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番外編
騎士団長の恋愛事情(13)
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「団長………?」
いつも堂々としていて勇猛で、観察力に優れた当代の若き騎士団長のこんな様子は見たことはなかった。
「あの…………団長…………?もしかして、ですけれど………好きなご令嬢がいらっしゃるのですか…………?」
一人の騎士が、恐る恐る尋ねると、ダンテは困ったように眉を顰めた。
「………分からないんだ」
紡がれた声はとても小さくて、そして自信がなさそうなもので、騎士達はまたその事に驚いた。
ダンテはエドアルドの腹心の一人であり、精悍な顔付きと屈強な体躯、そして近衛騎士団長という役職という誰もが羨むようなものを全て備えていることもあり、令嬢達からはかなり人気がある。
だが、浮いた噂どころか、令嬢からの贈り物も舞踏会や夜会の誘いも職務を理由に全て断っていること、また騎士団の宿舎から職務以外で外出することがほぼないという事実から、実は男色なのでは………などという非常に不名誉な噂がまことしやかに囁かれていた。
当然近衛騎士団に所属する騎士達も、その噂は耳にしていたが、ダンテの仕事ぶりを見ていると、どう考えても恋人を探す暇はおろか、お見合いをする暇さえもなさそうな様子を気の毒に思っていたのだった。
しかし、ダンテ自身がそんな根も葉もない噂が横行していても全く気に病むような素振りも見せなかった為、クラリーチェとの婚約を発表する以前のエドアルド同様、縁談を寄せ付けない為にそうしているとの憶測もあり、正直誰も真実を知らなかった。
だが今騎士達の目の前にいるのは、間違いなく恋に戸惑う青年そのものだった。
騎士達は何と声を掛けるべきなのか大いに迷った。
「あの、分からないとは………?」
とりあえず状況を確認してみようと、一人の騎士が尋ねると、ダンテは更に困った顔をした。
「自分で自分が分からないと言ったろう?まさにそんな気持ちで………。彼女とは別に親しい間柄ではないし、直接話したことも数回だけだというのに、彼女の事になると私らしからぬ行動を取ってしまうんだ」
普段と違うダンテの表情は、近衛騎士団長でも、コルシーニ伯爵子息でもなく、どこにでもいるような、ごく普通の青年の顔に見えた。
「団長…………。念の為にお伺いしますけど、そのご令嬢を思い浮かべると、胸の鼓動が早くなったり、息が苦しくなったり、切なく胸が疼いたりはしませんか?………もしくは、無性に彼女の顔が見たくなったりとか………?」
もう一人の騎士に尋ねられ、ダンテは腕組みをしてじっと目を閉じ、真剣に考え込んだのだった。
いつも堂々としていて勇猛で、観察力に優れた当代の若き騎士団長のこんな様子は見たことはなかった。
「あの…………団長…………?もしかして、ですけれど………好きなご令嬢がいらっしゃるのですか…………?」
一人の騎士が、恐る恐る尋ねると、ダンテは困ったように眉を顰めた。
「………分からないんだ」
紡がれた声はとても小さくて、そして自信がなさそうなもので、騎士達はまたその事に驚いた。
ダンテはエドアルドの腹心の一人であり、精悍な顔付きと屈強な体躯、そして近衛騎士団長という役職という誰もが羨むようなものを全て備えていることもあり、令嬢達からはかなり人気がある。
だが、浮いた噂どころか、令嬢からの贈り物も舞踏会や夜会の誘いも職務を理由に全て断っていること、また騎士団の宿舎から職務以外で外出することがほぼないという事実から、実は男色なのでは………などという非常に不名誉な噂がまことしやかに囁かれていた。
当然近衛騎士団に所属する騎士達も、その噂は耳にしていたが、ダンテの仕事ぶりを見ていると、どう考えても恋人を探す暇はおろか、お見合いをする暇さえもなさそうな様子を気の毒に思っていたのだった。
しかし、ダンテ自身がそんな根も葉もない噂が横行していても全く気に病むような素振りも見せなかった為、クラリーチェとの婚約を発表する以前のエドアルド同様、縁談を寄せ付けない為にそうしているとの憶測もあり、正直誰も真実を知らなかった。
だが今騎士達の目の前にいるのは、間違いなく恋に戸惑う青年そのものだった。
騎士達は何と声を掛けるべきなのか大いに迷った。
「あの、分からないとは………?」
とりあえず状況を確認してみようと、一人の騎士が尋ねると、ダンテは更に困った顔をした。
「自分で自分が分からないと言ったろう?まさにそんな気持ちで………。彼女とは別に親しい間柄ではないし、直接話したことも数回だけだというのに、彼女の事になると私らしからぬ行動を取ってしまうんだ」
普段と違うダンテの表情は、近衛騎士団長でも、コルシーニ伯爵子息でもなく、どこにでもいるような、ごく普通の青年の顔に見えた。
「団長…………。念の為にお伺いしますけど、そのご令嬢を思い浮かべると、胸の鼓動が早くなったり、息が苦しくなったり、切なく胸が疼いたりはしませんか?………もしくは、無性に彼女の顔が見たくなったりとか………?」
もう一人の騎士に尋ねられ、ダンテは腕組みをしてじっと目を閉じ、真剣に考え込んだのだった。
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