冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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番外編

騎士団長の恋愛事情(27)

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それから暫くの間、貴族の粛清や隣国オズヴァルドの王太子リベラートの来訪、そして開港祭の再開催にエドアルドとクラリーチェの結婚式と、次々に舞い込んで来る仕事のせいで息をつく暇もない程に多忙を極めたダンテは、アンナに会いに行く暇など全くなかった。

それでも、以前に比べれば仕事中に顔を合わせたり、会話を交わすくらいの事は出来るようになり、それを励みにまた頑張ろうと思えた。

そんなある日、突然エドアルドから呼び出しを受けた。

「オズヴァルドへの視察旅行に、アンナを連れて行くのですか?」

一度も国外に出たことのないクラリーチェの為に、オズヴァルドへの視察旅行を計画し、そこにダンテと近衛騎士のテオという青年、そしてクラリーチェの護衛も兼ねてリディアとアンナを連れて行くのだと聞き、ダンテは思わず声を上げた。

「アンナはクラリーチェの侍女なのだし、連れて行っても全く問題はないだろう」

エドアルドの言っている事は尤もだった。
だが、ダンテの心境は複雑だった。
行き先がオズヴァルドなら、危険は少ないだろうし、クラリーチェ同様にアンナも国外に出たことは無いだろうから、きっと喜ぶだろう。
だが危険はゼロではない。
いくらエドアルドとテオと自分がいて、オズヴァルド側も護衛をしてくれるとは言っても、国内よりも警護が手薄になる部分はあるだろう。
そして何よりも、自分の気持ちを抑えられそうになくて不安だった。

だが、自分の我儘でアンナを排除するのはあまりにも無理があるし、何よりも彼女が悲しむだろうと思うだけでも、胸の奥がずきりと痛んだ。

「………畏まりました」

幼少期から鍛え上げた精神力があれば、己を律する事は出来るはずだ。
アンナを大切に、そして愛おしく思うからこそ、彼女を不幸にしてはいけない。
自分に出来る事は、彼女が然るべき人と幸せになるのをそっと見守る事なのだと、ダンテは心の中で自分に言い聞かせる。

「では、決まりだな」

エドアルドは満足そうに頷くと、何故かじっとダンテの方を見つめてきた。

「………何か?」
「いや。………あの休暇の日以降、少し雰囲気が変わったなと思っただけだ」
「はあ………」

エドアルドは訝しげに眉を顰めるダンテから、窓の方へと視線を移した。

「………守るべきものが出来ると、変わるのだな」
「…………?」

唐突に落とされたエドアルドの言葉の意味が分からずに、ダンテは更に顔を顰めた。

「分からなければいい。………お前には負担を掛けてばかりだからな。お前にとっても、少しは息抜きになるといいのだが………」

何かを企むように嗤うエドアルドに、戸惑いながらもダンテは頭を下げるのだった。
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