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番外編
騎士団長の恋愛事情(34 SIDE:アンナ)
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オズヴァルドで過ごす時間もあと僅かとなった日の夜、王宮では国王夫妻主催の舞踏会が盛大に開かれた。
色々と思い悩むことはあったが、お付きではなくて参加者として舞踏会に出席出来る日が来るなど、夢にも思わなかったことに、アンナの心は弾んだ。
分不相応でも、この場に立つことが許されたのが、嬉しかったのだ。
そんなアンナとは反対に、リディアは浮かない顔をしていた。
リディアは多分、いや、間違いなくテオの事が好きだ。
何故なら彼女がテオを見つめるその表情は、毎日鏡の前で目にする己の表情そのものだったから。
賑やかな舞踏会の席でその事実を指摘すると、リディアは全く気がついていないようで、正直驚いていた。
もしかしたらリディアは、洞察力は人一倍優れているのに、己のことになると鈍いのかもしれない。
「随分と楽しそうですね。一体、何の話をしていたのですか?」
リディアの反応を楽しんでいると、丁度話題を察したのかと思うような絶妙なタイミングで、テオがこちらの方へと歩み寄ってきた。
「もしかして、お邪魔でしたか?」
何処か不安そうなテオに、アンナは満面の笑みを浮かべて見せた。
「邪魔だなんて、とんでもないです。私、初めての舞踏会で………この雰囲気に圧倒されてしまって、リディアさんに緊張を解して貰っていたんです。………そう言えば、私ダンテ様に報告しておかなければならないことがあるのでした。少し席を外しますね」
テオは、リディアと一緒にいたくて近づいてきたということは分かっていた。
邪魔にならないようにと、アンナはドレスの裾を翻すと足早に、エドアルドとクラリーチェの様子を見守っているダンテの方へと向かった。
別に報告することなどなかったが、ドレスアップした自分を見てもらいたいという欲求と、これ以上親しくならないほうがいいと警告が鬩ぎ合い、アンナは揺れた。
「騎士だんちょ………、ダンテ様」
アンナがダンテに駆け寄ると、ダンテは少し驚いた表情を浮かべた。
「アンナ…………」
一瞬、ダンテの視線が彷徨ったのを見て、アンナは首をかしげた。
「あの、おかしいでしょうか………?」
上目遣いに大きなダンテを見つめながら訊ねると、今度は固まった。
「………………………………その…………とても、に、似合っている…………」
長い沈黙の後、ダンテは蚊の鳴くような声でただ一言、そう呟いた。
「…………っ」
思わぬ言葉に、アンナはダンテを凝視した。
ダンテがこんな風に照れる様を見たのは、これが初めてだったからだ。
「あ、ありがとうございますっ。どうしても、ダンテ様に見てもらいたくて…………」
ここ暫くぎこちない笑顔しか浮かべられなかった筈なのに、この時は何故か心の奥底から笑う事が出来た。
色々と思い悩むことはあったが、お付きではなくて参加者として舞踏会に出席出来る日が来るなど、夢にも思わなかったことに、アンナの心は弾んだ。
分不相応でも、この場に立つことが許されたのが、嬉しかったのだ。
そんなアンナとは反対に、リディアは浮かない顔をしていた。
リディアは多分、いや、間違いなくテオの事が好きだ。
何故なら彼女がテオを見つめるその表情は、毎日鏡の前で目にする己の表情そのものだったから。
賑やかな舞踏会の席でその事実を指摘すると、リディアは全く気がついていないようで、正直驚いていた。
もしかしたらリディアは、洞察力は人一倍優れているのに、己のことになると鈍いのかもしれない。
「随分と楽しそうですね。一体、何の話をしていたのですか?」
リディアの反応を楽しんでいると、丁度話題を察したのかと思うような絶妙なタイミングで、テオがこちらの方へと歩み寄ってきた。
「もしかして、お邪魔でしたか?」
何処か不安そうなテオに、アンナは満面の笑みを浮かべて見せた。
「邪魔だなんて、とんでもないです。私、初めての舞踏会で………この雰囲気に圧倒されてしまって、リディアさんに緊張を解して貰っていたんです。………そう言えば、私ダンテ様に報告しておかなければならないことがあるのでした。少し席を外しますね」
テオは、リディアと一緒にいたくて近づいてきたということは分かっていた。
邪魔にならないようにと、アンナはドレスの裾を翻すと足早に、エドアルドとクラリーチェの様子を見守っているダンテの方へと向かった。
別に報告することなどなかったが、ドレスアップした自分を見てもらいたいという欲求と、これ以上親しくならないほうがいいと警告が鬩ぎ合い、アンナは揺れた。
「騎士だんちょ………、ダンテ様」
アンナがダンテに駆け寄ると、ダンテは少し驚いた表情を浮かべた。
「アンナ…………」
一瞬、ダンテの視線が彷徨ったのを見て、アンナは首をかしげた。
「あの、おかしいでしょうか………?」
上目遣いに大きなダンテを見つめながら訊ねると、今度は固まった。
「………………………………その…………とても、に、似合っている…………」
長い沈黙の後、ダンテは蚊の鳴くような声でただ一言、そう呟いた。
「…………っ」
思わぬ言葉に、アンナはダンテを凝視した。
ダンテがこんな風に照れる様を見たのは、これが初めてだったからだ。
「あ、ありがとうございますっ。どうしても、ダンテ様に見てもらいたくて…………」
ここ暫くぎこちない笑顔しか浮かべられなかった筈なのに、この時は何故か心の奥底から笑う事が出来た。
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