冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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番外編

騎士団長の恋愛事情(7)

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翌日。
ダンテは約束通りに朝の鍛錬を終えると、身支度をしてコルシーニ伯爵邸へと帰宅した。

伯爵邸には、両親と兄のマリアーノとその妻が住んでいる。二人いる弟も近衛騎士見習いとして宿舎に身を寄せているので大きな邸宅はどことなくがらんとした印象だ。

「おかえりなさいませ、ダンテ様!」
「あ、ああ…………」

まるで太陽が屋敷の中に降ってきたかのような明るい挨拶に、ダンテは圧倒されて口籠った。
出迎えてくれたのは、母でも兄夫婦でもなく、何とアンナだった。

「お声掛けはしたのですが、皆様お忙しいみたいで…………。その、申し訳ございません」

心底申し訳無さそうなアンナの表情に、ダンテは何と返すべきか思案し、暫しの間を置いてから、ふっと表情を緩めた。

「我が家はいつもこんな感じなので、気にする必要はない」

アンナが自分に対してどこか萎縮しているような印象を受けたダンテは、なるべく彼女を怖がらせないように柔和な笑みを浮かべて見せると、彼女の表情に隠れていた緊張が、少しだけ解れたようだった。

「元々王弟殿下から、無理矢理押し付けられた休暇なのだし、特にこれといった予定があった訳でもないので、ゆっくりと寛ごうと思っているんだ。アンナ嬢は私に構わず、鍛錬に励んでくれればいい」
「まあ…………」

するとアンナは驚いたように目を見張り、それからくすくすと小さく笑い声を上げた。

「大変失礼致しました。その………、騎士団長様って見た目は屈強で、少し近寄りがたい雰囲気をお持ちですけれど、何と言うか………とてもお優しいのですね」
「優しい?私が?」

真正面からそんな事を言われたのは生まれて初めてで、ダンテは正直反応に困る。

「面倒見がいいというのは、近衛騎士団長をされているくらいだから分かりますけれど、常に周囲に気を配られていて、思慮深いですし」
「はあ…………」

これは新手の心理攻撃だろうかと疑いたくなる位に突如褒め殺しにされたダンテは更に戸惑っていた。

「あ、申し訳ございません。伯爵夫人から、騎士団長様のお話を色々とお聞きしたので思わず…………」

今度は恥ずかしそうに呟くと、アンナは俯いた。

「………私、不安になるとこうやっておしゃべりになるみたいで………。すみません、煩いですよね」

ぽつりと落とされた謝罪の言葉に、ダンテははっとする。
先日母と話したときに、ジャクウィント女侯爵とその侍女であったアンナが、先王の後宮で不当に冷遇されていたという話があった。
明るいアンナが突然態度を変えたのは、そんな過去があったからだろうか。
ダンテはじっとアンナを見つめた。
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