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番外編
騎士団長の恋愛事情(26 SIDE:アンナ)
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全てが終わった、その日の夜。
アンナはようやくクラリーチェとの再会を果たし、再び侍女としてクラリーチェに仕えることになった。
離れていた数ヶ月の間にあった出来事を一頻り話ながら肌や髪の手入れをしていると、何とも言えない充足感がアンナの心を満たした。
だがそれと同時に、寂しいような、落ち着かないような気持ちが心のどこかを彷徨っている気がして、アンナは溜息をついた。
「アンナ、今日は色々あって疲れたでしょう?後の事は私が引き受けるから、先に休みなさいな」
「リディア様………」
「あら、『様』付けなんて止めて頂戴。あなたも私も、クラリーチェ様付の侍女なんだから、今までどおり呼んでくれればいいわ」
そう言ってリディアはふわりと微笑んだ。
「あ………」
顔立ちはあまり似ていないのに、リディアの笑ったときの目元が、ダンテと似ていると感じた。
「私の顔に、何かついていた?」
「あ、いえ………。その、リディアさんと騎士団長様の、笑顔を浮かべた時の目元が似ているなぁって感じたので………」
すると、リディアは驚いたように目を丸くした。
「ダンテお兄様と、私が?そんな事、初めて言われたわ。………ふふっ。アンナはお兄様の事をとても良く見ているのね」
「えっ?!あ………っ、でも!あの………騎士団長様の事を好きだとか、そういう訳では………!!」
リディアの指摘に動揺したアンナは、慌てた。
「そう?じゃあそういう事にしておきましょうか。………ではまた明日、ね」
楽しそうに笑うリディアはひらひらと手を振りながら、扉を閉めたのだった。
部屋へと向かう途中も、何だか気持ちがもやもやとして、アンナは立ち止まった。
「そう言えば、王宮に戻ってきましたっていう報告………してないんだったわ………」
まるで自分自身に言い聞かせるかのように、アンナは小さな声で呟いた。
そして、小さく深呼吸を繰り返すと、意を決したかのように、ダンテ許へと向かった。
「騎士団長様!」
ダンテの姿を認めると、嬉しさのあまり思ったよりも大きな声が出てしまった。
その声に驚いたのだろうか、ダンテは少し慌てたようだった。
「ア、アンナ………っ。無事に、役目を終えたのか。ご苦労だったな」
低く、穏やかなのに強い声に労われると、アンナは嬉しさのあまり、思わず笑みを零した。
「はい!伯爵夫人からお墨付きを頂き、クラリーチェ様の侍女に戻ることが出来ました。これも全て、騎士団長様のお陰です」
「私の………?」
ダンテは驚いたように、アンナを見返した。
「はい。だって、騎士団長様は私を励ましてくださったではないですか。それに、偶然とはいえ先日公爵家の前でお会いした時も、気遣って頂いて………。私、すごく嬉しかったんです。だから、どうしてもお礼が言いたくて……。お仕事中なのに、申し訳ありませんでした!どうしても、それを伝えたかったんです。………それに、騎士団長様のお顔が見たくて………」
ぽろりと零れ落ちた、心からの言葉は、小声ではあったが、ダンテの耳にも届いてしまったのだろうか。
考えれば考えるほど、アンナは恥ずかしくなってきた。
「じゃあ、私はこれで失礼しますねっ。お仕事、頑張ってください」
きっと今、顔が真っ赤になっているだろう。
それをどうしてもダンテには見られたくなかった。ぺこりと元気よくお辞儀をすると、慌てて顔を背けながら急いで自室へと戻った。
扉を締めた途端に、安堵感のせいか膝から崩れるように、その場にへたり込む。
直接、この燻る気持ちをダンテに打ち明ければ、どんなに楽だろう。
でも彼と自分とでは立場が違いすぎる。
彼は貴族で、近衛騎士団長で、王の影の一員。
それに引き換え自分は、身寄りのない、財産もない、平凡な平民の娘。
優しいダンテは、自分が気持ちを打ち明けたとしたら、きっと困るだろう。
この恋心は、明かさないほうがお互いの為なのだ。
アンナは必死に、そう自分を納得させるのだった。
アンナはようやくクラリーチェとの再会を果たし、再び侍女としてクラリーチェに仕えることになった。
離れていた数ヶ月の間にあった出来事を一頻り話ながら肌や髪の手入れをしていると、何とも言えない充足感がアンナの心を満たした。
だがそれと同時に、寂しいような、落ち着かないような気持ちが心のどこかを彷徨っている気がして、アンナは溜息をついた。
「アンナ、今日は色々あって疲れたでしょう?後の事は私が引き受けるから、先に休みなさいな」
「リディア様………」
「あら、『様』付けなんて止めて頂戴。あなたも私も、クラリーチェ様付の侍女なんだから、今までどおり呼んでくれればいいわ」
そう言ってリディアはふわりと微笑んだ。
「あ………」
顔立ちはあまり似ていないのに、リディアの笑ったときの目元が、ダンテと似ていると感じた。
「私の顔に、何かついていた?」
「あ、いえ………。その、リディアさんと騎士団長様の、笑顔を浮かべた時の目元が似ているなぁって感じたので………」
すると、リディアは驚いたように目を丸くした。
「ダンテお兄様と、私が?そんな事、初めて言われたわ。………ふふっ。アンナはお兄様の事をとても良く見ているのね」
「えっ?!あ………っ、でも!あの………騎士団長様の事を好きだとか、そういう訳では………!!」
リディアの指摘に動揺したアンナは、慌てた。
「そう?じゃあそういう事にしておきましょうか。………ではまた明日、ね」
楽しそうに笑うリディアはひらひらと手を振りながら、扉を閉めたのだった。
部屋へと向かう途中も、何だか気持ちがもやもやとして、アンナは立ち止まった。
「そう言えば、王宮に戻ってきましたっていう報告………してないんだったわ………」
まるで自分自身に言い聞かせるかのように、アンナは小さな声で呟いた。
そして、小さく深呼吸を繰り返すと、意を決したかのように、ダンテ許へと向かった。
「騎士団長様!」
ダンテの姿を認めると、嬉しさのあまり思ったよりも大きな声が出てしまった。
その声に驚いたのだろうか、ダンテは少し慌てたようだった。
「ア、アンナ………っ。無事に、役目を終えたのか。ご苦労だったな」
低く、穏やかなのに強い声に労われると、アンナは嬉しさのあまり、思わず笑みを零した。
「はい!伯爵夫人からお墨付きを頂き、クラリーチェ様の侍女に戻ることが出来ました。これも全て、騎士団長様のお陰です」
「私の………?」
ダンテは驚いたように、アンナを見返した。
「はい。だって、騎士団長様は私を励ましてくださったではないですか。それに、偶然とはいえ先日公爵家の前でお会いした時も、気遣って頂いて………。私、すごく嬉しかったんです。だから、どうしてもお礼が言いたくて……。お仕事中なのに、申し訳ありませんでした!どうしても、それを伝えたかったんです。………それに、騎士団長様のお顔が見たくて………」
ぽろりと零れ落ちた、心からの言葉は、小声ではあったが、ダンテの耳にも届いてしまったのだろうか。
考えれば考えるほど、アンナは恥ずかしくなってきた。
「じゃあ、私はこれで失礼しますねっ。お仕事、頑張ってください」
きっと今、顔が真っ赤になっているだろう。
それをどうしてもダンテには見られたくなかった。ぺこりと元気よくお辞儀をすると、慌てて顔を背けながら急いで自室へと戻った。
扉を締めた途端に、安堵感のせいか膝から崩れるように、その場にへたり込む。
直接、この燻る気持ちをダンテに打ち明ければ、どんなに楽だろう。
でも彼と自分とでは立場が違いすぎる。
彼は貴族で、近衛騎士団長で、王の影の一員。
それに引き換え自分は、身寄りのない、財産もない、平凡な平民の娘。
優しいダンテは、自分が気持ちを打ち明けたとしたら、きっと困るだろう。
この恋心は、明かさないほうがお互いの為なのだ。
アンナは必死に、そう自分を納得させるのだった。
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