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番外編
騎士団長の恋愛事情(28)
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「お兄様!ダンテお兄様!」
詰め所へと戻る途中で、ダンテはリディアに呼び止められた。
「リディア…………。そのように大きな声を出さなくても、聞こえているぞ」
「全く………。最近、陛下の朝の鍛錬がなくなったからと、少し呆けているのではありませんか?先程からずっと呼んでいたのですよ?」
呆れ顔を浮かべる実妹に、ダンテは焦ったように弁明の言葉を口にした。
「あ、いや………っ。決してそういう訳ではないんだ。ここのところずっと忙しくて、少し疲れているだけだ………」
「言い訳は結構です。視察旅行の件、陛下からお話があったんでしょう?………少しはアンナと打ち解けておいた方がいいのではないですか?」
「は?!」
「大声を出すなとご自分で言っておきながら………」
「すまん。………で、何故アンナと私が打ち解ける必要が?」
既にそれなりに打ち解けているつもりなのに、リディアの口からそのような提案がなされた事に、正直驚いていた。
「お兄様………。未だにアンナに『騎士団長様』って呼ばれているではありませんか。名前すら呼んで貰えていないという自覚はありますか?」
リディアは大袈裟に溜息をついた。
ダンテはビクリと大柄な体を揺らした。
それは、ダンテ自身が以前から気にしていた事だった。
アンナは、決してダンテの事を名前で呼ばない。リディアや、近衛騎士達は全ては名前で呼ばれているのに、ダンテは未だに『近衛騎士団長様』もしくは『騎士団長様』としか呼んでくれない。
それが、アンナとの心の距離のような気がして、ダンテは自分も名前で呼んでほしいと頼むことが出来なかった。
これ以上親しくしない方が彼女の為だと思いながらも、名を呼んでほしいと願う心の矛盾をどうしたらいいのか、ダンテには分からなかった。
そんな一番触れられたくない事を平然と指摘してくる妹に苛立ちを覚え、ダンテは少し意地の悪い笑みを浮かべた。
「それならお前だって同じだろう。テオと仲良くしておいたほうが良いのではないのか?」
「…………余計なお世話です」
リディアの事で、テオからは随分前から相談を受けていた。
テオの事は、ダンテも一目置いていたが、リディアがテオを全く意識していないのを兼ねてから気の毒に思っていた。
仕返しだとばかりに向けた悪意に、リディアは見るからに不機嫌になった。
「………まあ、お互い努力だな」
苛立たしげに睨みつけてくる妹をあしらうと、ダンテは溜息を一つ零してから再び歩き始めた。
詰め所へと戻る途中で、ダンテはリディアに呼び止められた。
「リディア…………。そのように大きな声を出さなくても、聞こえているぞ」
「全く………。最近、陛下の朝の鍛錬がなくなったからと、少し呆けているのではありませんか?先程からずっと呼んでいたのですよ?」
呆れ顔を浮かべる実妹に、ダンテは焦ったように弁明の言葉を口にした。
「あ、いや………っ。決してそういう訳ではないんだ。ここのところずっと忙しくて、少し疲れているだけだ………」
「言い訳は結構です。視察旅行の件、陛下からお話があったんでしょう?………少しはアンナと打ち解けておいた方がいいのではないですか?」
「は?!」
「大声を出すなとご自分で言っておきながら………」
「すまん。………で、何故アンナと私が打ち解ける必要が?」
既にそれなりに打ち解けているつもりなのに、リディアの口からそのような提案がなされた事に、正直驚いていた。
「お兄様………。未だにアンナに『騎士団長様』って呼ばれているではありませんか。名前すら呼んで貰えていないという自覚はありますか?」
リディアは大袈裟に溜息をついた。
ダンテはビクリと大柄な体を揺らした。
それは、ダンテ自身が以前から気にしていた事だった。
アンナは、決してダンテの事を名前で呼ばない。リディアや、近衛騎士達は全ては名前で呼ばれているのに、ダンテは未だに『近衛騎士団長様』もしくは『騎士団長様』としか呼んでくれない。
それが、アンナとの心の距離のような気がして、ダンテは自分も名前で呼んでほしいと頼むことが出来なかった。
これ以上親しくしない方が彼女の為だと思いながらも、名を呼んでほしいと願う心の矛盾をどうしたらいいのか、ダンテには分からなかった。
そんな一番触れられたくない事を平然と指摘してくる妹に苛立ちを覚え、ダンテは少し意地の悪い笑みを浮かべた。
「それならお前だって同じだろう。テオと仲良くしておいたほうが良いのではないのか?」
「…………余計なお世話です」
リディアの事で、テオからは随分前から相談を受けていた。
テオの事は、ダンテも一目置いていたが、リディアがテオを全く意識していないのを兼ねてから気の毒に思っていた。
仕返しだとばかりに向けた悪意に、リディアは見るからに不機嫌になった。
「………まあ、お互い努力だな」
苛立たしげに睨みつけてくる妹をあしらうと、ダンテは溜息を一つ零してから再び歩き始めた。
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