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番外編
騎士団長の恋愛事情(37)
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ダンテの心は彷徨い、エドアルドに己の心を告げることが出来ないまま、オズヴァルドでの視察旅行を終えて帰国の途に就いた。
出発した時に抱えていたモヤモヤとした気持ちが更に強く大きくなっている気がして、ダンテは終始溜息をついていた。
それは帰国してからも変わらなかった。
以前に比べれば「近衛騎士団長」としての仕事は格段に減ったが、血の粛清により貴族の数がフィリッポ王崩御の頃に比べると六分の一程に減ってしまった為に、臨時的に執務官の仕事も請け負わなければならない状態で、とてもではないが『アンナの為に平民になりたい』などと申し出られるような雰囲気ではなかった。
そして、悩めるダンテの心を更に乱すのは母・コルシーニ伯爵夫人だった。
帰国して早々、そろそろ身を固めろという手紙が届いた。
それから幾度となく婚約を促す手紙が届き、無視し続けていると強引に近衛騎士の宿舎まで押しかけてくることもしばしばだった。
「以前はこんなにも口うるさく身を固めろだのとはおっしやらなかったのに………」
ダンテは盛大に溜息を付くと空を見上げた。
結婚が嫌なわけではないが、アンナに想いを寄せたまま、他の娘を妻に迎えるというのは、相手の令嬢に対しても失礼だし不誠実だということくらい理解できる。
だが母の圧力からずっと逃げ切れるとも思ってはいなかった。
「…………父上に話を通すよりも先に、陛下に打ち明けておくべきだろうな」
ダンテは両手を強く握りしめると、覚悟を決めたかのように真っ直ぐ前を見据え、エドアルドの執務室へと歩き出した。
「………ええ。それでレッジ子爵が随分とアンナのことを気に入って下さって………」
「そうか。レッジ子爵なら人柄も良いし、なんの問題もないだろう」
執務室の扉の前に立つと、扉の隙間からエドアルドとクラリーチェの、そんな会話が微かに聞こえてきた。
「アンナ本人にはもうこの話は伝えたのか?」
「いいえ。彼女は、とても控えめというか………欲がないのです。レッジ子爵のことはアンナも良く知っておりますから決して悪い印象ではないかと思いますわ。ただ、それとこれとは全く別のお話ですし………」
一瞬聞き間違いかとも思ったが、どうやら気の所為ではなかったらしい。
ダンテは、ごくりと生唾を呑み込んだ。
(アンナが…………レッジ子爵と…………?そんな………っ!レッジ子爵は親どころか祖父母世代と同じくらいの年代ではないか………!!)
信じられないような話の内容に、ダンテは目の前が真っ黒に暗転するのをはっきりと感じるのだった。
出発した時に抱えていたモヤモヤとした気持ちが更に強く大きくなっている気がして、ダンテは終始溜息をついていた。
それは帰国してからも変わらなかった。
以前に比べれば「近衛騎士団長」としての仕事は格段に減ったが、血の粛清により貴族の数がフィリッポ王崩御の頃に比べると六分の一程に減ってしまった為に、臨時的に執務官の仕事も請け負わなければならない状態で、とてもではないが『アンナの為に平民になりたい』などと申し出られるような雰囲気ではなかった。
そして、悩めるダンテの心を更に乱すのは母・コルシーニ伯爵夫人だった。
帰国して早々、そろそろ身を固めろという手紙が届いた。
それから幾度となく婚約を促す手紙が届き、無視し続けていると強引に近衛騎士の宿舎まで押しかけてくることもしばしばだった。
「以前はこんなにも口うるさく身を固めろだのとはおっしやらなかったのに………」
ダンテは盛大に溜息を付くと空を見上げた。
結婚が嫌なわけではないが、アンナに想いを寄せたまま、他の娘を妻に迎えるというのは、相手の令嬢に対しても失礼だし不誠実だということくらい理解できる。
だが母の圧力からずっと逃げ切れるとも思ってはいなかった。
「…………父上に話を通すよりも先に、陛下に打ち明けておくべきだろうな」
ダンテは両手を強く握りしめると、覚悟を決めたかのように真っ直ぐ前を見据え、エドアルドの執務室へと歩き出した。
「………ええ。それでレッジ子爵が随分とアンナのことを気に入って下さって………」
「そうか。レッジ子爵なら人柄も良いし、なんの問題もないだろう」
執務室の扉の前に立つと、扉の隙間からエドアルドとクラリーチェの、そんな会話が微かに聞こえてきた。
「アンナ本人にはもうこの話は伝えたのか?」
「いいえ。彼女は、とても控えめというか………欲がないのです。レッジ子爵のことはアンナも良く知っておりますから決して悪い印象ではないかと思いますわ。ただ、それとこれとは全く別のお話ですし………」
一瞬聞き間違いかとも思ったが、どうやら気の所為ではなかったらしい。
ダンテは、ごくりと生唾を呑み込んだ。
(アンナが…………レッジ子爵と…………?そんな………っ!レッジ子爵は親どころか祖父母世代と同じくらいの年代ではないか………!!)
信じられないような話の内容に、ダンテは目の前が真っ黒に暗転するのをはっきりと感じるのだった。
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