冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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番外編

リディアの恋(4)

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オズヴァルド王宮に到着すると、エドアルドとクラリーチェとは別の部屋へと案内された。

「コルシーニ伯爵令嬢の淹れてくださるお茶は、格別ですね!」

通された部屋は自由に使って構わないと言われた為、リディアはアンナと共に早速お茶の準備を整えて、兄達に振る舞うことにした。

「…………お前、まだリディアこいつの事をコルシーニ伯爵令嬢と呼んでいるのか?」

嬉しそうにお茶を飲み干すテオに、ダンテが呆れたように溜息をついた。

「お願いをしてみたのですが、生憎断られてしまったんです。………私の、修行不足ですね」

恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべるテオに、一瞬視線を向けると、リディアは瑞々しい唇を真一文字に引き結ぶ。

「おい、リディア。俺の大切な部下をあまり苛めないでくれよ?これだけの逸材は中々発掘できないんだ」
「だ、団長………」

豪快に笑うダンテの横で、テオがまた困ったような笑みを浮かべた。
それを見て、リディアは漸く気がついた。
どうしてテオを見ていると気持ちが逆撫でされるような気持ちになるのか。
それは、彼がいつも笑っているからだ。
困った時も悲しい時も、彼は決まって笑顔を浮かべて、取り繕おうとする。

厳しい兄が、あそこまで褒めるほどの実力を持っているのに、ヘラヘラと笑ってばかりいるテオに、無性に腹が立った。

リディアは、両親であるコルシーニ伯爵と伯爵夫人により、幼い頃から王の影としての務めを果たせるように、厳しく鍛えられてきた。
その影響のせいなのか彼女は、師匠である両親と、最年長の兄で、彼女の目標であるダンテに対して並々ならぬ尊敬の念を抱いている。

力では男には劣るし、スタミナもあるわけではない。
思い通りにならない自分自身の力に、絶望したこともあった。そして自身が男に生まれなかったことを恨んだ時期もあった。
だが、クラリーチェと出会ってからその卑屈な考えは亡くなったと思っていたが、テオを見ていて久しぶりにその感情が湧き上がってくるを感じた。

「リディア、別に名前を呼ぶくらいは構わないじゃないか」
「……………」

無言のまま、リディアはテオを睨み付けた。

「いつもはここまで冷たくはないんだが…………」

ダンテが不思議そうに首を傾げるのが、更に面白くなくて、リディアはふい、と視線をずらした。
自分の中に渦巻いているのは、自分が得られない立場にいるテオに対してのに他ならないと、この時のリディアは思い込んでいたのだった。
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