが彼女の本意ではなくとも、その決定に従わざるを得ないからだ。
だがそれは、ダンテが想いを告げるのを躊躇った理由と、全く同じではないだろうか。
彼女の意志を尊重したい。
だがそれ以上に、彼女に幸せになって欲しい。彼女にはいつも笑っていて欲しい。
レッジ子爵は、確かにいい人だ。だが、それだけでアンナは幸せになれるのだろうか。
レッジ子爵に嫁がせるくらいならばいっそのこと………。
「……………っ」
そう考えると居ても立っても居られなくなったダンテは、勢いよく走り出した。
「ダンテ様?」
本宮から西宮へと続く中庭へと差し掛かった時、アンナの自室へと向かおうとしていたダンテを誰かが呼び止めた。
その声をダンテが、聞き逃す筈がなかった。
「アンナ…………?!」
声のした方を見ると、両手いっぱいに花を抱えたアンナが小走りで駆け寄ってきた。
ダンテはその眩さに、思わず目を見開いた。
「今、クラリーチェ様のお部屋に飾るためのお花を、庭師の方に分けていただいていたんです。ほら、綺麗でしょう………?」
クラリーチェの淡い紫色を思わせる花と、エドアルドの水色の瞳を思わせる花を嬉しそうに見せてくれる。
だが正直、ダンテにとっては花などどうでも良かった。
「………そうだな」
ダンテは花には見向きもしないで、じっとアンナを見つめた。
「確かに、とても綺麗だ」
まるで熱に浮かされたかのように、ダンテは呟いた。
アンナを前にするだけで、心拍数は上がり、頬も紅潮して気持ちがそわそわする。その症状は、日を追うごとに強くなっていく気がした。
「ダンテ様………?」
アンナは不思議そうにダンテの顔を覗き込んだ。
それとも、神が自分に与えた試練だろうか。
ダンテは半ば呆然としながらその場に立ち尽くしていた。
エドアルドとクラリーチェが楽しそうに談笑する声すらも、全く聞こえなくなるくらいには、動揺していた。
「アンナが………レッジ子爵の…………?」
アンナは後妻になるということだろうか。確かにレッジ子爵の奥方は体調を崩していて長らく寝込んでいると聞いていた。
それにレッジ子爵の家は娘が二人いたが、十年以上前に他国の貴族へと嫁ぎ、今は夫人と二人で屋敷に住んでいると聞いていたが、それ以上の話は聞いていない。
もしかしたら、夫人の体調が悪化したのかもしれない。
だが、仮にそうだったとしても、十八歳の娘を五十歳過ぎの老人に嫁がせるあんまりではないだろうか。
エドアルドとクラリーチェから打診されれば、アンナは断れないし、断らない。
それが彼女の本意ではなくとも、その決定に従わざるを得ないからだ。
だがそれは、ダンテが想いを告げるのを躊躇った理由と、全く同じではないだろうか。
彼女の意志を尊重したい。
だがそれ以上に、彼女に幸せになって欲しい。彼女にはいつも笑っていて欲しい。
レッジ子爵は、確かにいい人だ。だが、それだけでアンナは幸せになれるのだろうか。
レッジ子爵に嫁がせるくらいならばいっそのこと………。
「……………っ」
そう考えると居ても立っても居られなくなったダンテは、勢いよく走り出した。
「ダンテ様?」
本宮から西宮へと続く中庭へと差し掛かった時、アンナの自室へと向かおうとしていたダンテを誰かが呼び止めた。
その声をダンテが、聞き逃す筈がなかった。
「アンナ…………?!」
声のした方を見ると、両手いっぱいに花を抱えたアンナが小走りで駆け寄ってきた。
ダンテはその眩さに、思わず目を見開いた。
「今、クラリーチェ様のお部屋に飾るためのお花を、庭師の方に分けていただいていたんです。ほら、綺麗でしょう………?」
クラリーチェの淡い紫色を思わせる花と、エドアルドの水色の瞳を思わせる花を嬉しそうに見せてくれる。
だが正直、ダンテにとっては花などどうでも良かった。
「………そうだな」
ダンテは花には見向きもしないで、じっとアンナを見つめた。
「確かに、とても綺麗だ」
まるで熱に浮かされたかのように、ダンテは呟いた。
アンナを前にするだけで、心拍数は上がり、頬も紅潮して気持ちがそわそわする。その症状は、日を追うごとに強くなっていく気がした。
「ダンテ様………?」
アンナは不思議そうにダンテの顔を覗き込んだ。
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