冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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番外編

リディアの恋(12)

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そして開かれた舞踏会。
オズヴァルド国王夫妻の計らいで、護衛要員であるはずのリディアとアンナ、そしてダンテとテオも出席が許された。

コルシーニ家で淑女としてのマナーも叩き込まれたアンナは、正真正銘初めての舞踏会に興奮気味だったが、リディアはというとどこかぼんやりとしている様子だった。

「リディアさん、オズヴァルドこちらに来てから、少し変じゃありませんか?」

亜麻色の髪の毛先を弄りながら、アンナはちらりとリディアに視線を投げ掛ける。

「え、………?」

思わず、おかしな声が漏れ出てしまい、リディアは恥ずかしくなった。
そのことを指し示すように白い頬が、ほんの少し薄桃色に染まる。

「………ほら、やっぱりおかしいです。普段ならそんな表情はしないですよね?」

犇めき合う、着飾ったオズヴァルドの貴族たちに囲まれながらも燦然と輝くようなクラリーチェの姿を眺めながらアンナがそう囁くと、リディアの顔は更に赤みを増していく。
その様は、王の影を務める女性のものではなく、まるでごく普通の可愛らしい令嬢のような振る舞いだった。

「原因は、テオ様あの方ですか?」
「なっ………!ど、どうしてそれを…………?」

アンナは一呼吸置いて、溜息を付いてみせた。

「分かりますよ。………むしろ、その状態で、と思っている事のほうが凄いと思いますけれど………」

やや呆れ顔を浮かべたアンナが、分かりやすく肩を竦めて見せた。

「………その、状態?」

アンナの言葉の意味が理解できず、リディアは首を傾げた。

「まさか、本当に気がついていないんですか?」
「何のことを言っているのか、さっぱり理解出来ないのだけれど?」

曖昧に言い回しに、少しだけ苛立ってしまう。
すると、アンナがその人好きのする顔に、満面の笑みを浮かべた。

「………リディアさん、さっきからずーっとテオ様の事を見つめてますよ?」
「………………っ!」

おもわぬ指摘に、息を飲んだ。
そんなはずはないと思いながらも、心のどこかに否定できない自分が存在する。
…………クラリーチェではなく、無意識のうちに彼の姿を追っていただなんて、認めたくはなかった。

「…………もしかして、本当に気がついていなかったのですか………?」

指摘してはいけなかったのかと、アンナが戸惑いの表情を浮かべた時だった。

「随分と楽しそうですね。一体、何の話をしていたのですか?」

先程までは少し離れたところでダンテと話していたテオが、微笑みを浮かべながらリディアの方へと歩み寄ってきたのだった。
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