冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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番外編

新婚旅行(25)

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いよいよオズヴァルドの滞在も残り僅かとなる翌日の夜、漸く復活したヴァレリオ国王とアルベルタ王妃主催の舞踏会が城の広間で開かれた。

まだ腰の痛みは完全になくなってはいないものの、クラリーチェも自力で動けるまでに回復した。
クラリーチェにとっても舞踏会が一日延期になった事は幸いだった。そうでなければエドアルドに横抱きにされたままの姿で国賓として舞踏会に出席しなければならなかったと考えるだけで目眩がするほど恥ずかしかった。

クラリーチェはエドアルドと共に、オズヴァルド国王夫妻のファーストダンスを眺めていた。

「やはり、お二人共とても素敵ですね」

クラリーチェが感嘆の溜息を漏らす。
優雅でありながら軽快な、二人の踊る様は互いへの信頼が滲み出るようだった。
そんな二人に憧れの眼差しを向けるクラリーチェに、エドアルドは面白くなさそうな顔をする。

「………伯父上と言えども、クラリーチェが褒めるのを聞くのはいい気分ではないな」
「そんなに心配なさらなくても………、私の心はエドアルド様のものですよ?」

思わぬエドアルドの言葉に、クラリーチェは困ったように微笑みを浮かべる。

「自分がこんなにも嫉妬深くて狭量な人間だとは思わなかったが………貴女が会場の視線を集めるのを見るのは誇らしい筈なのに、素直に喜べない」

ぽつりと落とされた言葉に、クラリーチェは俄に頬が熱くなるのを感じた。

「エドアルド様ったら…………」

エドアルドは穏やかな笑顔を向けると、徐にクラリーチェの手を取った。

「さて、国賓としての仕事をするとするか」
「はい、エドアルド様」

タイミングを見計らったかのように曲調が変わり、ヴァレリオがアルベルタを伴い下がってくると、それと入れ替えでホールへと進み出た。
白い軍服を纏ったエドアルドと、胸元には大きな金色のリボンがあしらわれた、たっぷりと布地を使った水色のドレスを纏ったクラリーチェに、自ずと人々の視線が集まっていく。

「本当に、このまま踊らずに貴女を隠してしまいたくなるよ」

エドアルドが、クラリーチェの腰に回した手に、ぐっと力を込めながら熱っぽい掠れた声で囁くとクラリーチェははにかみながら微笑みを浮かべる。
その表情はさながら女神のようで、目にした人々からどよめきが起こった。

エドアルドはクラリーチェを見つめ、クラリーチェもまたエドアルドを見つめ、ゆったりとした曲に合わせて二人が踊る様は、その後暫くの間、オズヴァルド社交界の中での話題の中心になったという。
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